-4正直者が的になる
少年・・・ウーは無意識にある文字を地面に書いていた。その文字は『自由』であった。
自由という文字をただじいっと見つめていると、家の陰からウーと同じような身丈の男二人が現れた。
「あ、いたぞ!ウーだ!」
ウーから見て左側にいた男が彼を指さし叫ぶ。二人の男の存在に気付いたウーはとっさに逃げようと二人と反対の方向へ足を向けた。のだが、急に現れた二人に焦ってしまったのか、足をもつれさせて転んでしまう。その隙に左の男は地面に落ちていた石を拾い集め、ウーに向けて投擲した。石はウーの背中に当たる。
「っしゃあヒット!」
石を投げていた少年がガッツポーズを取り喜んでいる隙にウーは逃げ出すことを試みた。重い足を上げ、膝をついた状態から脱却しようとする。がしかし彼は
「あ!ウーが逃げるぞ!」
と反応を示した。まずいと感じたウーは急いで体勢を立て直すが、その前に石を投げた男が行動に移る。ウーの背中に全体重を乗せた飛び蹴りを仕掛けたのである。その一撃をモロに食らってしまったウーは再び地面に突っ伏すことになった。
「よーし、このまま俺様必殺超重量ストンピングを・・・」
石を投げた男がウーの背中を思い切り踏みつけるために片足を宙に浮かせようとした時、先程まで静観していた彼を止めるかのごとく肩をつかんだ。
「今日はこんぐらいにしとこうぜ、スー」
「・・・なんだよ、ネー。これでおしまいにしようってのかよ?」
少し怒り混じりの口調の男、スーに対しネーはスーに肩を掴んでいない手を彼に向け見せた。それを見てスーはニヤリと笑い、
「しょうがねぇなぁ。今日はこのへんにしといてやるかあ」と言いながらウーから離れていった。代わりにネーがウーの元へ近づいていく。
「なあウー。もうこんな馬鹿げたことやめないか?こんなことしたってお前が傷つくなんだぞ?」
ネーはウーの目の前でしゃがみ込みながら話しかける。ウーは服に付いた土を払いながら答える。
「それはできない、だってこれは僕だけじゃない。ガルとの約束でもあるんだから・・・」
「そう・・・」ネーはそう言って無言で手を差し伸べた。ウーは自然と腕を伸ばした。もう少しで握手が完成するといった所でネーが
「なら騙されてもしょうがないよね」
と呟いた。途端、ウーはネーからなにか『恐ろしいもの』が湧き上がってくるような感覚を感じ取った。ウーはすぐさま腕を引き戻すとそのまま四足で後ろへ引きずり下がった。ネーはニヤリとしながらウーがつかもうとした手のひらを見せた。手のひらには小さいながらも鋭く尖った突起物がついていた。それはアスト森林地帯にのみ生息する原生獣『ゲゲル』の牙であった。
「そ、それはゲゲルの牙・・・どうしてそんなものを!?」
「ああこれ?これなぁ、この前森の中探索したら見つけたんだよ。カッコいいだろこれ?何かに使えないかなって考えてたんだよね」
「森って・・・、勝手に森の中に入っちゃいけないってルールだろ?」
「そういうルールを破るのもまたルールってものだろ?というよりも、『ルール破り』なんて言葉をウーの口からききたくないね。この村最大のルールを破ってるくせしてさ」
「・・・・・・」
ネーとスーはゆっくりとウーに近づいていく。このままではまた私刑にあう。そう判断したウーはすぐに立ち上がり、二人に背を向けて逃げ出した。
「待てぇ!」
スーが追おうとするとまたもやネーが止める。
「なぁんだよ!?」
二度止められてさすがに怒りが増したか、スーはネーに突っかかっていく。
ネーは口先に指を立て、静かに。という合図を出した。とりあえずいうことを聞くことにしたスー。すると遠くの方で鐘がなる音がした。
「もう帰らなくちゃいけない時間だ。今日はこれでおしまいだ」
「ぐぐぐ・・・・・・」
スーは堪え切れない怒りをどこにぶつけていいのかわからず、手に持っていた石を力いっぱい地面にたたきつけた。石は少しはねた後、近くの草むらに入ってしまい二度と彼の手に触れることはなかった。
名前とかはだいたいその場のノリで決めています。なので自分のお話に出てくるキャラの名前は大体が深い意味がなかったりします。
次は一週間以内。ちゃんと出来るかな?予想よりスローペースで進行しているお話だけど、それはそれで無問題。それでは。