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プチ家族旅行6

改訂いたしました。27.6.13

「ウェルター、魔法を使っていいか?」


「俺の牧場に自然破壊や動物虐待しなければな」


「しないし見たくないな。クレラリア、お願いできるかい?」


「クフィーは大丈夫なのですか?」


「他属性の干渉、抑制の魔法具を着けているから大丈夫だと思うんだが………なにかあったらすぐに言いなさい」


「わかりました」


 と、言ってもトールお兄様やリディお姉様は心配らしい。私に異変が起きたらすぐに対応が出来るように傍までやって来た。たぶん、私に触れて魔力を把握しようと考えたらしい。両肩にそれぞれの手が置かれた。


 それを見たお母様はウェルターさんに魔法を使うことを宣言する。風魔法の風を使って、不自然な魔力を探しだすらしい。牧場は広いので、魔力を持った動物がいるかいないか、慎重に聞いていく。


 聞き終わればウェルターさんは中に入っていった。たぶん、伝えに言ったのかな?それと同時にお母様の指先がキラキラと光り始める。指をゆっくりなぞって魔法文字を描き、終われば丁寧な声で魔素を集めた。結構な量が集まってきている。よく見たら………けっこう、濃いかも。


 じぃっとそれを見つめるも、くるんと弧を描けば弾ける用にキラキラが散る。ううん。違う。風のように魔素が流れていった。


 私はそれを追うように魔素―――と言うより魔法かな?を見つめて、消えていくのを確認。きっと風となっているのだから大気に混じったか、もう遠くに行ってしまったか、だと思う。


 お母様を見れば目を瞑ってなにやら集中。ここで声や音を出すなんて事はしない。しないけど、暇なんだよね。他人事でもないけど、こんな両肩を置かれてまるで逃げれない感じでさ。なんだかちょっと悪いことをしてしまった気分。さて、どうしようか………なんとなく、なにも出来ない不安はある。




 あ れ ? ど こ ?―――…




 うーん。怖いイメージがまったくない。でも不安が出来上がってしまった………親の影響は子どもに移るってよく言ったものだね。まだ冷静でいられても、よくわからない。幽霊や妖怪は怖くないのだけど、雰囲気かな?雰囲気でなんだか不安になってきたような気がしてきた。不安だと思うとなんだか左目がチリチリする。右目がなんだか熱くなってくる気がする。クミリアの時もこんな感じだったなー。


「クフィー?」


「はい?」


「………なんでもありませんわ。クフィーは暇でしょう。手を繋いであげてもよろしくってよ」


 リディお姉様はストレートだなあ。暇だけど。ん?なんで手なんだろう?しかもさあ取れ、と言わんばかりに手のひらを私に差し出す。口はちょっとだけへの字。握って欲しいのかな?わけがわからないが握っておこう。


 ぽん。と手を置いたらきゅっと握られてさ。手がまだ小さいとか肌がどうとか爪がどうとか言われて女子トーク爆発にリディお姉様はぷんぷんである。そんな事を言われたって、ねえ?まだ早くない?でも話すリディお姉様の顔はなんだか私を見ている。何を見ているんだろうね?


 話してていいのかわからないけど、お母様もお父様もなにも言わないし、集中してるみたいなので控えめにリディお姉様と雑談した。内容はやっぱり“ 美 ”に関する事だったけど、リディお姉様の自慢の知識はすごい。美意識が高すぎて、すごい。足の爪先から頭のてっぺんまで。余すことなく説明をしてくれる。


 ちょーっとお腹いっぱいになりそうだが、こんな暇な時にリディお姉様のお話しをしているのもいいかも知れないね。トールお兄様は入れなくて苦笑いしているけど。それを見ると可哀想だけど面白かったりする。ほら、リディお姉様がトールお兄様にもお肌の調子がどうとか説明が!のらりくらりと交わすトールお兄様の世渡りなこと。ああした方がいい!と言えばそうか、それはすごい、今度試してみよう、とか。トールお兄様はリディお姉様に慣れているね!


 結局は兄妹でなんだかんだと話が盛り上がってお父様たちをそっちのけ。いや、忘れていた訳じゃないんだけどさ。なにも反応してくれないからこっちがヒートアップしたと言うか………戻ってきたウェルターさんに軽くチョップくらいましたっ。ごめんなさい………


「少しは緊張感を持とうな」


「はい………」


「くっ。わ、わたくしはクフィーのためを思ってお話ししていましたのよっ」


「わかったわかった。トフトグルはこれを持っておけ」


「………危険、なのですか?私はクフィーを守ればいいでしょうか?」


「そうだな、嬢ちゃんとリアディリアを守ってやれ」


「ウェルター、それは私が言う言葉だ」


「―――じゃあお前が横やりして言えよ………」


 ああ。せっかくのはりつめた雰囲気が台無し。ウェルターさんが用心のために自分と、トールお兄様の分の剣を持ってきて渡している時になんと言うツッコミ。ぶち壊しである。


 でも、用心のために剣なんて渡してさ、そんなに危険なの?もう終わったらしいので聞いてみる事にする。お母様、ちょっと具合が悪そう?だ、大丈夫!?でも、こう言うときって駄目とか無理って言わないよね………笑って「大丈夫」って言って私の頭を撫でる。私にはお母様の顔色が白くなっているとか分からないけど………触れた手から魔力が少ないのは、分かるんだよ、お母様。


「外部からの侵入はやはりあった。速度が遅いらしく、まだ結界から全くと言っていいほど離れていない。大きさは小さく、飛行しているそうだ。一匹で」


「サイ………大きさまでわかるのですか?」


「【風】を使っているからね。呼んだ魔素と魔法の大きさで自由に扱えるんだ。【風】で探るには色々あって―――クフィーは五感を知っているかい?」


 さっきボロだしそうだったし、その手の読んでないから今回はやめておこう。かわりません。


「五感と言うのは、人間が『感じる』という感覚を五つに別けて分類したものだ。音を感じれば聴覚。見て感じれば視覚。味を感じれば味覚。匂いを感じれば嗅覚。触って感じれば触覚。【風】にも色々あって、遠くへ耳をすませたり、風を使って物を触ったり、匂いを探してみたり出来るんだ。さすがに風で味と物とかは見れないけどね」


 ほおー。なるほど。でもごめんね、お父様。知っていたんだけど説明はさすがにまずいと思ったんだ。ありがとうございます。でも【風】でそんな事も出来るんだね!触るとかそんな事も出来るんだ。それってどんな感覚でわかるのかな?すっごく気になるんたけど。


 けど、今はそれどころではありません。何か分からない小さな飛行物体が侵入してきたからね。そう言えばなんで動物たちはあんなに固まっているの?と聞けば結界が壊れたときに音が鳴るからそれだろう、て。小さいながらも力を持っている物体らしい。本来なら割れる音か魔法師に聞こえるそうだ。でも小さい体で隙間を無理に通ったせいもあって壊れずに何らかの音が鳴ったんではないか?とのこと。動物は人間より数十倍の聴覚をどの動物にも持っているらしくて、高音がとくに耳に拾いやすいんだとか。


 じゃあ、いつ戻るの?って聞くとしばらくだけだよ。とのことです。しばらくってどれくらいですか?私の感覚では1時間は経っていればいいところなんだけどなあ。まあ、時間の感覚なんてそもそも当たったこともないけどね!私の気分で時間は決まるのだよ!!


「今日はトールとリディとクフィーはお母様と家にいなさい。ウェルター、カリャルに室内に入れられる動物を貸してくれないか」


「カリャルに言っとく」


「お父様はどうなさいますの?」


「ウェルターと小さな侵入者をみてくる」




 ね え 、 ど こ に い る の ?―――…




 うーん………なんだか危ない気配が?でも私は霊感と言うものはまったくないし。前世で友達がなんたか肌寒いって言ってても私は暖かかったからなー。まあ、いいか。それより室内で戯れられる動物が気になる!やはりここは王道の猫とか!?小さめの犬とか!?今度こそ抱き枕できるかな!?


 大人たちは真剣な表情でやり取りをしているが、私は我が道を行こうと思う。だって、お父様がなにかしてほしいって言わないし。いても私は邪魔だろうからね?親に丸投げが一番ではないか。ごめんね、お父様。たぶん私のせいじゃないと思いたい。


 そんなわけで様子を窺いつつお昼である。いつの間にか、お昼なのである!ここの料理ってちょっと味が濃い感じだけど、美味しいからいいさ!だってシチューなんですもの!シチューがなぜここに!?と思ったけどちょっと残念。この世界では白いスープと名付けただけでした。まあいいか。遠慮なくおかわりお願いします。


 で、一階に家のサロンに負けない広いサロンがあるそうなので、そこの室内で戯れられる動物のお披露目。どんなのかまったく想像できない。だって、馬でもう衝撃的なんだもの。心構えをしておくに越したことはない。


 カリャルさんに待っていてね、と言われたら私は待つよ!室内だから小さいよね。もふもふかな?ふさふさかな?それともふわふわ?うわー!気になってきた!けどトールお兄様にたしなめられる………興奮していたらしい。そんなに?あ、リディお姉様にも軽く呆れられてしまった。


 私はてっきりドレスに毛が付く、とか言って断ると思っていたのにね?「クフィーがどうしてもと言うならいてあげてもよろしくてよ!」なんてさ。リディお姉様が素直じゃありません。目が少しだけ楽しそうです。だったら私はリディお姉様を誘えば早い話で―――こうなる、と。まだかなー?




 も ー ! ど こ い っ ち ゃ っ た の ー !?―――…




「どこかだよ」


「クフィー。独り言は危ない」


「え?ああ、また聞こえました。なんだか探してるみたいですね」


「クフィーを?」


「私に話しかけているのであれば」


「………後で伝えておこう。また聞こえたら全部教えるんだ」


「はい」


 私だけ?しか聞こえないみたいだし、こらは随時で伝えた方がいいかもしれないね。とりあえず今は入ってきたカリャルさんに目を向けるべきである。開けた扉から顔だけを覗かせたカリャルさんは、にんまりと楽しそうな顔で―――


「じゃーん!」


「あ!」


「待て。抱き潰しそうだ」


 いや、トールお兄様!私を止めないでえ!!見てっあの円らな瞳で見つめてくる愛くるしい動物たちをっ!!てててー!と走りよって私の足元きたー!?トールお兄様!トールお兄様!手を離してくださいませ!これは抱き締めなきゃ損だよ!私が損しちゃうよ!?


「いいか。あれは小さい。いくらクフィーに力がなくても抱き締めすぎると死んでしまう。力加減を間違えるんじゃないぞ?」


「はい!」


「大丈夫か………?」


 そんな心配をしなくても大丈夫だよ!見てよこの、じっと見つめる感じっ!たまんない………私はこの時を待っていたよ!!ちっちゃいわんこに会えるのをどんなに待っていた事か!!子犬が可愛い!!


 さらに念押ししてくるトールお兄様に頷き返して私はそっと足元に駆け寄ってきてくれたわんこを抱き上げる。やばいふさふさだ!コリーみたいでマジ可愛い!!トールお兄様、見て!ふさふさなんだよ!?足が短いんだよ!?ぷらーんとした足も短くてお腹もぽこんとして可愛いんだよ!!


「すごいな。顔だけでなにを言ってるのか読み取れる」


「だ、抱き締めてもいいですか!?」


「そっとだぞ?ぎゅってしたら駄目だからな」


「はい!」


 ぎゅっが駄目ならきゅっ!にする!!でも小さいのになかなか重いこのわんこは私の両腕がぷるぷるさせるほどだ。まず膝に置いてですね、脇を手でじゃなく腕で抱き上げてその背中に頬擦りをっ―――たまんない。もうこれほしい。わ、わがままを言ってもいいかな!?


 そう言えばリディお姉様がやけに静かかも。リディお姉様も私と一緒に動物と戯れましょうよー。―――リディお姉様、何しているの?


 なんだか扉の方を立ったまま硬直してさ。あっちに何があると言う?ちょっと体をずらして覗き見たら………おお。ドーベルマン!こちらも凛々しく仁王立ちで格好いい。やばい。足元にコロコロした小さいのが!


 でもなんでまたこう………睨みあっているの、二人―――じゃなくてリディお姉様とドーベルマン。あれ、ヌイグルミあげた時は嬉しそうだったと思ったんだけどなあ。なんでだろう。衝撃の雷がなった気がする。




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