ヒット&アウェイで攻略せよ
題名に誤字が………恥ずかしいっ!!
ヒット&ウェイってなんだ 。………当たる道?英語能力が皆無でも、よく聞いたり耳にする単語だけにこれはちょっと恥ずかしい。。。
改訂いたしました。27.6.21
魔法院へ久しぶりに足を踏み入れた感覚が、なんだか泣けました。おかしい。私は若魔法師のはず。なんでこんなに久しぶりの感覚を味合わなくてはならないのかっ。
そんな訳で!今日はジジルとエリーを引き連れて午後はあるお部屋に行く事になりました。私たち三人の後ろにはヴィグマンお爺ちゃん。見張り役と魔学医としてついてきた。その顔はなんだかしわが増えた顔で明らかに喜んでいる。
「ねぇ、クフィーちゃん。どこに行くの?午後の授業は?」
「たまにはいいではありませんか。ジジルとエリーも試験を急いでる訳ではないのでしょう?」
「私は受けれるけどねー。正直、魔力操作がまだまだ全然。動かせないもん。試験に受かる気がしない」
「それでも受ければいいのでは?」
「いいよ。魔法師にはなりたいけど、急いでもないし、クフィーと一緒にいる方が面白そう」
にや。と付けるように笑って私を見られてもね。友達が傍にいてくれるのは嬉しいことだけどそれでいいのかね。本人が決めたようだから別にいいんだけど。私は突っ走るよ!すでに足止めされているがねっ。
こうやって廊下を歩いていると学園だよねー。ヴィグマンお爺ちゃんさえ気にしなければ女の子が三人できゃっきゃうふふだよ、この状況。向かう先はちょっと静まり返った場所なんだけどね。まだ明るくてよかったです。
で、ついてしまったんですよね、これが。あえなく通りすぎようとしたら後ろから待てぃ!と止められちゃいました。そのままお喋りしていたかったがしかたがない。こっちも頑張りますか。
目の前に一つの扉。まだ誰も開けようとしないでちょっとぼけっとしていたら私がいつの間にか先頭に立って開けることに。避けるのうまいね、ジジル、エリー。そんな私はヴィグマンお爺ちゃんから注意事項を聞きながら扉から目を離さない。なんだろう………あっちも扉、握っていませんかね?そんな感じが―――
「分かったか?」
「怒らせないように振る舞うのですね。大丈夫だと信じたいです」
「私は大丈夫かな………一回は逢ったけどよく分からない子なんだよね」
「私なんかウィル五進魔法師様を怒らせたお子ちゃまにしか見えないよ。貴族にもいろんな子がいるんだってよくわかった」
それは納得できる。覚えていないけど、敵だった公爵?侯爵?は無駄に突っかかってきたもんね。あれこそ親の七光りだと私は思った。名前すら覚えていないのだけど………どんな顔だったかな?まあいいか。
開けますよ、と言って取っ手に力を。そして私は勢いよく引きずりこまれる。やっぱりか―――なんて。傾く体に次にくる衝撃から身を守るために縮こまる。受け身なんて知りません。いなす事も知りません。そして勢いがありすぎてなにも対応できない(できる気もしない)まま転がる事もできずにドスンと体が痛くなるんです。手を付くことも出来ないなんてっ―――誰か、私に運動能力をっ。
倒れたついでに「やっぱりー!」なんて声を聞きながら私は起き上がる。そして首が絞まるのだがこれはもう日常と化して行くのでしょうか。ギブアップでお願いします!
扉の向こうにいたのはもちろん、問題の渦中であるアトラナ。私の嫌な予感はずばり的中して、開けた瞬間にあっちも引っ張って私も引っ張られると言うやつです。私は思うのですが、私から見て引き戸であっちから勢いよく開け放たれて顔面を強打するのと、押戸で今みたいに引っ張られて頭から突っ込む、または体勢を変えて体をしこたま打つのと………どっちの方が危険は少ないのでしょうか。下手をしたらどっちも顔は痛い。私は体を強打して首が締められる惨状なんだけどね。
どっちも衝撃にもろい頭をやられたらどっちも変わらないか………ようやく解放されて私はもうライフポイントが1割もない。0じゃないだけマシかな。0は気を失うで、留めておいてください。切実にっ。
「大丈夫?クロムフォーアちゃんて、鈍いね!」
「アトラナ、それは危ないから今後はやらないようにするんじゃ」
「なんで?驚かすのは楽しいのに?」
「娘っ子に怪我をさせたらもう逢えんぞ。それでもいいのじゃな?」
「なんで?」
私の強打した体に回復魔法をかけながらヴィグマンお爺ちゃんはなんとか言い聞かせるようにアトラナと応酬してます。器用ですね。それより【光】は産み出す回復魔法ではありませんでしたかね?………私は産み出されなきゃならないほど体の影響を負っているのですか!?怖っ!
「クフィーちゃん大丈夫!?」
「うわー。すぐにできる打ち身って酷い。どれだけ体の作りが脆いのよ。これじゃあすぐ骨折とかするんじゃないの?クフィー、まさか今までこんな事していた?」
「初めてここに来ました。いつもは騎士棟です」
「………そのわりには鍛えられてないね」
「鍛えるためにあちらに寄ってるわけではありませんから」
日々、魔法剣を見て比べて誰がどうで誰のが、とあっちでもっぱらアビグーア中隊長の肩の上で観戦しています。なんだかそんな事が言えないので苦笑いだけ返しておいた。怠慢がここに出てるなんて、言えないよっ。
さて、アトラナはまだヴィグマンお爺ちゃんに食って掛かっている。食って掛かっているって言うより………「なんで?」と首をかしげてほとんどを聞き返していた。思うに、私がなんで?と言いたい。
アトラナは何故か平民のようなワンピースを着ている、ね。アクセントが何もない、半袖で無地のワンピース。エリーより質素である。エリーのは半袖の袖に花の模様や葉っぱの模様。スカートの下の丈から半分も花の刺繍がしてあってちょっと豪華。ジジルだって、控えめに紐で調節できてリボンで飾りにもなる袖に首もともリボンで若魔法師の襟としか思えないローブ―――いや、ケープがセーラー服にしか見えないぐらい可愛い。私だって貴族だからと丸袖とかリボンとか無駄に二重になっているスカートとか貴族らしい服装をさせられているんだよね。アトラナだって子爵令嬢として爵位を持つ貴族の娘。あまりにも服が質素すぎると思う。
ジジルに起こされて私たちは考える。これからどう振る舞えばいいのか、だ。私はもうあやすような感じで子ども扱いする気で満々。ジジルは戸惑っているのか答えがでない様子。エリーは両手を肩まであげて手のひらを上に向けたら首を振られた。お手上げ状態。エリーには相手ができないと言う事らしい。
「じゃあ、エリーは戻る?元はと言えば私が無理にお願いした事だし」
「今日は付き合うよ。今から戻る勇気なんてないし、そこまで嫌なわけじゃないから。ただ、なんか私だとすぐに怒っちゃいそう。クフィーが倒れたとき、ちょっと睨んじゃったから」
「エリー………ありがとう」
こういうの、いいね。友情が目の前にっ!と思えばぎゅー………………はい、またですか。今度は腰。私はヌイグルミでもなんでもないんで、力加減をしてくれないかな。なかなかに痛いんですよ。
「アトラナ、ちょっと痛いです。離れて」
「いや!私もクフィーちゃんって呼ぶ!」
「呼んでもいいから離れて下さい。痛いです」
「アトラナちゃん、痛がっているから離してあげないと、怒られるよ?」
「なんで?」
「お母さんに教えられなかったの?相手が痛がったらやっちゃいけない、て」
「教えられたけど………クフィーちゃんとは久しぶりだったの!だから、いっぱいぎゅってしなきゃ!」
「痛いことをしちゃ駄目だよ。痛いことばかりしていたらクフィーちゃんが泣いちゃうよ」
まあ、痛いのは好きじゃないから泣いちゃうかもしれないけど。すっごい渋々、と言う感じで離してくれた。まだ不満顔だ。仕方ないので頭を撫でてやれば好評みたい。すごく嬉しそうな顔ですりよってきた。ヴィグマンお爺ちゃんの顔はしわが多いから読み取れないけど、楽しそうではない事はわかる。
立ち話してるわけにもいかないから座ることに。と、言ってもベンチなんだけどね。木で出来ているようだけど、なんとなく触り心地からニスみたいな物が塗ってあってツヤツヤしてた。燃え防止しかな?ついでだからぐるりとあたりを見渡したらほぼ何もないことがわかりました。と言うか………置き場所も色々と凄いんだけどね。
今座ってるベンチ椅子。ぶっちゃけただの長方形の箱なだけなんだけど、窓側にあるが斜めの角度に置いてある。対してテーブルもどこにでもありそうな四角い板と四角い4つの足をくっつけただけの簡素なテーブル。これも斜めで、奥の端は異様に狭くなっているね。続いて残りの調度品とも言えるベッドは反対の壁に、これまた斜めと乱雑に置いてあった。一応は柔らかなベッドだと思う。白っぽいマットとシーツが見えるから固いわけではないと思う。
そして、服。脱ぎ散らかって足元が悲惨だ。数着しかないと言っても、斜めに置いてあるから狭いとしか言いようがない。パッと見で八畳かな………一人部屋ではじゅうぶんだけど私たち4人も来ればやっぱりせまいかな。物がないだけ広いとも言える。ああ、あとなんか不気味な像が角を陣取っているね!髪の毛を押さえるようにオールバックにしている謎のポーズをしている男性の像。魔法師のローブまで忠実に再現していて、膝立ちなのが実に気持ち悪い。しかも、よく見たら十進魔法師の像。ヴィグマンお爺ちゃんと一緒で10個のチェーンが胸元に飾ってある。ついでに像がキラキラしている。魔法具なのかと思うとゾッとして笑顔がひきつるよっ。
なんとか気にしないようにしているんだけどね。像の存在がチラついて正直にきつい。アトラナとまあ、楽しく?お話ししているんだけどさ、あれが気になって気になってしかたがない!なんなのあの存在!?逆に怖いよ!!
「クフィーちゃんどうしたの?アトラナのお話し、つまんない?」
「そんな事はありませんよ。こちらでもアトラナは楽しそうなので」
「えー、楽しくないよ。変なおじさんばっかり来るんだもん」
お前さんは女好きの男かっ。一瞬、素で突っ込もうとしてなんとか留めた。危ない。これじゃあ私がまた火傷を負う!そうしないためにも助っ人のジジルとエリーを呼んだんだから!!ついでに目的も忘れちゃあいけない。色々と聞き出すんだった。忘れて………な、ないよ!よし、頑張れ私!
「変なおじさんってどんな人?私、気になるかも」
「んーとね、おじいちゃん見たいなローブ?来てる人」
「それって魔法師様だよね?」
「ジジル、細かいこと気にしちゃ駄目だってさっき言われたじゃん」
「あ、そっか」
「こそこそ内緒話?じゃあ、アトラナもクフィーちゃんとやるー!」
マジか。内緒話をするほどなにかあったかな………私の顔には笑顔を張り付けたまま、すでにげんなり状態である。もう、ね。ほら。疲れちゃったよ。なんだか余計な警戒しているせいで体が強張っていてね。手を握るだけで勘弁してほしい。でも、アトラナにはそんなの関係ないんだよ!と言うわけで私のこめかみに軽い衝撃を受けました。ゴッって言ったんですが、アトラナ。君はもしかして私の心を読み取って攻撃をしてくるの?ちゃんと話を聞いてないから攻撃をしにくるの?頼むからもう痛いのは勘弁してよ、本当。
ごめんっ!て謝るけどね、耳元でそんな大声で謝らなくても大丈夫だから。大丈夫………うん。わかったから内緒話でもしよう。今度は私の鼓膜が心配になっているけど、ここには魔学医で【光】の回復が施せる魔法師、ヴィグマンお爺ちゃんがいるから大丈夫と信じたいっ―――
「あのね、私ね、本当は自由になれるの」
「っ!?」
きた!まさか早くもそのよく分からない話題に触れるだなんて思っても見なかったよ!意外にも本当にこそこそっと教えてくれたアトラナに、今度は私がこそこそっと話しかける。自由って、どうして?てね。まだ謎の発言もあるし、魔力測定もあるから終わりではないけど………これを第一段階としてクリア出来ればきっと―――
「秘密だよ!」
なんて可愛らしく笑顔で言われてもね?期待させといてそれか………しかし!私だって諦めないのだよ!!食い付くのは誰だって出来る!えー、とか教えてよー、とかね?しつこい感じで粘る!私は粘る!!けどすぐに怒りそうになっているのであえなく引っ込んだ。やりずらいなあ………終わるまでこの調子なのかな?きついかも。
それからガラッっと話題を変えて変えて、変えて………最終的にはアトラナの駄々っ子が何回か繰り返して暖簾に腕押し。ついでに帰る時間のなったから帰ろうとしたら魔力暴走で走って逃げてきた。私はおっそい走りでジジルとエリーに驚かれながらも魔法院の出入り口まで引っ張ってもらって息が出来ないでいるよ。走るって辛い………
結果からいって長期戦は間違いなし。エリーにはやっぱり離脱宣言されてジジルも遠慮されましたっ。じゃあ無理して置いていったポメアを連れていこうと思ったけど、初めからポメアではなにか起こったときの対処が全く出来ないから駄目と断られているのであえなく諦める。
「次は私、一人ですか………聞き出せる気がしません」
「しかし、娘っ子は新記録じゃ。今までは入って少ししたら騒いで癇癪が怒って暴走に繋がったわい。このまま頼むぞ」
「………次はユリユア様にお願いしてもいいですか?」
「無理じゃろうな。騎士棟の事もあるし、あの方は魔法に向いておらんから逃げられよう」
「それでは一人なんですね………………明日もですか?」
「ああ。明日も、じゃ。今度はわしではなく―――他の魔法師が迎えにくるからのぅ。今日のようにここにおればいい」
そして去っていくヴィグマンお爺ちゃん………明日は誰が来るのか、聞くの忘れちゃったよ………これは本当に長期戦だね………ジジルとエリーに無言で肩に激励されたのは、なんだかやけに疲れが押し寄せてきた瞬間だよ。果たして私は怪我をせずに大丈夫でいられるのだろうか………すっごく、心配である。体力つけよう。




