大人の交渉、に割り込んでみる
祝100話到達!!
まだまだ続けますぞ~おー!
改訂いたしました。27.5.31
ふむふむ。グラムディア様復活のお話しにご本人様は………多少の揺らぎ、あり。私は姿勢を正して正面の王族たちを見つめる。
双子ちゃん王子はすでに会話に入れないようで、アーグラム王子は俯いてローグラム王子は唇を噛み締めていた。グラムディア様に限ってはさすがに表情を変えられる力が残っていないようで、肩の力が逆に強ばっていた。
さて、ウィル様が逃げられないように埋め立てて、復活は出来るのかな。頑なに拒む理由を見つければきっと畳み掛けるんだろーなー。ただの駄々っ子ならウィル様が―――いや、お父様が陛下に色々と言っちゃってそう。
「グラムディア様が表舞台に戻ることで民への評価は操作できます。立ち直って魔法剣と向き合う姿勢。もう一つ民へ示すために国政をうまく動かせば民はグラムディア様に着いてくるでしょう」
「どの国政を、動かす、つもりだ」
「魔法剣を掲げるのです。当然、騎士の国政を動かします。グラムディア様の事件から魔法剣は衰退の一途を辿っています。しかし、魔法剣は多大な戦力であると何百年の歴史がある。それを衰退させるのは如何なものでしょうか?7年前、魔物の大群が押し寄せてきた時も剣だけでは苦戦に虐げられ、魔法師を待つ状態ではありませんでしたか。体の身体強化もほどほどに剣が折れ瀬戸際を多くの兵が体感しています」
「っ………………剣だけでも、守れる」
「耐える、の間違えではないでしょうか。王都より東、そちらは剣が効かない魔物も存在します。近々にでも魔法師に要請がかかるでしょう。魔法騎士は必要だと思います。もう近衛ぐらいしか使えないでしょう」
「私で、なくてもいい」
なるほど~。魔法騎士、ね。使える人って少ないんだ。てっきり上流騎士あたりは使えるんだと思っていたよ。そこまで衰退するほどに、グラムディア様が関わっている事件って何があったんだろう?
アーグラム王子が過敏に反応するほどだし。自分の魔法剣で人を―――とか?それを十進魔法師たちが知っているのもおかしくないけど………息子に教える事じゃないか。反面教師、で使うネタでもないよね。
こっそりと聞きたいけど、この二人に挟まれているから聞くに聞けない。そもそも本人を目の前に聞くものじゃない。てか王族の前でこそこそだなんて私が怪しすぎるっ!でもわかんないし………早く終わらないかな………
グラムディア様は頑なに表舞台への拒否は続くし。ウィル様は押せ押せ状態で暖簾に腕押し。長期戦もいいところだけどさ、進まない話をいつまでも続けるのはどうかと私は思うんだ。暇だし私がかき回してしんぜよう。後処理はお父様にお願いします!!期待しているよ!
「発言、いいですか?」
「………………かまわない」
「そもそも、グラムディア様はなぜ表舞台に立ちたくないのですか?」
私、これを全然!聞いていないのです。嫌だ、無理だ、の攻防で肝心な事を言っていないよね?ただ避けているだけの会話は長丁場なだけ。もう帰りたい本音を暴露してもいいですかね?
「グラムディア様。先程からずっと同じ事を言ってらっしゃいます。『私でなくてもいい』『私は出来ない』『私ではなく』と、ご自分を過小評価してらっしゃいますね。表舞台から消えたいと思うほど、なに何かあるのでしょうか?」
「………君には、分からない」
「小娘だからですか?」
「………そこまで、言わない。でも、経験や、歩んだ歴史は違う」
いや、29ぐらいは歩んでます。なんて、とてもじゃないけど言えないよ………煽ってみる、かな。
「私は不敬罪にあたる発言を今から口にします。どうぞ、ご遠慮なくお切りくださいませ」
「クフィー?」
「お父様、私は残念に思うのです。グラムディア様はこの国や民、家族でさえもお嫌いのようなのです」
おー。近衛の騎士が動いた!君たちは煽っていないよ。下がって怖い怖い!!剣は抜かないで!後ろからのチャキッてなんか音するけどもしかしてアビグーア中隊長もお怒りですか!?確かに不敬極まりない言葉を言ったけど、行動が早すぎるよ!!
ちょっと焦ったけど、私の位置が位置だけにそれ以上は動くものがいませんでした!なんと止めてくれたのはローグラム王子。双子ちゃん王子の存在が薄れてきていたが、ちゃんと威厳があったようだ………助かった!!
「下がれ」
「しかし!」
「クロムフィーア嬢の魔力は父を越えるそうだ。もし魔力暴走でも起こされたら私たちは一瞬だろう。余計な事で荒立てるな」
「っ………………失礼、しました」
でも剣から手は離さない。私、完璧に敵と認定されたようだ。まあ、近衛騎士に逢うのなんてなさそうだし、いっか。
「本当に不敬罪だぞ?父上になんて物言いを………なぜそう思う?」
「グラムディア様は生まれもってして王族の一人です。願ってもいない地位かもしれませんが、王族であるならその義務があると思うのです」
「父上が国や民を嫌うわけがない」
「でも、表舞台に立たれないのでしょう?私が聞く限りではグラムディア様は悪事もしていないのに陛下のご慈悲で裏側に回っただけです。その裏側では陛下を支えているだけではありませんか」
「………そうだ。父上は表舞台に出られない代わりに影で支えてくださっている。それのどこが嫌っていると言うのだ」
「表舞台に出てこないからです」
「………は?」
あ。双子ちゃんの奇跡が今、目の前で!!
「………つまり、表で何かが、起きても、姿を見せない、私は裏切り者」
「そこまで言ってません。ですが、意味合いはそうですね。王族は姿を見せてこそ民に安心を与えるのです。民の不安な声、聞きましたか? 」
「………………まだ、次期国王は在らせられないのか。陛下も知っている」
お父様が静かに口にする。なぜか私の頭を撫でながら、というオプション付きで。突然そんな事をされると困る私は驚いてお父様を見上げた。目が合えばなんと言うか―――苦笑いでお疲れですね。勝手な事を言い出したから余計に疲れさせたのかも。
―――でさ、15年も次期国王が不在なんだよ。陛下もすでにお年を召されている。いつ崩御しても、とは言い過ぎかもしれないが民は不安でいっぱいだと思うよ。今度成人する双子ちゃん王子のどちらかが次期国王になっても、不安は拭えないと思う。だって、若すぎるんだもん。
これが聡明でやり手の王子だったらまだなんとか納得はさせられる。けど、この双子ちゃん王子には女の噂は皆無。お世継ぎも怪しくて聡明な噂もない。加えて将来が楽しみだ、くらいまでしか噂になっていないらしい。さて、そんな王子が変な女の噂を背負って婚約者の素顔を見せないまま発表。ついでに魔法剣と騎士の国政改正を掲げても『出来るのかな?』としか思えない。
だったら大人のグラムディア様の方が風当たりはいい。セレリュナ様がいるし、復活談を掲げてその勢いで二つを掲げれば見方も変わる。まあ、迅速にやらなくてはならないだろうけど。裏方で動いていたのだから扱いもある。
日陰の奴が何を言うか、と言われても話術がある。王族が素晴らしい話術で謡い、民が心を打たれれば美談の出来上がり。帝王学を学んでいるんだからそれぐらいしてもらわなきゃね。
「私は、人を信じるのが、怖い。導く事で、誰もいなくなるのが、苦しい」
そんな泣きそうな声色で言わないで………私が苛めてるみたいだよ…………
「セレリュナ様がいらっしゃるじゃないですか」
「民はどうだ?この醜い私に、ついてくるか?」
「趣だけが国を支えるのですか?見た目も大切かもしれませんが、それだけの国なんて嫌です」
「その事でグラムディア様にお話が。ヴィグマン十進魔法師よりまだ不確定ではありますが新たな治癒法が発見されました」
ああ。あれね。まだ右往左往してる感じの【水】と【光】の回復魔法を同時にやっちゃえよ、てやつ。まだ王子に言っていなかったんだ。
お父様はもう私に喋らせる気はないらしい。頭を撫でるとポメアにお茶を頼んでいるのがよくわかる。隣だからね。どうやらお茶で黙らせようとしているらしいね。よくこんな雰囲気でもポメアは動けたもんだ。手が震えてることもなかったよ。
それからウィル様とお父様の押せ押せで「時間がほしい」と言うグラムディア様のお言葉により会議はお開き。私はそのままお兄様の見学でアビグーア中隊長を引き連れていく。
因みにウィル様からお小言をもらいました。あんな事はもう二度としないでほしい、と。子どもが口を挟むものじゃない事をまるでおかんのようにグチグチとお怒りです。だって座っているだけで暇だったし終わらなかったし………こんな事は言えないけど。
しかもお父様にもお咎めをもらってしまった。こっちは不敬罪をいきなり言う私に『娘がっ!?』みたいな感じではらはらしていたらしい。助けたくても話は進んでいくし、黙らせるのも会話を引き継ぐ自信はなく、まるで意図を汲めなくて入る隙がなかったとの事。心配したんだぞー!!と抱き締められて私のライフは削れたよ………
あと、斬りかかろうとした騎士様に思いっきりグリグリされた。さすがに子どもは斬りたくないらしい。頼むから宣言して不敬罪を言うなって。このグリグリと髪の毛がもちゃあは嫌がらせだと思う。絶対にそう思う!!ポメアがいてよかった!!
「と言うことでトールお兄様、魔法剣を頑張って取得してください」
「唐突にいきなり過ぎるよ、クフィー。まあ、出来ることだからやるが………なんでアビグーア中隊長の肩に座らされてるんだ?」
「………………なぜでしょう?」
「私が聞いてるんだが………」
「軽い」
「軽いからだそうです。見晴らしもいいので私は満足してます」
「………………………………アビグーア中隊長に迷惑をかけないように、大人しくするんだぞ」
「この高さで何も出来ませんよ。あ、お兄様!しっぽの方はいないのですか!?」
「アルトライトは逃げたよ………」
ちえ。疲れたから私の癒しで和もうと思ったのにっ。




