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眼をみて眼からそらす

R15表現あり。

想像が逞しい方、一応のご注意を!!

改訂いたしました。27.6.20

 では―――と私の前までやって来たヴィグマンお爺ちゃんはようやく、よ・う・や・く!私の目にある魔塊(まかい)を見てくれる事になった。


 本当に忘れていたらしくて、今からでも遅くないから、診断しようとの事。だったらその見返りで治療費を安くしてくれればいいのに………まったくもってヴィグマンお爺ちゃんがお爺ちゃんで残念だよ。


 そりゃあ、私が痛がったり気持ち悪くなったり(普通はそんな症状がでるって)しなかったけど。そのまま忘れるのはどうなのよ。他の魔病のせいもあるって?いやいやお爺ちゃん。他もあるなら同時進行で診れる診れる。属性がわからない?いやいや私だって何が何だかわからないさっ!


 魔塊の治療法は、属性をヴィグマンお爺ちゃんの“ 感じる ”異能で魔塊を確認して、それに見あった調合をして薬を出すんだって。大体は飲み薬で、一番の効果がある物はその部分に直接つけること。稀に皮膚の上に出てくるらしい。


 皮膚に出てくる事はあまりないんだけどそう言うのもあるらしいよ。魔塊に属性なんて存在するの?と聞けばある、との事。その人の属性で魔力が体内の循環に失敗して固まった事が魔塊と言われるらしく、相手の属性がわかれば問題はないんだって。


 ただ、認定式で自分の属性は分かるんだけど、貴族は確実にやれたとしても平民となるとお金の関係で受けれない子どももいて、自分の属性を知らない子どもが多くいるんだって。だから念のために調べるのと、私は3つの属性だからどの属性が多く固まっているのかが分からないらしい。もしかしたら混ざってるかも?知れないって。そう言うのもあるから調べることは大切なんだとか。私はてっきり【水】が多いから【水】が魔塊になってるのかと思っていたよ。


 しわしわな手に目を覆われながらある事をなんとなく思い出す。アトラナって貴族だよね?城で受けたから当然だろうけど。確かあの子、町の教会の方が落ち着くとかなんとか言ってなかったっけ?お金が高いけど教会で認定式を受けたかったとかなんとか………通ってたの?


「話しかけても大丈夫ですか?」


「………待て………なんだか娘っ子のは読み取りにくいじゃ」


「ここで魔力操作したらどうなるんですか?」


「属性の魔力が動く。………………頭を空にして体の方へ循環出来るか?」


「やってみます」


 頭を空にして―――体の全体を回っている血液と一緒の感覚にしていたから、別の考えにした方がいいかな?えーとえーと?………頭の部分を考えないようにして首までと考えれば出来る?そのまんまじゃん。とりあえず首までを循環させて………あれ難しい。


 えっとじゃあ………ええと、コーヒーカップみたいにお腹に集めてぐるぐる回しておく?でも体にある全体のを集めたら大変な事になりそう。とりあえず集めて………地球をぐるぐる回る惑星みたいな回転になっちゃった。なんかすごい高速回転してどんどん固まってく感じがする………?固まったら不味いんじゃないかな?


「ヴィグマン様」


「なんじゃ、もういいぞ」


「あ、そうなんですか?じゃなくて、一点に集中したら固まっていく感じがしたんですけど大丈夫でしょうか?なんだかお腹がほんの少しだけ痛くなってきました」


「はっ!?ど、どこじゃ!?腹じゃったか!?ちょっと触るぞっ!」


 いやー、そんな慌てない慌てない。ちょっとたまにチクリとするだけなんだからそんなたいした事じゃないよー。布越しで分かるのかな?とか変な事を思いつつはらはらしてるポメアに苦笑い。余計な心配はさせたくなかったかな。


 とか思っていたらヴィグマンお爺ちゃんが急に立ち上がり手を組んで仁王立ち。なんだか睨まれている気がするのは私の勘違いに出来ないようです。魔塊………作っちゃったかな?


「魔塊が出来ておる………これがグレストフに知られれば………うるさい。絶対にうるさい」


「(あちゃー………)すみません」


「わしも言わなかったのが悪い。魔塊は魔力の循環に失敗し、同じところに魔力が行き来する事によって固まり、魔塊になるんじゃ。まさかこんな短期間で魔塊を作られるとはわしも考えんかったぞ」


「頭を退けて首までの循環が意外と難しかったので………一ヶ所にまとめればと思ったのです。よくよく考えれば魔力の塊か魔塊だと言っていたのにすっかり忘れてしまいました」


「うっ、いや、わしも言わなかったんじゃし、その、娘っ子はまだ小さいのに無理をさせてしまった。すまない」


「いいえ、私の方こそすみませんでした。余計な魔塊が増えて治療が大変になりました、よね?」


「………すごく小さいからの。属性も今は【水】だけじゃから問題はない。ただ、厄介なだけじゃ」


 厄介なんだ………聞き返したら頷かれてしまった。どうしよう。これ自分で首を締めたよね。私は馬鹿なんではないでしょうか。いや、そんな事は初めから知っていたけど。なんでまた自分で厄介なもの作っているんだろうね。


 とりあえずヴィグマンお爺ちゃんの厄介を聞く。何が厄介なんでしょうか。もうここは腹を切るしか………腹をくくるしか、ないのでしょうか。覚悟?それは何にしたらいいんでしょう。


「厄介なのは今作ったのを入れて3つの魔塊なんじゃが、すべて属性が違う事なんじゃ。本来、人は一つの属性じゃ。じゃから固まってもその属性を宿した薬で魔塊は溶ける。しかし、お前さんは3つの属性じゃ。一つの属性の薬を飲むことによって属性の均衡が崩れる可能性がある。付けている抑制魔法具は外部からの干渉を防ぐものじゃから違う属性の薬なんぞ飲んだら魔虚像混合(まきょぞうこんごう)に繋がるやもしれん。2つ持ちの異常でも、同時に2属性の物を飲めばまあ、なんとかなるが………3つなんぞどうにか出来たとしても混ぜたものであるから間違いなく、壊滅的な味で舌が死ぬしどうなるかわからん。まあ、娘っ子はそもそも属性が混じっておったから3つも飲めば確実に均衡が崩れて目覚めんじゃろうな」


「………………………え。え?ええ?3つ、ですか?あれ?あの、ヴィグマンおじ、ヴィグマン様!?それだと私の魔塊が治らないように聞こえるのですがっ!?」


 やっば!お爺ちゃんって言いそうになった!そのおかげでちょっと正気に戻れたけどね!!でもどういう事!?治るよね!?治るんだよねえ!?


「………こればかりは、無理じゃ。危険すぎる」


「………お腹のたぶん【水】の魔塊ですよね?これは放置していたら大きくなってしまったりしますか?」


「これは本当に娘っ子の小指の爪にも満たぬ大きさじゃから問題はないはずじゃ。まあ、内側にあるみたいじゃからその内に波に乗って流れるじゃろ」


 内側………お腹………ああ、そう言うこと。お爺ちゃん表現が微妙だよ。―――でも、目にあると思われる魔塊は確定。しかし属性が違うとか何それ…………私に何をさせたいの。治す努力はするけどここまで難易度は高くなくてもいいよっ!


「お嬢様………」


「ポメア………」


 ヤバイ。絶対にバレる。お父様にバレる。


「お父様に隠せない気がしてきました」


「わしもそう思う。あー、まあ、二つじゃ。今心配するのは異なる二つの魔塊じゃ。【火】と【風】じゃな」


「目薬で別々に投与しても属性としては影響がでるんですか?」


「結局は体内に入るじゃろうが。目の裏側にあるみたいじゃからまあ………取り除ければ問題は解決じゃが下手をすれば失明するじゃろうな」


「それって………ああっ考えてしまったじゃないですか!気持ち悪いです!」


「………………………すまんの」


 謝るぐらいなら言わないでー!!もー!!ポメアとりあえずお茶!!


 私を必死の慰めるポメアには悪いけど、慰めるぐらいなら解決策を練って。ごめんね、今酷いことしか言えなくなるからさ。とりあえずお茶を飲んで癒されようよ。そうだ、なんか面白い話しでもしませんか?ふふふ………


 急に微笑みだした私はさぞ気持ち悪いでしょうね、私もそう思う。でも早く現実逃避しないと私ってなんて不幸なんだ、とか変な方向に逝っちゃいそうだから無理矢理にでもそらす。ヴィグマンお爺ちゃんもその提案に乗ってくれた。ため息つくぐらいなら孫のお願いを聞いてほしいものだね。


「治療、出来ませんよね」


「そうじゃろうな。やらぬ方が賢明じゃろう」


「では、アトラナの事はなかった事にして下さい。私にはそのお願いを聞く理由なんてありませんし、また怪我を負いたくありません」


「む。しかし、魔法師となれば逃げられん依頼命令はある。娘っ子は魔法師の卵じゃ。今からそんな事でよいのか?」


「ヴィグマン様。先ほどの口ぶりからの頼む(・・)は、お願い(・・・)としか私には聞こえませんでした。代わりに魔塊の治療費を免除で話を進めたのです。私は優しさでお願いを聞けるほど心が広いわけでもありません。それに私は魔法師の卵ではありますけどまだ形にもなってない、一年も満たない未熟すぎる卵です。それを魔法師の卵と認めるのはいかがなものですが?」


「グレストフに似ておるのぅ。残念じゃが魔法院へ入ればみなが魔法師を目指す。ゆえに卵とくくっても間違いはなかろう」


「まだ夏も終わっていないのですよ?卵と認めてくださるなら若魔法師の勉強の時間をとらないで下さいますか?」


「何を言うておる。お主はすでに半分ほどを教本の中身を覚えておるのと聞いてるぞ?勉強せずとも娘っ子なら少し遊んだところで大丈夫じゃ」


 お爺ちゃん。それは誰から聞いたの?さすがに私はそこまで覚えてないよ?あの分厚さだよ?お爺ちゃんついに耳もやられてるんじゃなかろうか………?


「あれを、半分など無理に決まってます!まだ夏も始まったばかりですよ!?―――それより、アトラナに会いに行くのはお遊びなのですか?それでしたら私の都合に会わせてほしいものです」


「いいじゃろう。いつがいいのじゃ?」


「来年の春の終わりでお願いします」


「遅すぎる。それまでアトラナが暴走をずっと抑えておるとは思えん。今では駄目か?」


「私の都合でいいと言ったではありませんか。今は駄目です。まだ騎士棟の方へ顔を出さなくてはならないとお話をもらいましたから」


「では、秋でどうじゃ?成人式が終われば静かなもんじゃろ」


「秋はお勉強です。2年も同じ事を繰り返すと聞いているので出来るだけ短縮して魔学を学びたいのです」


「ほう。魔学医を目指すんじゃな?」


「はい。数年後、魔学医へそちらに参ります」


 おお。ヴィグマンお爺ちゃんが髭を撫でながら嬉しそうに微笑んでる!そりゃ誘っても来なかったらガックリだもんね!私もそれは嫌だ。本当はもっと先で驚かせようと思ったんだけどね………話題が変わったから良しとしよう。


 おかげでアトラナの事を忘れてくれたらしく、魔学医について話してくれましたよ!ヴィグマンお爺ちゃん、それでいいのかな………


 魔学医になるために、2年の勉強を終えたら今度は魔学の勉強。魔病に使うための材料や素材の知識、一般的な医者の知識を高めるんだって。これを1年。次に先輩が提示した調合を数人と保護者付きで取りに行って調合の練習。基礎は出来るようになるまでこれをまた1年。早くても遅くても調合をし続けるそうだ。魔学医になったら同じ事の繰り返しが当たり前だからやらせるんだって。


 そして若魔法師、最後の1年は上司から出された課題を1年以内で提出すること。これはその日その時の魔法師から出されるのでなにかはさっぱりわからない事になっている。一番酷かったのはとある魔物の舌を使ってとある薬を調合しろ、との事だったんだけど………まあ、舌を持ってくるなんて、グロいじゃん。文は理解できるけどリアルを目の当たりにしたら………ね?


 受けた人は女性だったらしくて、冷たくなった魔物から取るにしても血は出るし。やっぱりいい部分をとるのに触らなきゃいけなくて―――そのおかげでトラウマになって取り憑かれたかのようにうわごとを口にして天命を終わらせたんだと、か。なんでこの話をした、お爺ちゃん。子どもに聞かせるもんじゃありません。ポメアの顔色が悪くなっているよっ。もちろん私の顔色もじゃっかん悪い。はず。


 なぜオブラートに包まなかったの?ああ、この世界にオブラートがないから?ないからなの!?だったら布でいいからくるんで!!夏の怪談なんてけっこうですう!!ぅぎゃぁぁああああああああ!!!!


 …………………………………………………………………………まあ、おかげでそれは今忘れられたのだからよかった事にしよう。ヴィグマンお爺ちゃんもお年なのさ。さて、別室に移動していたお父様たちが帰ってきましたよ~。どう、なったかな。今まで暴かれなかった謎がついに解かれる決定的瞬間に携われる感じで今更ながらドキドキしてきた。


 よし、気持ちを切り替えよ。これは今私に課せられた宿命だ。―――けど駄目だ、ひきつるっ。もうグダグタだよ!




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