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プチ家族旅行8

改訂いたしました。27.6.13

 朝起きて、ポメアに支度を手伝ってもらい、家族とロタンク夫婦と一緒に挨拶と食事を済ませて―――今日はお勉強である。


 旅行をしても、お勉強である。


 私的には、こう、牧場まで来たのだから動物とふれ合い、動物でできる普段できない事を体験できたり、動物と戯れたり、動物と遊んだり、動物と走り回ったり、動物と交流したり、動物と―――…


 動物となにかしたりして、家族で親睦を深めるものではなかろうか?この考えは私の間違いか。ならばもっと簡単に言うと、普段はバリバリお仕事してるから長期休暇くらい羽目を外そう!的なノリでリラックスしていくものではなかろうか。誰か答えをっ!


 今現在、私はあの分厚すぎる魔法の教本と格闘中です。何故かって?ポメアが持参してきて、私が外に出ちゃ駄目だよ、とお触れがでたからお勉強なのである。空しい………


 因みにトールお兄様は今、汗を流しに行っている。なんと、私が起きる数時間も前に起きてウェルターさんに稽古をつけてもらっていたそうな。分かるのは朝の6の鐘より前。午前6時より前で午前3時より後。騎士の朝は早いよ………


 私がそれにほぉほぉと頷いていたらリディお姉様からため息。なんだろうと首を傾げれば、私に緊張感がない事に落胆しているそうです。因みにリディお姉様はお茶のお勉強。お茶当てだって。淹れるのはポメア。こちらもお勉強の一環だよ。


 で、なぜ緊張感がないのか。それは私が謎の小さな飛行物体に狙われている?と言うのにも関わらず、呑気に寝ている事からその図太さに声もでないそうな。そうか。神経が図太いからか。なんてしっくりくる言葉なのだろうね!それと朝早くから剣のぶつかる音がしてリディお姉様は気に入らない目覚めをしたそうな。ごめんなさい。気にせず、すごくぐっすりと寝ておりました………まさに図太いですね!気づかなかった!


 そんな居たたまれない空気になった時はすかさずお勉強に身を投じるべきである!逃げるが勝ちです!今日はどこにしようかな~。そろそろ雑学も埋めたいところだよねー。後ろの方のページを捲って、はい。お父様のご登場です。抱きつきの挨拶はいつもの事です。


「クフィー。朝から声は聞こえているかい?」


「いいえ。何も聞いておりません」


「そうか………今日も探してくるけど、無闇にこの家から出るんじゃないよ?トールとリディの言うことは聞くように。リディ、クフィーを任せたよ」


「わかりましたわ。いってらっしゃいませ」


「ああ、行ってくる」


 そして満面な笑みで出ていく………お父様は私たちから抱きつくことでエネルギーを回復しているんですかね?来たときと行くときの笑顔の差が違いすぎるんですが?そして入れ代わりに入ってくるお兄様はお疲れ顔―――きっと出くわしてハグされたんだね。なんてタイミング………


 まあ、それはいいとしてお勉強をしよう。私は早く魔学医となってこの目を治したいし、今はなにも出来ていないことに呆れている。


 眼を治そう!とか言って何をしたか。この世界を少し知るために本を読んでいた事ぐらいしかない。異世界だ!ひゃっふー!とか言いながら私は何をやっていたか………ただ異世界と言う真新しい世界を堪能してたねえ。これじゃあ何も、ね。必死さが、私にはないと思うんだ。


 馬鹿にやる薬はないとはこの事か………でも、まだ7歳なら道を歩み直せるかな?うーん。未だに子どもの私が何が出来て何をしたらいいのか分からない。隠すのが下手な私はどうすればいいんだか………今までを振り返って見ても我が道を進んで騒動を起こしまくっているようにしか思えない。やばい。本当に問題事の発信源かもそれない。ま、まあいいや。まだしばらくは子どもっぽく振る舞って頑張ろう。ああ、でもこうやって結局は後回し的な事をして後から後悔………やめやめっ!!お勉強を真面目にしよう。考えるだけ無駄なのである!




 ど こ ? お な か す い た―――…




 私は朝食を食べたので腹八分目である。邪魔をしないでください。はい、集中集中………


 今日は―――『魔石』について。魔石にも色々あり、魔力を吸収するもの。自然に魔素が貯まっているもの。魔力で刷り込ませたもの。中身のない石に魔素が入り込んだもの。また、それに魔力をこめたもの。これを一括りにまとめて『魔石』と呼ぶ。これらは魔法具によく使われており、魔法具の要である。それぞれ属性に色があり、【火】の赤。【水】の青。【風】の緑。【土】の黄。【光】の白。【闇】の紫となっているので、属性の見分けとしてそれぞれ効果や自分との相性があるので覚えておくように。


 魔力を吸収する『魔石』。これは元々『魔石』と呼ばれていた石に、魔法師が自ら石に向けて魔力を送り込み、『魔石』作ることを言う。主に魔力がなくなってしまう事を想定し、予備として作っておくものである。他に、自分専用の魔病の薬として使われるので『魔石』を作れるに越したことはない。『魔石』と魔法師の限界を知れる道具としても使われる。使い回しなので、限界をこえたら壊れるので気を付けること。


 自然に魔素が貯まる『魔石』はとても貴重で、まず見つける事がない物とされている。これは魔素が塊になったとも言える『魔石』で、正しくは『純魔石』と言う。『純魔石』は万能薬としての素材としても使われるが、その稀少さから今では幻とも言える素材の一つとなっている。大変壊れやすいので、仮に見つけたら取り扱いにはじゅうぶんな注意をすること。


 魔力を刷り込ませている『魔石』とは『魔法石』が正しい。魔法具に使われている石の事である。魔術師が魔力を練り込み、魔法文字を刷り込ませた『魔石』。中に閉じ込めておく魔法陣は魔力と干渉して発動するもので、装飾の台座がある魔法具によく使われ、外に浮き彫りとなっている魔法陣は魔素と干渉して発動するもの。こちらは短縮するためによく攻撃的な魔法陣が書き込まれる。………魔法具の魔石に違いがあったとはっ。因みに魔力操作で感じとれば魔法文字が読み取れるらしい。


 中身のない魔石に魔素が入り込んだものは、使い勝手が他と少し違い、弱い。ほとんどの石には穴が無数にあり、その穴に魔素が入り込んだだけに過ぎないのでほぼ一回きりの使い捨て。生活魔法に用いられるらしい。魔素の入りもまばらなので、魔法師が少量の魔力を使い均一にして、生活魔法具として売り出している。鉱山に入ればよく取れ、一般的に扱いやすい『魔石』。


 魔石かあ。この抑制魔法具はもちろん魔石を使われているんだけど………まあ、少し表面がごつごつしている?それで海の色で?中に魔法陣が組み込まれているけど魔力と干渉したら発動でしょ?これはどうなっているんだ?でも勝手にでも干渉してなかったら意味ないよね。で、魔力操作で魔法文字が見えるそうなんですが………見えないよ?えーと、魔法具の説明、魔法具の………


 魔法具とは、魔法文字を組み込んだ魔石に、肌身離さず付けるために装飾の台座をつけたものである。特に利用されるのは増幅させる魔法で、その属性で作られた増幅の魔石は自ら装備者の魔力を吸い、増幅させて還元される。これによって魔法師の魔法の威力が上がり、魔力量が着けている間だけ増える。ただし、装備している最中に魔力操作を行い、魔法文字に触れると魔法陣が壊れる、または歪む事もあるので扱いには注意するように。特に中に組み込まれている魔法陣は魔素をあまり含まないために共鳴が行われず、壊れる事がある。調べるのであれば、慣れている者のみ使うように細心の注意を。


 ………やらなくてよかった!うっかり病はここで働かすものではないよ!あっぶない!!


「………魔法師はそんな分厚い本を使うのだな」


「―――騎士にはこのような本はないのですか?」


「騎士はないな。すべて口伝と習慣で覚えさせられる」


「大変そうです」


「クフィーなら大変だろうな。剣も持てないようだし。人の体力より自分の体力を見るべきだったんじゃないか?」


「………う、運動は苦手で―――私は誰に似たのでしょうね」


「………………お婆様、だろうな。母上の」


「トール兄様―――よろしいの?」


 咎めるように、それでいて諭すように。リディお姉様がトールお兄様を射ぬく。そんなトールお兄様はリディお姉様の視線を片手で止めさせた。問題ないといように。リディお姉様もならば、とため息を小さくこぼす。


 私にはまったく分からないけど、お母様のお婆様が出てきたらリディお姉様が止めに入った、と言うことはそれほど大事な話なんだろうね。そういえば、家の事を聞こうにも場所とか色々あって聞けなかったと思う。これは聞くチャンス、なのかな?トールお兄様は止めるリディお姉様を制するし。リディお姉様はそれに従って控えるように音を出さない。それよりポメアになにか指示を出してた。


 私はひたすら頭の中を整理することでどうしようか悩む。アーガスト家っていったい何があるのだろうか。私はてっきり親と仲が悪いとだけ思っていたのに、それは少し違うみたいだ。


 沈黙のまま誰も、何も口にせず座っていた。私も教本を読んでも頭に入らないのでほとんど読むフリ。色々と気になってしかたがないよ。トールお兄様は私をじっと見ているのでなんとも居たたまれない。リディお姉様は涼しい顔でお茶である。羨ましい。なんで見られているんだろうっ。ようやくその静寂を破ったのはポメアが入室許可をとる声。トールお兄様が短く許可をとれば扉を開けるポメアと体を滑り込ませるお母様。なんだか、おっとり笑っているけど、口許がそんなに笑っていない。まだ魔力の疲れが残っているみたい、だね………


「クフィーがアーガスト家について知りたいのは本当?」


 怒って、いる………?


「本当です」


 素直に口にするとお母様の顔はやはり優れない様子でトールお兄様が立ち上がり、使っていた椅子をお母様に進めた。騎士のように座らせればポメアを外に出してその扉を守るように立つ。―――トールお兄様の行動が、ちょっと分からない。厳重すぎじゃないかな………?


 それからゆっくり時間だけが過ぎていく。その間に私はお母様しか見ない。お母様の言葉を待っているのだ。でも、お母様も私を見るだけで口許は動かない。こう言うのは話始めが一番、肝心。でも、大した話が出てこなくて喉がつっかえる。頑張るけど出てこなくて………言葉を紡ぐために飲んだお茶はじゅうぶん、冷めていた。


「ねえ、クフィー………………母は、幸せに見える?」


「………幸せが見て取れるものなら、お父様と並んでる時が一番に幸せを見ています」


「そう。でも私は貴方たちといる時も、等しく幸せよ」


「お母様は―――今()幸せですか?それとも今()幸せですか?」


「クフィー。賢い子………でもその質問は酷いわ。前者は過去と見比べ、後者は一時の夢のように未来が見えない。貴族に幸せを聞くことが珍しいのだけど、聞くなら今までも今でもこれからも幸せかを聞くものよ」


 さすがお母様………私が聞きたいことがバレている。幸せに見えるかどうかを聞いてきたから、素直にそれを返して聞いてみたら返り討ち。とても侮れない。今が幸せなら結婚前はそんな幸せじゃないって分かるし。今は幸せならこれから起こりうる事で不安があり、未来に幸せがあるのかわからない。本当は今は(・・)、ってだけ聞こうとした。これだけでじゅうぶん過去も探れる。


 笑えば成り上がり。笑わなければ不幸は継続。笑いには様々なやり方があるけど大体は読み取れる。目だってその人を語るよね。まあ、それで私がお母様の過去を探れるとはまったくもって思えないんだけどね!そんな過去になにかあったのかな、としか分かるわけがない!だいたい聞く人によってとる意味合いなんて変わっちゃうし………


 お母様は、読み取ってしまったけど。私の頭を撫でることによって私の視界を遮った。侮れないなー。本当。さすが元公爵令嬢様だね。こう言う言葉遊びがすごく得意そう―――


「さて、クフィーはどこまで何を知っているのかしら」


「お母様には敵いそうにありません」


「そうでなくてはまだ困るわ」


「………お母様は公爵の令嬢で引く手数多。ある人物にたいそうお文をいただいて、横からお父様が連れ出したと。お父様の方はトールお兄様とリディお姉様に―――リディお姉様が生まれた後に疎遠になったと伺いました。お母様の方も、絶縁だと」


「私が元は公爵だと、なぜ知っているのかしら。トールもリディも、言わせないようにしているのよ?」


「―――ドミヌワ、元伯爵から………私が城に召喚されて謁見で審議が行われたときにドミヌワ元伯爵の過去を。そこでお母様のお話が少し出ました」


 それは、嫌だったらしい。ブタさんの名前を出したあたりでちょっと険しくなったのを私でも見てとれた。ちょっと公爵の下りを聞いてきたとき、トールお兄様とリディお姉様を見たのは怖かった、な。いつもおっとりとしているからなおさら。違う表情は私の乏しい頭では理解に遅れる。


「………そこまで知っているなら―――話してもいいのかも、知れないわね。クフィーも、立派な貴族の仲間ですもの」


「お母様がよろしいのであれば、わたくしどもは何も言いません。ここにいても?」


「ここにいなさい………でもね、クフィー。勘違いしないでほしいのだけど、私は家を出てまあ複雑にはなってしまったけど昔も、今も、これからも幸せなのよ」




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