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絵空事の現実世界

改訂いたしました。27.7.5

 右目が、暑い。それとちょっと、痛い。そして―――変な夢を見ています。なんだろう。前、王室で倒れた時のような変な感覚。でも今度は猫じゃないんだよね。自分自身だ。なにか成長でもしたのかな?ただ………よく見たら自分自身ではあるけど、それは前世の私の姿って事なんだよね。黒髪の、たぶん黒い瞳の私。髪を見てようやく渡利真綿(わたりまわた)の体だと認識ができる。


 真っ白な世界に佇む私の右目はまだ暑い。夢でも痛みがあるのってどうなんだ?そもそもこれは夢なんだろうか!って言うのが怪しいのだけど………私しかいないから、わからないよ。なんかだんだんと暑さが慣れてきちゃうし。


 誰もいないからなおさら私は混乱する。ここが暗闇ではないことが唯一の救いなのかもしれない。でも、何もないことには変わりはないのだけどね。真っ暗で何もなくてどんどん変な感覚になるよりいいかもしれない?何もない白の世界もどうかと思うけど。


 さて、私はどうすらばいいのかな………やっぱり今後について考えるか?いやいや、こんな白の世界まで来たのだから少しはゆっくりしてもいいんじゃないかと私は思うのですよ。しかし、こんな何もないところで何が出来るのか。


 動くか、動かないか………どうしたものかね。


 とか考えてながらも足は進んでいます。ちょっと探索に出ることにした。ほら、暇だし。やることもないし。寝るしかないし?そう思うと、ね?迷子上等!てなわけで少しでも情報をと思ってしまうわけですよ。


 とぼとぼと歩いて―――やっぱり考えながら歩くことにした。何も変化がなくてつまらんのです。変化がないかと周りを気にしつつ………何から考えようか。最近では色々とあーだこーだと変に考えてしまうから阿呆みたいにぐちゃぐちゃなんだよね。て事は、今回の私が倒れてしまった理由は知恵熱かもね。そんなので倒れたことがなかったから実感はまったくないのだけど。それでどうして目が熱くなってたまに痛いんだか………


 アトラナについて考えてみようか。えーと、アトラナって可愛いよね。無邪気さ満点の天真爛漫な少女。癇癪を起こしがちで魔法師の手を焼いている。そう言えば今日は初めてアトラナがはっちゃけない大人しい雰囲気を見た気がするね。トセトナさんが関係あるのかな?なんにしても起きなきゃわからないけどね。


 それにしても魔素を感じる力かー。それがあると便利かな?アトラナにちょっと聞いてみたいかも。ヴィグマン様はやりにくいからパスで。そう言えば魔素を乱されちゃったって怒っていたよね。それで魔素を感じれる?ことが分かったんだし。トセトナさんはどうやって魔素を乱したんだろう?もしかして毒素を振り撒いたり―――いや、魔素を吸収したりとか?ああ、無意識の人なのかもね。お父様に聞いてみよう。


「誰かいませんかー」


 ちょっと一人が不安になってきたところなのです。何かに没頭できる状態じゃないからなおさら。周りを気にしながら行動をしていたら人恋しくなったしまった。考えるって、どうもしんみりしちゃね。そう言えば私………相談ってものをしていないね。頼るとかいって頼ってもいない。昔の悪い癖かな。悪いのは全部を癖のせいにしてしまえ!


「わっ」


 ちょっと意気込んだらなんか出てきました。そしてここで気づくのです!色が見える!!なんで自分の肌色で気づかなかった!?


 ええと―――ふよふよと丸い玉が3つ。光の三原色で赤、青、緑。3つが交差するようにふよさよ乱舞してこっちに近づいてくるね、あれは。


 逃げてもどうしようもないのでそのまま見てみる事にしたんだけど………不思議現象でしかわかりません。追い付いた3つの光は私の周りを動き回ったかと思えば人の形になったのです。前回はシルエットしかなかったけど、今回はマネキンのように立体で個性がある。


 赤い玉は炎のように全体の体からめらめらと何かが出ているね。色からもうファイアマンとしか思えません。性別なんか知らないけど。拳を握って胸も張って仁王立ちされたら男っぽく見えてしまうんです。青の玉は何て言うか、布。足先まで長くそれをヒラヒラさせてさらに布をかぶってそれもヒラヒラ。立体に人の形が見えなかったら間違いなく布のお化けと私は言っていたと思う。緑の玉はこの中で一番動き回る子どもサイズ。緑が一番分かりやすくて、ウエーブしている髪は腰まで長くてそれがいつまでもふわふわと揺れている。もちろん、来ているドレスの形もふわふわと揺れて実に可愛い!


 しかし―――これはどうすればいいのかね?姿?を見せた3つの色の人もどきさん。私の目の前に並んでいるのはいいが、その後は何をするわけでもなく佇んでいるんだけど………行動を起こしたのは赤。突然、右手の親指を自分でさしました。俺っ!みたいに。腰にはちゃんと左手が添えられている。そして自分を指していた右手は、今度は人差し指を伸ばして私を指差し。まさしく人差し指である。そして、私にその行動の意味が理解できないのは、当然である!


 だがそれだけでは終わらない!!次に行動を起こしたのは緑ちゃん。左右にふわふわと揺れて両手の指先を胸元に置いたと思ったら今度は私にそれを向ける。まるでアイドルが可愛く両手を使って投げキッスでも送っているようにも伺える。可愛いからノックダウンしそうですっ。


 次に青さん。こちらは静かに布を少し広げるように両手を伸ばして―――からの、お辞儀。そして起き上がったら右手を胸元に当てたかと思うと私の方にゆっくりと、手を差しのべるかのように伸ばしてきた。水のイメージが浮かんできて………動きもゆったりだからとても優美に思えた。そして、時が止まったかのようにみなが制止している。いや、緑ちゃんは相変わらず左右にふわふわしているけど。


 まったくわからない。とりあえず、握手でもしようか?いや、不用心すぎるよね?でも警戒するのもアホらしいと言うか、それって青さんしか握手できないんですがね。しかも、握ると言うより手を置くって感じ。さてさて。どうすればいいんだろうかと悩んでいたら3人に首をふられた。わかりません。


 とりあえず………だんだんと青さんが近づいてきたからその手を握ることに。正しくは置く、だけど。なんだか逆らえない何かがあったと思う。でも、見た目に変化とかは何もない。これ、なんのイベント?


『ようやく話せますね。そうやってうだうだと考えているのは真綿の悪いところです』


「―――え、なん?」


 喋った?そうしたら緑ちゃんが腰に突進である。もう、なに!?


『遅いね~。そうやって形から取り繕うところは真綿の悪い癖~』


 え?え?別の声が聞こえるんだけど………?赤も肩にポン、て触れてきた。


『もう少し直感で物を信じろよ。他人も巻き込め。面倒臭がるのも真綿の悪い癖だ』


 え―――まだ別の声。ユリユアさんみたいにおっとこ前だ。これ、なんぞ?しかも内容のすべてが駄目出しとか辛いんだけどっ!?私、泣いちゃうよ!?


『おう。泣け泣け。そしてすっきりしろ』


『【火】は相変わらすざっくりね。真綿は少し落ち着きなさいな』


『落ち着いて~。説明してあげるから、落ち着くの~』


 それでどこをどう落ち着かせればいいのでしょうか。内心もうバックバクなんですよっ。しかも心の声が何やら相手に伝わっているらしい。余計な事は考えられないね。説明してくれると言うので素直に従うとしよう。とりあえず離れてもらって………どこからかテーブルが出てきました。ちゃんと私の目は色が見えます。どう言うことなのだろう?


 やっぱり白だけど、どことなくピンクの細工が飾ってある丸いテーブルと椅子。それぞれが座りだしたので私も座るんだけど、今度はティーポットが出てきた。透明なガラス制で、中身は桃みたいな果実が詰まった液体がなみなみと入っていて青さんが順番に淹れていく。目の前に出されたけど………あ、湯気が。色だってちゃんと紅茶の色………あ、やっぱり桃だ。いい匂い。


 それぞれが口に付けたから私も―――と、行きたいけど止めた。味がわかるとは思えないから。って、言う心の声は筒抜けなんだけどね!幻想だけど体験できるって言われちゃあ気にしてる私が居たたまれない。顔が見えないにしろ、視線と言うものを感じてしまうのだ。普通に飲んでる3人は、どうやって飲んでいるのか謎すぎて逆に飲みにくいんだけどね。


 まあ、匂いがわかっただけでもいいか。とりあえず三人から飲んで、と言われている感がすさまじいから飲むとして………あ。桃ティー………ピーチティーだ。なにこれ美味しい!そのまま無言で飲んじゃったのは流してください。本当に美味しかったもので!!まあ、くすくす笑われちゃっているからいいじゃん!少しは落ち着いたよ!!

 

『では、説明しましょうか。まず、私たちは人ではありません。しいて言えば精霊です』


「直球ですね」


『またあれこれ好き勝手と悩むのでしょう?別にいいのですけど今回は体に悪かったみたいですね。知恵熱ですよ。今見ているのは夢であって、現実です。………もう少し喜ぶかと思ってました』


「キャパ越えました」


『なるほど。そして悩むのも止めたのですね?』


「想像も越えました」


『まあそれはいいとして、今回このようにお会いしたのは他でもありません。異世界からきた魂だからできる芸当です。あとで説明しますね。それで本題ですがお願いがあって参りました。アトラナを解放してください』


「ざっくりストレートですね」


 だからキャパを越えましたって。ぶっとびすぎてまったくわかりませんてば。思わず心で呟いたら緑ちゃんに笑われてしまった。しかたがないじゃない。本当にキャパを越えちゃってもう今は考えたくないのが正しい。なんだろう、と思っていたらこのお茶のせいだそうです。これには3人の魔力が入っていて、私の中の魔力と干渉して抑えているんだとか。何を抑えていますかね、と下っぱのように低い姿勢で聞いたら魔力。と。私に魔力があるの?と疑問に思えば病は気からなります、て………化かされた気分です!もういいから始めっから説明してください。私が倒れてどうしてどうなったか。


『色々ありすぎてクロムフィーアは知恵熱を出しました。原因は真綿があれこれ考えて抱え込んで動けなくなったからです。そこでアトラナがお節介にもクロムフィーアの発熱を早めるために【火】の魔塊(まかい)に触れたのです』


「え、なんでクロムフィーアと真綿は別なの?混乱するから止めてよ」


『クロムフィーアは体の器で真綿は中身だからです』


「私は卵かっ」


『そんなものですよ。熱を出されましたから昏倒して夢の世界に真綿が徘徊できるんです。【火】の魔塊は今、この夢の現実を継続するためにこちらの【火】がクロムフィーアの魔力を使って発動させています。魔塊は単純に、魔法師が魔力を込める魔石でもあるんです。取り出してもその人限定としか使えませんのでクロムフィーアが悪用されることはありません』


「クロムフィーアは体に関する事で真綿は意思、と思えばいいのかな。じゃあ、今って私は熱で昏倒してるって言うけど死なないよね?」


『その解釈でじゅうぶんですよ。死ぬとかはありません。そこはこちらが加減しているので大丈夫です。それで、今回は早急になんとかしていただきたいので私たちがこうやって出てきたのです。幸い、クロムフィーアは魔力が高いので私たちも真綿に触れて喋れるようになりました』


 あー。なんか混乱しそうっ。


「別にあの動作はいらなかったんじゃない?―――私が異世界の魂って言う理由は?」


『少しでも話す感心がないと話せないのですっ。普通なら夢、幻で感心なんて抱きません。それを夢とわかるので………脱線しましたね。真綿はこの世界(ルディアリア)に馴染めていないからです。一見、生活もできて暮らしていますが、まだ貴方の世界と齟齬があるでしょう。こうした“ 夢 ”も貴方だけは夢で終わらないのです。それは意思である魂がこの世界の価値観と違うから異世界の魂と言えます。例えるならこの世界は教会はありますが崇めるものは神ではありません。遥か昔に滅んだ私たち精霊を崇めております。崇めるものもまた、真綿と違うでしょう?』


「神か、仏かだね。じゃあ私も精霊様を崇めたらこの世界に馴染めるの?」


『そんなすぐに尊重し、敬い、精霊を愛すことなんて出来ないでしょう。出来るのなら私は真綿を無節操と罵りますよ』


「罵るんだ………精霊が怖い」


 なんだか口調だけでぷりぷりし始めちゃったよ、この青さん。心であんまり思わないようにするけど思わずにいられないってね。青さんから『もうっ!』なんて聞こえたら私は縮こまるしかありません。


 でもそっか………異世界だからってそんな違いがあるんだ。異世界に飛んだら飛んだだけだと思っていたよ。でも精霊なんてあったんだ。後で説明するとか言ってたけど後が早かったね。


『真綿、話の続きをしましょう?』


「………ごめんなさい」


『それでですね、今の現実ではこうやって私たちは姿を見せられないので、今語り尽くそうかと思っているところなんです。聞きますよね?』


「聞きますけど………それって、私の体は大丈夫なの?こことの時間って現実と比べると遅いの?早いの?」


『どっこいどっこいです』


「………………普通に変わらないとでも言ってよ」


『時差は多少あるんです。それこそ真綿が起きるのを躊躇えばクロムフィーアは起きません。意識は真綿が持っているんですから起きたかったら話が終わってからにしてくださいね』


「どっこいどっこいでもなんでもないよ!?」


『また話がそれましたね。とりあえず私たちの事は気にしないでお願いを聞いてください。アトラナの解放なのですが、魔力暴走のしすぎでアトラナの体が持ちそうにありません。早く解放しなければあの肉体は滅びます』


 なんかすごいの来ちゃったよっ。そんなの私に何ができるって言うんだよ!!今にも泣きそうなんですけど!?


 もちろん心の声は聞こえているので青さんに冷たくあしらわれた。さすが青色のイメージ。冷たいです。そしてそれをもスルーでいくんですね。わかった、進めよう。いつまでも寝ていたらお父様とお母様が怖いので。起きたら二人の姿が近くにありそうで怖いし。


 で、また精霊の下りに戻るんですね。この青さん、説明で大変そうだ。大人しく聞いている赤はずっと制止。腕を組んで足までも組んで背もたれに寄りかかってる姿はきっと目を閉じて待っているんだよね?寝ていたら様になんないからやめてね?緑ちゃんに至ってはやっぱや左右に揺れて落ち着きがない。鼻唄か本当に歌でも歌う揺れ具合―――あ、そんなこと言ってたら鼻唄が聞こえる。いいBGMですね!


 で、青さんの説明は―――歴史から始まりそうだったから慌てて止めました。ねえ、ここの時間と現象の時間は比例しているんでしょ?手短に頼むよっ。




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