これからに祝福を
改訂いたしました。27.6.21
扉を開けてまず最初に顔が見えない陛下がキラキラと光りをまとう王妃様を支えながら入ってきました。どうしたの!?その流れでヴィグマンお爺ちゃんがさっ!と動いて使っていたソファーに誘導。ちょっとお疲れ気味の王妃様がゆったりとした動作でお礼を述べていた。
それから続々とお父様とレーバレンス様が出てきて………ストップ。グラムディア様は待機で。まず、王妃様の体調が優先である。
「どうじゃ?うまく………いったか?」
どう聞こうか悩んでいたけど、前置きとかなしに訪ねるヴィグマンお爺ちゃん。それほど気にしていたのか。それとも長い前置きを飛ばしたかったのか―――どちらも一緒か。気にならない方がおかしいもんね。陛下にそわそわと訪ねていた。
陛下と王妃の顔、と言っても私は陛下の顔がわからないのだけど、王妃の顔色は………これもいまいち分からないのだけど、なんだか表情が疲弊しか読み取れなくて判断がつかない。
何も言ってくれないのでお父様を見る。お父様の表情はけっこう分かりやすいからね。私がお父様を見つめてみたら笑顔が返ってくる。そして大きく頷いて私を抱き上げてこう、言ってくれた。
「成功だよ、クフィー!」
「本当ですか!?」
よかったー!!ちょっと前は唸る結果しか聞いていなかったけど、上手くいったみたい!この一ヶ月、麻痺薬の調節とか色々と魔学医の担当者が頑張っているって聞いていたけど、成功していたんだ!
麻痺は痺れる物と感覚がなくなる物と大きく分けて2種類。それぞれの薬草も違うし、量によって効果が大きくなったり小さくなったりするから微調整が本当に大変だったらしい。そもそも、普通の麻痺薬は痺れる方で、感覚がなくなる方はあまり使われない。まあ、そうだよね。これもまた探すのに苦労したそうです。大抵は麻痺に分類される薬草を複数、混ぜて調合するそうなので………時間がかかったらしいよ。
私も跳び跳ねるように(手だけ)喜んでバンザイしていたらお父様に軽々と高い高い―――いいけど。上下に大振りに振るもんだからスカートの裾が………捲れないっ!?すごいねお父様っ!!しまいにはくるくる回って私の目が回りました!お父様と喜びすぎには注意しよう!!
「これで未来が明るいな」
「本当………あの子も泣いて喜んでいたわ」
そんな王妃様も、嬉しいよね。疲れた顔して陛下に寄り添う姿は安心して柔らかな笑み。まとうキラキラのおかげでその二人だけの空間が、すごく幻想的に見えた。よかった………陛下の顔さえ見れれば完璧なんだけどね。
「まさか―――こんな小さい子どもが考えたなんて、誰も想像がつきませんね」
こそっと声をかけてきたのはウィル様だ。別室で待機していたのかな?いつの間に………数枚の紙を手に、誰にも聞かれないような小さい声で囁いてくれる。ウィル様の言う通り、私が考えたなんて誰も思わないからだよね。後ろにエモール様と数人の騎士がずらずらと出てきた。
まさかあんなに待機しているとは思わなくて思わずビックリ。高い高いをした後なのでお父様の腕に乗っている私は大体が大人と同じ高さ。ちょっと視線が同じって、変な感じ。とくに騎士ってなぜあんなに屈強に見えるのだろうね?絶対にみんながこっちを見る。まあ、ここに私がいる方がおかしいんだけどさ。お父様の腕に乗っているからなおさら。お父様が悪く思われるんじゃないかな。
でも向こうでうんざりしてる顔の人を発見。きっとお父様の素性(親馬鹿)をしって被害にあっている人かもしれない。騎士にも広まる王宮魔法師………ああ、広がるなんて容易いか………
それから少しして―――落ち着いたところでウィル様と宰相様が現状報告。なんでこの二人なんだろうと思ったけど、私から見てこの二人は副会長と書記にしか見えないので何も言わないよ!そう考えたら似合ってしまうのだから訂正する気もないし。口が滑らなきゃ思っていてもいいじゃないか!
二人から出てくる言葉は事前に話していたグラムディア様の火傷とかの負傷した傷を、私が考案した(ことは伏せて)初の二重回復で治すこと。それを細かく手順を説明、そして幾度となく施術を重ねた事からグラムディア様への施術に踏み切ったこと。もちろん、グラムディア様にやる前に幾人の施術者に経過報告を聞いて回り、陛下の意を取り込んで行われた、と。
結果は先ほどお父様と喜びあったように、成功。今は元に戻った感動と麻痺の継続から少し休むことになって席を外しているところ。もう暫くしたら私は拝見ができるらしい。これにより二重回復を改め―――表面が削られ、新たに水の膜ができ、光の回復で治す事から『水光治癒』と名付けられた。【水】と【光】の属性からではないらしい。私の脳内は安直だなっ。回復魔法は今まで通り【光】となるが、皮膚を削りとる行為とまでいく者のみ、この魔法が適応されるとのこと。新たな魔法の歴史を刻むことを告げられた。
そして!今回の労働者はなんと王妃様とエモール様だった!!エモール様は私の先生でもあるから【水】だと分かっていたけど、まさか王妃様が【光】で自ら息子の施術に携わるなんて………驚愕するよ。だからあんなに疲労しているんだ………てっきり削ぎ落とすからそのグロ差にフラりと来たのかとばかりっ―――すみません!お疲れさまです!!
それから成人式の話に移り、このままお披露目という形に繋がっていった。てかこれ私が聞いてていいのかな?まあ、何も出来ませんが。だからこっそりと。その日は私たちはお家で待機なのか、今だ話さないお父様に聞いてみる。そうしたらこそっとお父様から返事が返ってきました。いいのか、お話を聞かなくても!?
返事はなんと、貴族街まで出て、花を並べて待つんだそうです。リディお姉様と二人で。それぞれ顔見せみたいなもので、通りすぎたらさっさと帰って屋敷でお祝いの準備だそうです。それはぶっちゃけると暇になるのでは?後で詳しく聞こう。因みにトールお兄様も成人なので、この時のお母様は城の方に行って陛下に挨拶をしているんだそうです。それから城の晩餐まで付き合って嫁探しだって。そう言えばトールお兄様の好みって聞いたことないね。………トールお兄様って自分の恋愛を聞いて答えてくれるのかな?
「失礼します、陛下。グラムディア殿下の準備が整いました」
「そうか………では、娘よ。感想を聞かせてもらおうか」
「ご無礼がないよう、拝覧させてください」
言葉を言った後に思うのです。子どもが拝覧なんて言わないよっ。後の祭りだね。陛下の顔がわからないのがなんとも言えない。そして私もお父様に抱えられているままなのでなんとも言えない。内心が火の車で荒れまくってます。助けて!!
「じゃあ、クフィー!下りようか!!きっと驚くから楽しみにするといい!」
「グレストフ一進魔法師!グラムディア殿下は見世物ではありません!そのような言い方はいかがなものかっ!」
「ウィル、固いぞ。そんなんだから嫁も来ない」
「なぜ私の嫁事情が絡んでくるんですかっ!?」
それは私も思う。けど、完璧にからかいの対象になったウィル様は控えめにぷんぷんである。なんだか可愛いと思えるのはきっと私の中身がおばさん………自分で言ってて悲しいわー。
まあ、二人を放っておいてですね。私がなにかしないように騎士様がお一人とレーバレンス様が傍についてここから動くなよ、と圧力をかけられました。私は素直に頷いておく。わかってしまう余計なことは、しないようにしなきゃね!
では、と他の護衛騎士が扉を開ければ―――って騎士が先かいっ!思わず期待を胸に抱いていた分、突っ込んでしまったじゃないか!二人ほど来てから本命とか………ずいぶんと待たせるじゃないかっ!ちょっと躊躇ったように入ってきてっ―――焦らすねっ!
「あ」
「………ん?」
「あの反応はさすがに分からんな」
いや、それしか出てこなかったんだもん。しかたがないでしょう?
ゆっくりと、ちょっと躊躇って入ってきたグラムディア様。もちろんイケメンである。王道のイケメン王子でなんだか泣けるのです。なぜ、私は幼女なのだ、と………そんな事より感想だよね。ええとね、ぶっちゃけて言いますと
「まさに双子王子の大人版ですね!そっくりです!!あのお二人も年を重ねればグラムディア様なんですね!あ、でもあのお二人の雰囲気はもしかしたらセレリュナ様かも知れませんね。一度しかお会いしていませんが、雰囲気が似ていたような気がします」
いやー。まるっきり同じだよ!銀髪の―――瞳の色は聞いてないな。後で聞いておこう。いや、後で聞いておくの多いな!?これって忘れるパターンなのかもかしれないっ。って私よっ!グラムディア様に賛辞をのべるの忘れている!!出だし最悪だな………そして私の口から追加な取り繕いでめちゃくちゃだよっ。
「とても素敵です!グラムディア様のお顔を初めてお見受けしましたが、とても穏やかな顔で安心しました。実は、陛下のお顔は分からないので、王妃様のどの部分が似ているのか想像も出来ませんでした」
駄目だ。これ以上、グラムディア様へ賛辞を投げ掛けると事態は大惨事へとしか導かれない!!これ以上は喋っては駄目だ!そんな気がする!そんな時は誰かを巻き込むのがベストであるよ!!そして巻き込むのはお父様だったりする!!もうどうにでもなって!!
お父様もそう思いますよね!?なんて―――言ったらきょとんとして私が詰め寄られました。おかしい。そして冷静になれた私。すごいな。一瞬だよ。もう私の持つべきテンションがわかりません。自分で言うのも変だけどね。
どうやらお父様は、陛下の顔を知らないなんてどうして!?になっているらしい。あれ?言わなかったっけ………?いや、目の前の陛下を指差しちゃ駄目だって、そんな事をしたら宰相様やウィル様の眉間にしわが………と思ったらみんなきょとんとしてた。王妃様にいたってら穏やかに「まあ」って言ってるけど。あれ、何が問題になっているんだっけ?首をかしげていたら陛下が壊れました。どうしよう。笑いだしちゃったよっ。しかも噎せてる!?
「ぶっははは!!そうか、グレストスの娘はお前に似て面白いな!!はっはっはっ!」
「そうね。グラムディアの顔を私たちで想像だなんて。ふふふ、普通は雰囲気を語り、見た目を語るのにそれは後回しだなんて、面白いわ」
やっちゃった感が否めない。そしてお父様は聞いてきて鬱陶しいので説明である。陛下が身に着けているであろう魔法具の威力が強すぎて顔がキラキラとしていて見えません。そう言えばようやく納得。ああ、そうだよ。レーバレンス様に言ったわ。
それから後ろの方も笑い声が。なんだと振り返れば控えめに笑うグラムディア様。それだけで雰囲気が持っていかれてみんなで凝視。初めて笑った!お父様にそう告げれば笑顔で返事を返してくれる!お父様もイケメン枠に入るからこっちも眩しいわー。でもグラムディア様の方がイケメンだ!残念っ、年の差には逆らえないっ………て、あれ?幾つだろう?
「はー………久しぶりに笑ったぞ。やはりお前の娘に見せて正解だったな。一歩を下がって見ると思いきや興奮で忘れ真っ直ぐに真実を述べる。いい娘だな」
「そうでしょう?何て言ったって私のクフィーですからね!」
「それさえ言わなければグレストス一進魔法師も決まるのですがね」
「ウィルー、まだ根にもってんのか?」
「確かにな」
「陛下まで………」
いや、そんな事よりグラムディア様を中に入れてあげようよ。なんだかんだ言ってグラムディア様が部屋に踏み込めないで戸惑っているから。しかし、近衛の騎士まで何やっているのかね?見守り隊ですか?なんで誘導しないのだろうか。そしてなぜグラムディア様は私を見るか。わけわからんです。
そして眼があってしまう瞬間………分からないので笑っておこう。いや、下手したらグラムディア様がイケメンすぎて鼻血が………しわがないっていいな。その微笑みだけで世の女性か虜になると思う。
「お父様、セレリュナ様にはお見せしないのですか?」
「それは私の仕事ではないな。グラムディア様の仕事だ」
なかなかシビアだね。
「そうだわ。もう少しみなでお話ししましょう?今までできた距離を埋めなくてはいけないわ。さあ、クフィーちゃんもいらっしゃい」
「え?いえ、あの………」
王族の申し出を断ってもいいですか、お父様!?その意思はちゃんと伝わったらしい。すかさず丁寧に断ってくれた。さすかだね!これ以上の王族との関係なんて身を滅ぼすようなもんだよね!!
これ幸いとレーバレンス様の魔法で帰る事を進められて乗っかった。もう帰ってのんびりしたいので。まだ半日も残っているけど………途中から授業に戻るのも嫌だな~。
また私の頭に手を置いて影渡りを。お父様が地団駄を踏んで猛抗議しているけどレーバレンス様の敵ではない。お父様の後ろでは楽しそうに微笑む王族が。なんだか恥ずかしい………そんな中でグラムディア様が小さく手を振ってくださるとか好感度が上昇しちゃいますから!!これぞ王子って太鼓判を押しちゃうから!!
お返しに私も微笑みと、貴族の礼で去ることに。忘れてないよ、礼儀。今更だけどね!そして沈んでいく体と―――視界が変わってハルディアス。お互いに声も出さずに驚いて眼を見開いて立っているのと、レーバレンス様が今日のグラムディア様の成功のお礼にご飯のお誘いがかかったのと同時だった。




