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プチ家族旅行10

少しだけ修正しました。

改訂いたしました。27.6.14

 床を眺める私。あの男の子の声で痛い痛いとどこからか聞こえる。この埃を叩いたら痛いと言われました………これが原因なんでしょうか?


 私にはデカイ埃にしか見えないそれはタンポポの綿毛バージョンで小さい。スッカスカじゃないけど白に近いうっすらグレーの塊は埃………だよね?タンポポの綿毛って言った方がいいのかな?いや、長いし………




 なんでー………なんでぼくがたたかれているのっ?―――…




 いや、君、埃くんでいいのかい?もういっそポメアにゴミと言って捨ててもらいたいんだが―――ああそっかポメアはお父様のところに行ったんだった。なんてタイミングでいなくなるのかな。別にいいけどどうしよう。お母様はまともに話せそうにないし。トールお兄様だって苦しそう。リディお姉様は介護で忙しいし………


 とりあえず、これをハンカチと言うなの布を巾着に、ですね―――引っ付かんで、上で掴むしかないか。うーん。とりあえずテラスの方にでも出ようかな。心配だけど、この埃くん?が入ってきた?時にお母様とトールお兄様は気持ち悪そうにしてたし。この家に何らかの結界が張ってあると思う。あ、でもセナが参っちゃうか。うーん………でもこれ、でいいんだよね?この埃くんが邪魔だって言って入ってきたタイミングもばっちりだし。魔力でも放出しているのかな?布越しだからいまいち読み取れない。でもこれが原因なんだろうな。たぶん。


「リディお姉様、ちょっと席を外しますね」


「わたくしの見える範囲にいなくては許しませんわ」


「露台に出るだけですよ」


「………それなら、いいですわ」


 はい。リディお姉様は優しいです。警戒があるようでないような。トールお兄様なら怒られそうなんだけどな。でも了解をもらったのなら私はさっさとテラスにでる。鍵はかかってるんだけどなー。隙間から入ったのかな?


 やけに落ち着いていられるのは犯人が分かったからか。解決策が見つかって安堵しているからか。理由はいっぱいあるようなないような………でも冷静でいられる。なんだか前より冷めやすいような―――?鍵まで開けてテラスに出ればちょっと日差しが強い。そのまま扉を閉めてお母様たちを覗いてみれば………変わんない、か。


 まあ距離がある分だけマシ?かも知れない。様子を見ながら離れてみようかな。でもリディお姉様が怒るかな?その前にお父様、帰ってきてよ。てかこの埃くんが違ったら私はどうすれば………捨てればいいじゃん!デカイけど風に乗ってどっかに行くはず!


「犯人は貴方でしょうか?」


『さあ?あ。でもまえ、むやみにひとまえにでるなって、おかあさんがいっていたかも』


「布に包まれてる貴方が喋っている事でいいのですか?」


『うん。だからだして?はなしにくいよ!』


「私の質問に、満足のいく答えをくれたらいいですよ」


『えー。それじゃあぼく、うえじにしちゃう!』


 ふむ。とりあえずこのデカイ埃くんが犯人でいいらしい。いや、私の中ではもう犯人なんだけどね。まあ、このままで語るのだけど………変な感じだなー。巾着に話しかける幼女。絵面的にまだ誤魔化せる事を私は切に願うよっ。


 とりあえずふらふら舞ってもらっては困るので飢え死にはスルーの方向でいいかな。なにかあったら交渉の餌にして、聞けるだけ聞くしかないか。


「………お名前は?」


『さあ?ぼく『わたしのこ』ってよばれてた』


「他の方は?親ではなく、他人」


『うーん………それってにんげんってこと?』


「人間?そっか、貴方は魔物でしたね」


『そのよびかた、きらい!ちがうもん!はなしかたも、かえて!』


「じゃあ、えっと………魔物ちゃん?」


『かわってないよっ!』


 それは私も思う。しかし、君の種類が分からないのだから“ ちゃん ”とか“ くん ”しか浮かばないんだよ。もうどうすればいいんだか。あ。『まとり』か!


「まとり?」


『それもすきじゃない!ぼくたちは、せかいにかずすくない………まぐとりだよ!!』


 その間はなんですか。えー、“ ぐ ”が増えただけじゃん。お母様の情報が霞むからやめて。聞き取ったリディお姉様を疑わなきゃならないじゃないかっ。


「まぐとりってなに?」


『しらないのー?しんじられない』


「教えてくれないの?」


『ごはんちょーだい!』


「何を食べるの?」


『まぐとりなんだから“ ま ”をたべるにきまってるよ!』


「私は知らないからあげられないよ。教えてくれたらあげるかも」


『しかたないなー。あのね、まぐとりは、とりなの!』


 疲れるな、この埃くん。とりなのって鳥って事でしょうか。嘴も足も翼もない姿でなにを言う。誰か通訳をお願いします。


 まあ、それからなんか長い会話がくり広がりましたよ。~で~なんだよ!って話すからもう面倒臭い。こいつは子どもだからなのでしょうかね?私より子どもな気がしてならないよ。これを見習わなきゃならないのかな………?


 なんとか聞き取って説明すると、彼、と言うか性別がないらしい『まとり』は人間が勝手に変えた名前で、正式には『まぐとり』らしい。あんまり変わんないと思うのだけどね?違うらしい。『まぐとり』は生物の中でその存在価値が非っ常に!高くて数少ない、魔を喰らう鳥、だそうです。つまり私の魔力を狙ったんだね?と聞けば大きな返事が返ってきましたとも。


 でも、これは偏見らしい。『まぐとり』が食べる“ 魔 ”は魔力だけではなく、魔素も含まれるんだって。そして食べるのは食べるのだけど、それは世界の“ 魔 ”の調整のために喰らうだけであって、大した事はないんだそうな。何が大した事はないのかわからないのだけど、本人は死なないよ、魔力を食べるだけと言っている。枯渇したら死ぬんですが?これはどういう事か。


 聞いてみた。まず、それは人間が勝手に変換して『まとり』が出来上がり、鳥型の魔物が魔力を盗ったっていう認識になっているそうだが全っ然!違うからね!て念押しされた。どうしても鳥なんだね………『まぐとり』は全部を食べられないそうです。食べないんじゃないんだね、て聞くと怒られました。“ 魔 ”の管理者の『まぐとり』がそんな事しないと言う。君、大幅にランクアップしたね。大きく出たな、て突っ込んだら教えられた言葉を思い出したらしい。へー………でも魔物だよね?と返すと堕ちた者を魔物って言うんだよ。とまた怒られました―――げせぬっ。


 堕ちた者とは?とまた聞いてみたら魔素に酔っぱらって見境なく血を見たい奴らだそうです。彼らは低脳だから堕ちて魔物になるんだよね。とか………こいつ、魔物に対しては上から目線で語る。なんなの、この『まぐとり』。じゃあ君はなんなんだ、と聞けば『まぐとり』だよ?ちゃんと聞いてた?と―――なんだか腹がたったので巾着の入り口を絞めつつ「魔物とお仲間ですか?違うなら君はなにに分類されるのかな?」と囁いてあげたら変な潰れた音と「まじゅう、ですっ」と言う言葉が。その違いは?


『ちせいがあるものがまじゅうで、ちせいがないやつがまものだよ!』


 とのこと。初めからそうやって言ってくれれば私だって、こんな事をしなかったよ。じゃあ、なぜここに来たのかと聞くと、この場所が元から【土】と【風】の魔素か濃い場所があるらしく、たまにご飯を食べに来ていたらしい。そこでその魔素より強い魔力の私を見つけたので、食べてみようと思ったんだとか。その発言でもはや管理者とか見受けられないんだけど?捕食者だろ?とまた突っ込んだら私の魔力が高いからいけないと逆ギレ。なんか腹立ってきたよ?このまま縛って放置しておこうか?


 因みに食べた後はどうなるんですかね?と聞いてみたところ、普通に消化するよ、て。分からないって。それでまた詳しく聞くのに時間がかかると………時間をかけて貯めていた“ 魔 ”を濃縮して『魔石』を作るらしい。なにか、どこから出てくるんだろうか疑問に思ったけど、考えない。考えちゃ駄目なんだよ!!


「あれ、そうしたら『まぐとり』って『純魔石』を生む鳥?」


『うん。ぼくたちがつくるよ?そんなこともしらなかったの』


「なんか態度でかくなってない?握るよ?売り飛ばすよ?」


『きゃー!だめだめ!そんなことしたらぜんぶたべちゃうからっ!』


「さっき全部は食べられないって言った奴は誰だろうねー。そう言えばなんで私たちは会話できるの?」


『ううう………たぶん、きみの“ ま ”がつよいからだよ!しかも3こもあるし………あれ?でもおもしろいね。“ ま ”がへん』


「なにそれ」


『なんでわかんないかな?にんげんてふびんだね』


「不憫………ねえ、君が来たらお母様とトールお兄様が気分を悪くしたみたいだけど、君の仕業でいいよね?なんとかならないの?」


『なってるよ?でもまだとじこめるのむずかしいの………ぼくだってまほうは、つかえるんだからね!』


 後ろを見てみなよ、なんて言うから見てみたら………はっはっはっー。鬼の形相の家族が怖いっ!!しかもみんな窓を叩いてるっ!?ウェルターさんとトールお兄様なんか剣で叩いてるよ!?怖っ!


 これじゃあ開けるためにも近づけないって!一歩、後ろに下がっちゃったのはしかたないと思うんだ。そうしたらなぜか転けてしまう私。そうか、そこまで鈍臭かったか!!おかげで埃くんを包んでいた巾着が溶けちゃったよ!!


 これ幸いと宙を舞う埃くんは嬉しそうに私の回りをくるくる。それからいただきまーす!と元気よく言って額にくっついた。………くっついた。そして頭からなんだか魔力が移動―――吸われてる?感じがする。あ、抜けてる抜けてる。てか前が見えなくなってきてるんだが?いたっ!?ちょっ、毛が入ってる!毛が眼に入ってるうぅっ!?


『うっ。おなかいっぱい!たべすぎたかも』


 ぼろんと額から転がったのは私の顔くらいあるんじゃないかと思われる毛玉である。この毛玉がっ!!目が痛いじゃないか!!埃から毛玉に進化しても可愛さ微妙だよ!!お前はケサパンラパン………………ケサ………名前を忘れちゃったけどっ、お前はあの白いふわふわして願い事を叶えてくれる毛玉の妖怪かっ!!攻撃してくるんじゃない!!


 ちょっと腹がたったからこの毛玉を鷲掴みにでもして投げ飛ばしてやろうかと、もうなんだか怒りが心頭して後先を考えずに毛玉に手を伸ばした。心の隅っこにはふわふわ堪能したいと思っておりました、はい。絶賛、残念で仕方がありません。


 私はまりものような球体のふわふわだと思っていました。しかし、触ってみるとあら不思議。私のまだ小さい手は毛玉の奥に導かれ、ぶよっとした変な物体を掴んでおります。見る分では私の手が毛玉に埋もれただけなんですが………この毛玉の毛はすごく長いらしい。タンポポの綿毛?ウニ?風力を使って地雷を除去してくれる球体の?―――タンポポの綿毛が近い、かな?とりあえずなんとか気持ちを切り替えて触ってみたところ、鳥の形はしている。ただ、物凄い長い毛で覆われて外見は毛玉だけど………顔、どこ?この枝みたいに細くて長めのはなに?簡単に折れそう。


『だめー!!おっちゃだめー!!それぼくのあしぃぃいいい!?』


「………じゃあ、顔は?」


『もうすこしうえだよ!だそうか?』


「一応、お願いします」


『いいよ!ごはんほんとうにおいしかったから!とくべつだよ!』


 はい!て顔を出してくれた―――らしいんだけど?ごめんどこにあるのかわからない。出てきてよ………膝の上に乗せて探索してみるけど………………………………………これ?なんか毛の間に淀んだ白とか黒とかのマーブル?な点が見えてきた。これなの?白黒って判断がつけにくいね。


『おー。かいがん!つぶらなひとみでしょ?かわいいでしょ!』


「ごめん、私には白と黒の混ざりきらない変な色の点にしか見えないよ」


『えー!?このぼくのかがやくにじいろのひとみが、みえないのー!?もったいない!』


 虹色もあれば淀むのか………すごく残念な気持ちだよっ。そして、毛玉の帰る時がやって来た。とりあえず………お父様に見せようと思う。いや、ね。あんな怖い形相でまだ窓、って言うか毛玉の結界が壊れないらしくて叩きまくってるからさ、君の責任なんだから君も一緒に怒られてもらおうと。私一人では対処できそうにないからさ、ほら、行こう。ウェルターさんなんか剣を振りかざして叩いていたのにっ、今では脇を引き締めて突きになっているからっ!?


 大丈夫。君の体はしっかり私が握っているから逃げられないんだって。球体じゃない鳥型は私の手でもしっかり握れるから大丈夫。『純魔石』を生ませるために家畜にしないしさせないから大丈夫。ただ一緒に怒られてくれるだけでいいから!!お願いだからっ、これだけは一人で背負わせないで!!これだけ面倒な事をしたんだから君も連帯責任なんだよっ!さあ腹をくくって!!




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