大人びた二人に驚嘆を
改訂いたしました。27.6.21
相変わらず暑いです。なんで夏ってこんなに暑いのだろう………日陰にいても暑いよ。快適な魔法具を使っているけどね。身に付けていなかったら―――もう倒れているよ。ついでに目に映る日差しが微妙に痛いです。
今日は朝の授業を受けて、午後からアトラナとお喋りである。間違えた。今日も、アトラナとお喋りである。昨日の今日ですごい疲れているんだけどね。ユリユア様の予定とかぶる明日は午前が騎士棟に行くはめになるんだろうなー。別にいいけどね。諦めてはいないから!今からでも遅くはない!少しでも私は体力を着けるよ!!
で、ご飯をもりもりと食べたところで魔法院の出入り口におります私。現在進行形でとある男女に絡まれています。内容はどこにでも聞くようなセリフで「伯爵だからって休みすぎじゃない?やっぱり親の力なんじゃないの?」とのことです。ある意味では親の力で騎士棟の方へ行かされているのだから否定が出来ない。さて、どうしたものか。
私が聞きたいのは君たち、午後の雑学の授業はいいのかい?もうすぐ鐘がなるよ?サボリですか?異世界でもそんなのあるんだなー、とか思ってみたり。言い返したらうるさいので黙っているのだけど………こう言うのって助けてくれるなら絶妙なタイミングで割って出てくるんだけど、こんな魔法院じゃあねぇ。かと言ってエスカレートしてボコられるの、嫌です。でも口答えしたらうるさいんだろーなー、とね。今日も日差しが強いぜぇ。戻ってきたらこれとか若いなあ………
まあ、私は気長に人を待とう。もうすぐ迎えが来てくれる事だし。気弱な魔法師じゃなければ助けてくれるさ。ところで―――私に話しかけてきた男女は全部で4人。背丈は男の子がパッと見で160前後が二人。そこからほんの少しだけ背が低い女の子が二人。この四人は貴族らしく、身なりもそれなりに派手である。そんなに装飾品を付けて、今の時期では苦しくないのかね?汗をかかないのなら私はどの服でもいいけど。
「声も出ないなんて、やはり私たちの言っている事は本当なのでしょう?なんて人なのかしら」
私、この人と言葉のキャッチボールが出来ないような気がする。
「まあ、クリヌア様ったら、いけませんわ。本当の事を言ったら」
この人は金魚のふんだね。カルガモといきたかったけど可愛くもないので金魚だと思います。ここで人を立てる意味はあるのだろうか?
「おいおい。クリヌアもマチリムもそれぐらいにしておいてやったらどうだ?この子も泣くに泣けないだろう?」
うーん。上からで自己中っぽそう。歪んだ笑みが小物っぽいね。
「ダグラーサはこの子を心配するなんて優しいな。俺なら泣かせるためにもっと酷いことを言ってやるよ」
男は小さいときから高慢が多いのかな?自信家?それとも上部で取り繕ってるSの人?こちらは爽やかな笑顔を撒きながら眼が笑っていないと言うまあ器用だね。
「まあ、バルデュク様は本音を隠されないお方ね」
そして、最初に戻るのか。目の前でコントを広げなくてもいいのに。君たちは馬鹿なんだろうか。こんな玄関口で堂々と名前まで出しちゃってさ。私は覚えたぞ?なにもする気はないけどうっかり口が滑っちゃうかもしれない。敵と認定したので容赦は、しないよ?それが慈悲だと思うのです。
ところで貴族とはなんとまあ面倒なんでしょうね?こうやって目の前でネチネチと攻撃するか、人を介して攻撃してくるでしょう?例外はもちろんあるけど、団体でやる時ってネチネチしているよね。なんでだろう。まあ精神攻撃が一番の証拠を残さない方法だからかな?言葉って怖いよね。でも私の中では無視が一番怖いかな。自分の存在がなくなるから。
ここで不安になると魔力暴走に繋がってしまうから違うことを考えたいるのだけどね?まだ時間にならないのかな?まあ、もう少ししたら来るだろう魔法師を待つ間の時間潰しにはなる………なるの?こっちに来てから私の感覚がおかしくなっている気がする。私、こんなに冷静じゃなかったと思うんだけどなー。こんなに冷めてたっけ?
「あ」
「あら嫌だわ。ようやく口にした言葉が『あ』だなんて。言葉も口に出来なかったなんて、気がつかなくてごめんなさい?」
「まあ。そうとも知らずに私たちが恥ずかしいじゃない。もっと喋りなさいな。私が教えてあげてもいいわよ?」
「駄目だよ、二人とも。こう言うのは僕たちみんながちゃんと躾てあげるんだ」
「それはいい。では、僕の部屋なんてどうかな?この前にね、父上がいい道具を買ってくれたんだ。奴隷用だけど」
あ。この世界って奴隷があるんだ………まあ、気にしていなかったから今更なんだけど。アーガスト家がもしもになったら私も奴隷とかに売り飛ばされちゃうのかな?まあ、暴走で自分が壊れるとしか思えないけど。
とりあえずね、私は二人の魔法師様が見えたからお辞儀をしたんだ。ちょうど彼らが背を向けているから向こうが見えて私だけが対面している感じ。気づいたから頭を下げたのであって、君たちに忠誠をとかまったく考えてないよ?魔法院の中だからね。縦社会を実演してるんだよ。
足音から近づいてきているってわかるだろうに。なぜか私が頭を下げたことで盛り上がれる4人は気づかずに他愛ない会話を続けている。遠目からだったからどんな人かいまいちわからなかったけど、なんだか見覚えがあるようなないような―――誰だっけ。ああ。
「お久しぶりです。ロノウィス魔法師様、ドトイル魔法師様」
「久しぶり、クフィーちゃん。なんだか大変な事になってるね」
「おい、クロムフィーア若魔法師だろうが!礼節をちゃんとしろ!」
「あ、そっか。なんか慣れないんだよ、こう言うの」
「これだから平民は!!」
うんうん。この二人の関係はいつの間に柔らかくなったんだろうか。初めてあった時はドトイルなんかロノウィスくんを怒鳴って殴ったからね。それで私が泣いちゃってあの後は面白かったなあ。私を泣かせたからって笑わすのに宝石をあげて喜ばせようとしていたよね。なんだか懐かしく思えるよ。
「で、これはなんの集まりなの?」
「集まりだなんて。こちらの方が勉強熱心で引き留められただけですわ」
「ふーん。じゃあ、僕が教えてあげるから君たちはもう部屋に戻りなよ。授業は始まっているよ?」
「私たちは授業を受けずとも、受かるので心配には及びません」
「先ほど、平民と仰っていましたが貴方も勉強して成り上がったのでしょう?大変でしたね」
「ははは。それこそ心配には及ばなかったよ?」
………………ロノウィスくん、君の無邪気はいつの間に黒くなったの!?笑っているのになぜか冷たく感じる雰囲気。どうしよう。この前はちらっとしか逢っていなかったから気にしなかったけど、なんだかロノウィスくんがちょっと変わってしまっている!?
それとドトイルが大人しい。相変わらず顔の表情はぶすっとしているけどロノウィスくんの口を挟まない。見守っているわけではないと思うんだけど、なんだろうね。腕を組んで仁王立ちは怖い。
4人とロノウィスくんはなおものらりくらりと嫌みを言ったり交わしたり。ロノウィスくんは出来る子だったんだね!!驚いて声もでないよ!会話は流れ的に授業に出る必要があるかないかに変わって応酬をしあっている。決着がつくのか気になるところです。
私はすでに彼らの対象から外れているみたいだからドトイルのところに行ってみる。移動した事にも気づかずに言い合いをしている姿はもう何に驚けばいいんだろう。若魔法師と魔法師との上下関係は歴然としているのに………
「改めましてお久しぶりです、ドトイル魔法師様。お尋ねしたいのですが、ドトイル魔法師様がヴィグマン様よりお聞きした迎えの方でしょうか?」
「久しぶりだな、クロムフィーア若魔法師。まさかこのようにまた再会できるとは思わなかった。本日からアトラナの所に連れていくのは、私たちなので覚えていてくれ」
「はい。………あの方たちはどうなさるのですか?」
「ん?普通に罰するぞ。魔法師の私たちに対して、あれでは仕事も出来ないだろう。それで、何で絡まれていたのだ?」
「私が魔法院ではなく、騎士棟の方へばかり出入りしているので、知らない彼女たちは授業を休みがちな私を心配してくださったのです。いいご身分ですね、と」
「ほう。それはまた面白い。あいつらの方がいいご身分ではないか」
ドトイルって、貴族っぽいね。貴族だけど。最初から上から目線?的な物言いだったからなおさら。不適は笑みで彼らを見ているよ。あ。ロノウィスくんが笑顔を崩して圧力をかけ始めた。「君たちはそんなに偉いの?」って………普通に怒ってませんか!?
それでも食って掛かる彼らがすごい!はっきりと偉いって言っちゃった!さらに聞き出したら伯爵が2人に子爵が2人。ちゃんと家名まで聞き出してしまってロノウィスくんが怖い。今度は無邪気に笑って頷いてる。
終わったな、と思いました。まさかあんな会話から素晴らしく華麗に誘導して家名まで聞き出すなんてビックリだよ。あの無邪気なロノウィスくんはどこにっ………いや、今まさに無邪気に笑っているんだけどね!でも純粋さはないかな!君はこの4年ぐらいの逢わぬ間に何があったんだい!?
「もういいよ、僕は用事があるから行くね。あ、今後クロムフィーア若魔法師に近づいてはいけないよ?じゃあね」
「まあ、これだから平民は嫌なのです。私たち貴族を蔑ろにするだなんて!」
「そうですよ!ここは平民が貴族を敬うべきでありましょう!これだから世間知らずの田舎者は困るのですっ」
「まあまあ、落ち着いて。僕が父上に言ってあいつをなんとかしてやるよ」
「ダグラーサ様!まあ、なんて頼りになるお方なの」
そしてうっとりなんだ………どこにうっとりする部分があったのだろう。やばい、私には恋愛のレベルが低いのかもしれない。まったくもってうっとりするポイントが分からないよ。
その気持ちはドトイルも、なのか。それとも別の事なのか―――わからないけど私と同じく首をかしげてロノウィスくんに「あれはなんだ」と声をかけていた。ロノウィスくんはきょとんとした顔で彼のフルネームを答えて………叩かれる理不尽っ。こっちは漫才でいい感じに仲が深まっているのだとよくわかるよ。
まだ何か言いそうになっている彼らを今度はドトイルが止めをさしに行く。なんでも、あの頼りになるらしい伯爵くんの父親は騎士棟の上流騎士にいるそうで、とっても見かけ倒しなのだそうだ。さて?それになんの説明でいるのでしょう?
「リーモン上流騎士だが、少し前に騎士を辞められたぞ」
「え………?」
「なんでも、上流騎士が納める在籍税を数年間分、払っていなかったらしい」
「―――在籍税とは、なんだ」
「ある貴族のための制度だ。一定期間に金を納めればその地位を維持できる。払っていれば腕がなくても上流騎士にずっとなれるという制度だ。かなりお高いがな………どうせ親に言ってなんとかしてもらおうと考えたのだろうが、ついでに他の三人も色々と助言してやろう。マージーリン伯爵は父君に相談しても動いてくれない。あの人はグレストフ一進魔法師様を崇拝しているお方だ。その娘をどうこうする事はしないだろう。サナルヴィ子爵とエンファム子爵はそもそもクロムフィーア若魔法師の爵位より劣っているので糾弾したところでなにも出来ない。それに君たちは嫡子ではなく、三男に四男と三女であれば親に助けを望んでも酷いようであれば切り捨てても痛くはない。親の知らぬ間に君たち個人でクロムフィーア若魔法師にちょっかいを出しても構わないが………事後報告では家名に傷つき、貴族の品が落ちるだけでは済まないだろう―――若魔法師ではなく、貴族として接する君たちは最後にどうなるだろうな?」
「な、なんで、そんなに詳しいんだっ!?」
「君たちが若魔法師で、私たちが魔法師だからだ。城に仕える身であれば魔法師は下につく者たちを管理しなければならない。たった一人の悪性のせいで、すべての魔法師たちの沽券に傷つく」
どうしよう。ドトイルが格好よく見えてきてしまった。これ以上を話しているとボロが出ると思ったのか4人はそそくさとどっかに行ってしまったよ。挨拶はなかったけどね。それも癪に触ったのだろうね。ドトイルが報告してくる、とか言ってどこかに行っちゃった。数年前はあんなに怒りっぽかったのに………以外な一面を見た気がしてならない。
「じゃあ、行こうか!ドトイルに任せておけば、あの4人はもうクフィーちゃんに関わってこないよ」
それでいいならいいんだけどね。
「ありがとうございます。また助けていただきました」
「いいんだよ。こっちも大変な役目をこれからやってもらうんだから。グレストフ様も頼まれていたからね。これからは僕たちが出来る限り君を守るよ」
それ、なんのフラグ?
そう思ってしまったのはやっぱり私に恋愛成分が足りないからでしょうかっ!?そんな事はないと言いたい!!でも、これから、とはどう言うことかね。私は若魔法師なんですが?首をかしげてもロノウィスくんはそれを跳ね返すらしい。同じく首をかしげられた。まあいいか。
こっちだよー。とか楽しそうに言われたら気が抜けちゃいそうだし。私もそろそろ向かわなきゃアトラナが怒り出すかもしれないから一緒に歩き出す。
なんと言いますか、あれだよね。みんな成長していくんだね。あんなに無邪気に笑うロノウィスくんは仕草とかすっごく大人に見える。あんなに沸騰していたドトイルはすごく落ち着きを持った大人に見える。こんなに見える範囲で面影と違っちゃうと、私が焦りだしそうになるんだけどね。まだ、私は7歳だからもどかしいよ。




