父に連れられて
誤字等を修正いたしました。27.4.3
はい!ただいま馬車の中が揺れてひ必死にしがみ付いています!
カタカタポコポコと音を聞きながら私は馬車で移動中です。なぜかって?私の魔力が多いらしいから確認なんだって。
本当は3歳ぐらいで大雑把にでも量ったりするらしいんだけど、昨日の事があったからさっさと確認して対策を練りたいとか。対策があるなら初めからすればいいと思う。
父と母があーでもないこーでもないと悩みながら話していたのできっとこの情報は間違っていないと思います。
いや、ね。赤ん坊を抱きながらなに話しちゃっているんでしょうね。説明ですか?嬉しいけどおかしいと思うんだよね。別に構わないんだけどさ!話すならもっと詳しくお願いします。
そんなわけで可愛くおめかしして父の膝の上で大人しくしています。ええ、大人しく、です。
そこまでやんちゃな覚えはまったくないのだけど………………如何せん。このカタカタポコポコは揺れる。揺れるのですよ!
多分、多少な揺れなんだろうけどね?私にしてみればすごい揺れなわけですよ。ちょっと跳ねただけでお尻が浮いちゃうんだから。油断していたら父の膝からジャンピングものだよ。そんなの、体験したくありません。
なので父の腕をぎゅっ、と握って耐えています。ええ。父が微笑ましいそうにニコニコしていますが。私にはそんな余裕なんてありませんから。
早くついてくれっと必死にしがみ付きながら祈りの捧げつつ待機中です。
「そうだ、クロムフィーア。城の中に入ったらはしゃいじゃ駄目だぞ。私の言うことをちゃんと聞くんだ。いいね?」
「あい」
いや、わかるけどさ。私まだ1歳半(略)………………なんて聞いてくれるわけないんだけど。
あれ?1歳でこんなに言い付けさせんの?1歳と言えば好きにはっちゃける子どもにわかるわけないと思うんだけど。
そりゃ最初の躾はわかるけどなんか違うよね?ん?私が違うのかな?
でも真剣な顔で言われているので。こっちも神妙な顔で頷いておく。実際に私の顔はどうなっているかなんて知りません。わかるわけないじゃん。
そうこうしている間にようやく馬車の動きが止まった。うむ。これで落とされる心配をしなくてすむよ。
馬車の扉が開くの待つ間に抱っこの準備。片腕で支えられたので私はしわにならないようにローブを掴む。
そう、ローブだよ。ローブ!
黒色にしか見えないから実際はどんな色なのか想像できないけどさ。縁は白(私にはそう見える)で角にちょちょいと葉っぱ?が描かれているのです。
胸元にはローブの端を繋ぐようにチェーンが10個。長さを調節して、チェーンがアーチを描くように10個が束になってる。装飾としてはチェーンの数が多すぎると思ったけどお父様カッコいいんで。まったく気にしません。束になっているから取り外しはたぶん楽なはず………でも大変そうだな、なんて思ってもいません。
さりげないお洒落にちょっといいな、なんて思いながら魔法使いと言えばローブだよね!と感極まっていたり。顔に出さないようにするのは難しくてすでにニヤニヤと笑っているのはしかたないよね。嬉しいんだし。
ゆっくりと開けられる馬車からいつも通り父がひらりと降りる。ぎゅ、と握る手に力が籠ったのは愛嬌です。
それで………………?城とはどんなところかね!やっぱり白くて棟がいっぱいあるのかな!?
「おー………………きあきあ!」
「ん?きあきあ、か。光ってると言う意味だな?確かに城は豪華だがきらきらとしているか?」
なに言ってるの父様、めっちゃキラキラしてるじゃないですか!
見上げた。壁からすでにキンキラキンと輝いて眩しいぐらいなのに。これがキラキラしてない、だと?
城の方もキラキラと目映くキラキラしてるのに………この城、侮れないね。さすが異世界の城。私では想像も出来ない。
でも白黒世界でなんでこんなに輝いているんだか。誰かそこを教えてほしい。このキラキラ、光だけが浮き彫りに見えるんだよね。眩しくないのが眼に優しいです。
「今日はまた可愛らしい方が一緒か。まさか、と思うが拐ってきたんじゃないよな?」
「冗談は嫌いかな、ウェルター。私の可愛い娘だよ」
まさかの知り合いがお出迎えです。顔はわかんないや。でもこの人門番とかの人だよね?槍だよ。腰に剣だよ。鎧だよ。全身鎧は重そうだよ………
父様は魔法使いではなかったんですか?なんで騎士に知り合いが………交遊広すぎじゃない?あれ、貴族どうした。
「………いくつだ?」
「1歳と6ヶ月ぐらいだな。ヴィグマン様に取り次ぎの連絡はしてあるはずだ」
「連絡は入ってる。くれぐれも騒ぎを起こさないように言っておく。とくに娘さんはまだ小さい」
「それは了承しかねんな。クロムフィーアは可愛いから自慢したい」
え、なに言ってんのこの人。
「はあ………………ここまで親馬鹿だとは知らなかったよ」
「いいじゃないか親馬鹿。実際にクロムフィーアもリアディリアも自慢で可愛い私の娘だ」
「はいはい。さっさと通ってくれグレストフ」
まるで猫ても追い払うように手でしっしっと払う…えー、と。そう、ウェルターさん。
甲冑の中にほぼ顔が埋ってるけど、隙間から見せてくれた瞳はたれ目ですごく優しそうでした!たれ目はいい人!
私は赤ん坊、と言うことでウェルターさんの手の払いを挨拶と思い込んで大振りに手を振っておく。さて、好感度は上がるだろうか?
一瞬だけ手の動きが止まったけど、お父様が振り返ってしまったためにあまり確認は出来なかった。てか全身鎧なら表情とかわかるわけないじゃん。
お父様が振り向いたらすぐに向こうを向いちゃうし。もー。
でも、面白いものはまだ残っていた!
城に入ろうとしたらなんと、キラキラがぼや~んて。全部がキラキラしてたけどお父様が通ろうとしたらその分だけゆっくりと開いたのですよ!
これには驚いて口を開けたままぽけっとしてたら笑われてしまった。別にいいけど、思っていることは違うからね?中も凄いけど。
やはり白と黒じゃあ面白味も欠けるけど………壮大な装飾とか。作りとかがわかるし凄い。
いったい何十人?何百人?もしかして千?私が小さすぎていけないのか幅の感覚がまったくできない。それだけ広すぎる玄関ホール(多分)。
城の作りなんてあっちの時に見たことも調べた事もないからあんぐりした口が塞がんない。
私が静かなのをいい事に早々と進んでいくお父様。呼び名はもうお父様に統一させておこう。でさ、お父様。なんでこの花はキラキラしているんですかね?
形状は薔薇なんだけど、なにやらうっすらとキラキラしているんですが………?
「きあきあ?」
「ん?後でな」
それ、本当ですか?短く答えてスタスタ歩いて行っちゃうのに本当に覚えてんのかね。てか私は最近『キラキラ(きあきあ)』しか言っていない。
それでも足を止めることなく―――なんとなく左寄り?に進んだお父様は一つの小さい扉の前に立った。城なのに普通極まりない簡素な扉。一般ドアですか?
じぃー、と見つめるけどわかんない。お父様の顔を覗きこんだら真剣な顔で気合いを入れていた。
もしかしてなにか仰々しいものがこの先に………え、待って下さい。私も気合い入れさせ―――
「行くぞ?笑顔が大事だ」
待って!そんな強ばった顔で言われても説得力ないよ!?
でも無動作にバーンと開いちゃう扉に大股で入っていくお父様。だから待とうよ。私にも心の準備をさせて。
とか言いつつ呆けるのが私です。え?何故かって?そりゃあ異世界ひゃっふー!と叫びたいからです!
バーンと勢いよく入った瞬間。そこはなんと、キラキラ世界が再び!?ひゃっふー!
右反面の壁にいったいどこからどこまであるのか、と聞きたいぐらいに並べられている本棚。そこに数人のお父様と同じローブを着た魔法使い。本がふよふよ浮いてます!そこがキラキラしてます!!
思わず顔が綻んでしまうのです。
左はよくわからないけど、これまた多くの人がキラキラを発しながら何かをやっている。一人を見ていたら水を出したり火を出したり。魔法の練習かな?
これでもか、って言うぐらいキラキラしていたら嬉しく思うのは当たり前。だってキラキラしか私の楽しめる色がないんだもん!
そんな私に大満足のお父様は引き続き大股で中に入っていく。横から誰かが小走りで駆け寄ってくるけど誰だろう?なんか慌てた感じでこっちに来た。
「グレストフ様、すみません。ヴィグマン様は急用で出掛けてしまいました」
「抜け出せない急用だったのか?」
あ、なんか真剣な顔で声を潜めてきた。
「近衛が来たので………おそらくは」
「………………またか。あー、どうする。まさかレーバレンス様がいるとは思えないし」
「あ、それが今日はいますよ」
なんと。引きこもりじゃなかったの?
「いるのか?こんな時に限ってか?なにか企んでいるんじゃないだろうな?」
「グレストフ様さすがに言葉が―――ヴィグマン様が出る代わりに王が寄越したみたいです」
「代わりを置いていったのか。すぐに消えなかったのが驚きだ」
「あ、書類整理で埋もれてますよ」
「………………最悪だ」
あ。お父様が項垂れた。首をガクンて。
そうしたらこの駆けてきた青年くんと目がばっちりあっちゃいました。
さて、どうしたものか。とりあえず笑っておこうか?にへら。




