-5落ちゆく陽だけが知る出会い
とても進行スペースが緩やかで、『おいおいこんな遅いんじゃ一話終わる頃には俺たち爺さんになっちまうぜHAHAHA』という人もいるかもしれませんが、まあ自分のペースに合わせてくれると有難いです。
帰宅を示唆させる鐘の音を聞きながらウーは逃げていた。まだ追ってくるかもしれないという不安が未だにウーの周りをちらついていた。見えない敵と対峙しているかのような気分を、ウーはこの数ヶ月間ずっと受けているのである。彼の心は既に荒みきっており、その精神状態はいつ崩壊してもおかしくないものになっていた。しかしウー本人は自身がそこまで追いやられていることを理解できていないのは、単に経験が浅いだけなのか、それともある理由を持ってわざとその事実から目をそらしているのかは定かではない。
スーとネーが追ってきてないことを確認したウーは村の広場に出た。
民家と最低限の農地だけで出来ているこの村で一番大きい場所がこの広場である。全村人が収まるスペースは広場以外になく、その広さを使って村では度々物々交換会などが催されたりする。
が、普段はただのだだっ広い土地だけということもあって人が少ない、更にいうなれば鐘がなった後ということもありおそらくみな家に向かっているはずだから広場にはもう人はいないだろうという予想をウーはしていた。
ウーの予想は半分正解で、半分不正解であった。確かにその広場には村人の姿はなく閑散としたものであった。しかし、村人以外・・・つまり村の外からやってきた者が広場の真ん中で馬を引き連れながら佇んでいたのだ。
ウーはその男から恐ろしい気配を察知した。ただそこにいるだけで何か良からぬことをしでかしそうな雰囲気がその男にはあった。ウーはとにかくここから逃げ出そうと思った。
「待て。」
ウーが広場を去ろうと踵を返した時、広場の中心にいた男がウーに向けてただ一言、そう言った。それだけで十分だった。ウーはその場で立ち止まり、振り返りながら答えた。
「な・・・、なんですか・・・!?」
ウーが振り返ると先程まで広場の中心にいたはずの男が目の前に来ていたのである。ウーはその素早さを見せつけられ思わず息を呑んだ。が、ウーはこの時気付いていなかった。その男が馬を引き連れながら、ウーの眼の前に至るまで一切物音を出さずに近づいてきていたという事実に。
男は目深くかぶっていたテンガロンハットを脱ぎ話を続けた。
「俺はついさっきここに来たものでね、その、なんていうか流浪者なんだ。君の家族が了承してくれるんだったら、君の家に泊めさせて欲しいんだ。無理と言うんだったら仕方ない、今日のところはここでテントを張って寝ることにする。だから頼む、君から親御さんにどうにかならないか頼んでくれないか?」
自分より頭何個分も離れている小さな子に向けて頭を下げる姿に先ほどのような気配はなく、ウーはどこかで安堵する反面、もし断ったらまああの気配が出てくるのだろうかという緊張感を持ちながら
「わかりました、両親に聞いてみます。そのためにもまず僕の家に向かいましょう」
そう言って、男に「ついてきてください。」と道を先導するウー。
「そういえばあなたの名前はなんですか?僕の名前はウー、マー・ウーって言います」
「俺の名前はカリウ、カリウ・ディ・イェーガーっていう。よろしく頼むよ、ウーくん」
二人の出会いこそが、この物語の始まりで、すべての終焉の幕開けだということは、世界はおろか、この二人すらまだ知らぬことであった。
自分は名前をつけるのを結構面倒臭がるタイプでして、大体元の名詞から数文字抜いた奴をそのまま人の名前にしたりしています。村の名前とかも同様で、ちょっと考えれば元ネタとかもわかってきて、それを先に推理されるとどういう話にするのかってえのがわかってきちゃうなんてネタバレを挟んでおきます。暇でしたら元ネタあぶり出しで遊んでみてください。次回更新は1週間後です。それでは。