プチ家族旅行4
改訂いたしました。27.6.12
お話しに花を咲かせていたらなぜかついてる牧場。向こうに森が。向こうにはポツポツと動物っぽい物体が。たぶん馬。ちょっと小粒すぎて見えないよ。で、その中心に建つ一軒屋。―――立派すぎるログハウスである。いや向こうにオープンなログハウスがいくつもあったわ。たぶん馬小屋だね。
「中に入っててくれ。俺はパルとテクとエルを小屋に入れてくる」
「手伝いますよ」
「見ろ、グレストフ。これか思いやりだ。気配りだ!」
「ウェルターは私の思いやり、ほしいかい?」
「いらん。餓鬼の頃を思い出しただけだ。トフトグル、頼むぞ」
「はい」
本当、小さい頃には何があったんだろうね。少し渋い顔をしたウェルターさんがトールお兄様をつれて向こうの馬小屋にいっちゃった。なんか笛の音が向こうでする。
私はお母様に促されて立派すぎるログハウスの中へと入るよ。立派というか、むしろ屋敷に近いね。中も全部木製なのかな?ちょっとファンタジー。でもなんだかキャンプに来たみたいだね!
とりあえず子どもらしく一番乗りしてみた。ほら、ここは屋敷じゃないし。ちょっとはっちゃけてもいいじゃないか。座りっぱなしでお尻も痛かったし。後からになって気づくほどお喋りしてたってどうなの?みんな話上手だよねー。
でね。玄関を開けてすぐに飛び込んできた光景に目が点になりました。目も擦ってみる。うん、何も変わらない。私の目は正常に白黒の世界で物を映している。じゃあ、さ………なんでここにいるの?
「ポメア?それに、ジェルエ?」
「はい!来ちゃいました!」
「こちらは本当に久しぶりですね。さあ、お食事の準備は整っております。まずはお着替えいしましょう」
え?え?どうしてポメアがいるの?あれ、屋敷の方はどうなっているんだろ?私を避けながらみんなは気にしない素振りで中に入っていく。ジェルエさんはお父様とお母様とリディお姉様のお着替え担当で、ポメアはトールお兄様と私が担当。ざっと別れてさくさくと2階に上がっていく面々に、私は未だに呆けています。
まあ、この際だからポメアたちがここにいる事は別にいいんだよ。お父様だって本当はここの場所を教えようとしなかったし。サプライズだと思えば。よくよく考えていたら今回はポメアの懇願がなかった。私の傍にお仕えします!宣言をしてから身の回りは絶対にポメアがやる。私が魔法院へ行くのにも置いていかれるのを渋っているし。これは元から決まっていたんだろうね。
でもどうやって私たちより早く来たんだろう?朝の身支度の時はいたのに―――て、そうだった。私たちが出た後に急いで向かえばそんなに凄いことじゃないね。馬屋で時間のロスはたくさんあったはずだよ。
ようやく納得のできる答えを見つけて待ってくれていたトールお兄様と一緒に2階へ。折り返しの階段を上がれば目の前に扉が。それから左右に6つずつ扉が並んでいる。全部で13部屋だね。上りきって左がウェルターさん一家。右がアーガスト家が使うらしい。と、言うことで奥から夫婦が堂々と使い、次にリディお姉様がきて私。最後にトールお兄様になった。順番は適当らしい。誰も文句は言わないのですんなり部屋に入る。
先にトールお兄様の準備をしてくるそうなので、私はお部屋に待機。きょろきょろと辺りを見渡して感嘆の声があがる。だって、ログハウスなんだもの!自然の家!!匂いも木だよ!しかも檜!!癒され空間間違いなし!嬉しすぎる。
中は簡素だけど私は木造ってあたりでもう大満足。ベッドも衣装棚も本棚に備え付けのテーブルや椅子も木!木!木!!!ベッドなんか木だけど布をふんだんに使っているおかげで痛くない。椅子にもクッション?いや、座布団みたいなものがついていて痛くない!
充実したログハウスである。癒される空間のログハウスである!ちょっとニヤけてしまうのはしかたないじゃないか!!窓から見える景色だって頑張って覗けば広い高原に何かの群と人っぽい粒。どこからかなる笛の音がまたのどかだよ。いいねえ。
う ん 。 お い し そ う―――…
うん?さすがに生は食べたくないかな。私は毛皮にもふもふされたい……………………………………………………え?
「さあ、クロムフィーアお嬢様。長旅お疲れさまです。着替えの準備が整いましたのでこちらに袖をお通しください」
「―――ポメア、美味しいそう?」
「はい!お夕食はより美味しそうですよ!」
え、いやそうじゃないんだけど………でもにこやかに、そして軽やかに私のドレスをひっぺがして着替えをしてしまったので人形になるしかない。ここで暴れたらポメアはもっと凄いゴテゴテした動きにくいドレスをもってくるので我慢だよ、私。
それにしてもさっきなんだか少年のような可愛らしい声を聞いたような気がしたんだけどなあ。浮かれすぎて異世界に来ておかしくなっちゃったか。元からおかしいか!わー、私が痛い!でも気にしてもしょうがないのでポメアを引き連れて下りる。食堂は1階の玄関から見て奥。ログハウスが屋敷にしか見えないのは気のせいじゃない。
で、私が最後だった模様。みんなが座っていたのでちょっと急いで席につく。お母様が私を見ていたのでマナーを間違えずに、ね。笑顔が怖いよ!そしてみんなが席についた頃にウェルターさんと女の人が。うん。すぐにわかった。ウェルターさんも何気に主張する人だったんだね。腰に手を回さなくても、わかるよ。黒っぽくてグレーの髪はきっと濃いめの緑。嬉しそうに喜びを顔全体が分かるようにポニーにして、しっかりと私を捕らえる両目は黒に近くて、お父様とトールお兄様の髪色と一緒。深緑に違いない。
「今ここの管理をしている、俺の奥さんだ。嬢ちゃんは初めて逢うよな?」
「嬢ちゃんだなんて。ウェルター、ちゃんと名前を呼んであげなきゃ失礼でしょ?―――始めまして、私はカリャル・ロタンク。ゆっくりしていってね?」
「私はクロムフィーアと言います。短い間ですが、よろしくお願いします。クフィーと呼んで下さい」
「可愛い!」
「でしょう!そうでしょう!カリャルも分かってくれるのね!!」
「もちろんよ!クレア!」
どうやらお母様の愛称はクレアらしい。そしてどうやらウェルターさんの家名はロタンク。こっちも初めて聞いたよ。そして私はこの瞬間、理解した。お母様たちのあのはじけっぷり―――同類である。まさに類は友を呼んだ。
互いの両手を合わせてきゃっきゃっと笑うお母様たちはもう少女と言ってもいい。ふけて見えないからなおさら。喜べば喜ぶほど若く見える不思議。そしてそこに堂々と入っていくお父様がすごすぎた。性別は関係なしで子どもの魅力を語りだしている。どんだけ仲良しなんだ!?
「変わりないな」
「本当、変わりありませんわ」
そうなんだ!?
「変わるわけねーだろ?まさかカリャルがあそこまで子ども好きだとは知らなかったし………そこが、いいんだが」
ウェルターさんのノロケまで聞きたくは、ない。いや、でもなんか聞きたいようなっ。馬屋と騎士の出会い―――見ていたらトールお兄様に顔の向き変えられた。そうだね。お食事だもんね。大人しく食べるよ。
7人という大人数で食べるのって、いいよね。いつも5人で賑やかだけど、さらに賑やかになる。楽しい。とくにからかわれるウェルターさんが。いつの間にか大人組にはお酒が入っていたらしい。ワインなんてどっから出てきたんだか。
盛り上がって話が出てくるのがほとんど子どもの可愛さについて。とくにウェルターさんの子どもの頃をカリャルさんが聞きたがってお父様が色々と喋りまくって―――ウェルターさんの子どもの頃はどんな可愛さがあったかを語りだし、それを必死に止めるウェルターさん。しかし、奥さんであるカリャルさんに抱きつかれればそれも大人しくなるという、なんか、ね。顔がグレーだと危ない。危ないとしか思えない。きっとお酒か奥さんに抱きつかれて嬉しいのかで真っ赤になったんだろうけど………私はここであえなくトールお兄様から強制退場させられた。いい子は寝る時間だそうです。面白そうだったんだけどなー。結局はすぐに寝たけどさ!
で、起きたらすごく爽やかな女性陣と生き生きしてるお父様にどんより背負い込んでいるウェルターさん。頭痛がするそうです。大丈夫なの?
「今日はみんなで馬術を習って敷地を駆けましょうね」
「クフィーは初めてだからな~。やっぱりお父様が一緒に乗ってあげよう!」
「残念でした!今年は子馬がいるの!グレンくんの出番はないね!」
「なん、だとっ!?じゃあ誰がクフィーと一緒に乗るんだい!?」
「さー?ウェルターが補佐するから同乗しなくても大丈夫よ」
「そうよ。それに、貴方は私の話相手をして羽を伸ばしてくださいな」
「む。クレラリアに言われたらそうするしかないな」
「いつも通り溺愛ね~!」
「当たり前よ。私を助けてくれたのはグレストフだけですもの」
「クレラリアには私しか、映させないよ?」
「まあ」
「朝から熱いわね、お二人さん!」
…………………………………………朝から色々と突っ込みたい。後ろであんな会話を聞きながら、私は切に思う。なにかを察知した上の兄と姉の行動は実に早かった。お母様が馬術の練習をすると言い出してすぐに、この二人の体は食事を終えて椅子から立ち上がって出口に向かっていたのだ。
私はと言うと、なにがどうなったかと眼が点になっており、ウェルターさんが私を小脇に抱えて「あれは長くなる」と脱出させられたのがついさっき。扉を閉めてあの会話はまだ続く。私が思うに、子馬に大人は乗れません。てかお父様の愛称がグレンなのか。
ポメアからなぜか動きやすい服がどうとか言っていた意味がわかったよ。そうだね。馬術を習うならスカートは無理だもんね。トールお兄様の服装はあまり変わらないけど、リディお姉様だって動きやすそうなズボンスタイルだったらから珍しいとは思っていたよ。これなら一緒に遊べそうだね!とりあえず下ろして、ウェルターさん。
まあ、あの2人………いや、3人は放っておいて私たちは乗馬しよう。私、乗馬って初めてだから楽しみ。よし、気分を変えるんだ!!外に出て私は子馬のところに走るよ!きっとあれだよね!!親と一緒にいるあれは普通の―――ウパカラマは子どもの時から6本なんだ。でも顔は普通の馬だからよし!ウパカラマー!!子どもー!!可愛い!!真っ白ー!!
「おっそ!」
「まあ、クフィー!遅すぎますわ。それで乗馬なんてできますの!?」
「乗馬はクフィー自身が走らないから大丈夫だろう。たぶん」
ウェルターさんひどっ!リディお姉様も心配しなくて大丈夫だよ!馬なんて手綱を握ってはいやー!て、するだけでしょう!トールお兄様もなんで最後にたぶんなんて付けるのっ。私だってやれば出来るんだからね!?―――ようやくたどり着いたっ!
なんだかえらい息が乱れている気がするが、みんなの歩く速度とあんまり変わらない気がするがっ。子馬の下にたどり着いた私は嬉しくてつい、その首に抱きついた!やだー!柔らかーいよー!毛並みもまだ整ってないからザラザラじゃなくて柔らかめ!最高だよ!!私はこれに乗れるの!?
「大きさも良さそうね。ウェルター、頼んだわ。私はトールくんとリディちゃん用の馬を見てくる」
「おー」
あ。ちょっと暴走してたらカリャルさんが登場でトールお兄様とリディお姉様が連れてかれてしまった。どうやらあっちに馬小屋がある、ね。見辛いけど。あっちから選ぶんだって。それで、それで!私はこれに乗れるのかな?
「喜んでるな。そんなに乗りたかったのか?」
「むしろ触りたかった!」
見てよこの触り心地ー。隣の大人ウパカラマを触ってみたけど触り心地が全然!違うんだよ?大人の方はなんだか固い。なんかザラザラしてる。君も大人になったらこうなるんだろう?私は知っているよ。だから柔らかい抱き心地の今を堪能させてください。授業が始まる前まで。
ぼ く も さ わ り た い―――…
「じゃあ、まずはのり方な」
「………え?」




