-3一人ぼっちのウー少年
一週間後といったのに気付けば二週間経ってました。申し訳ありません。やる気になる時期とやる気にならない時期の差が激しいもので。それではどうぞ。
「嘘をつかないで生きていければ、悪い人間にはならない」
ガルが最後に言ったその台詞は少年の生き方を変えた。ガルがいなくなってから3ヶ月間、少年は嘘をつかないように言動、行動に注意しながら生活をした。好きな事は好きといい、嫌なものは頑なに嫌という。人を騙さず自分に正直に生きる事を選んだのだ。
この思想は少年の心を豊かになり、人生観は明るく広げていった。
そしてその考えは彼の人生を崩壊させた。
その日少年は人気のない路上で、岩壁にもたれかかりながら棒切れを使って地面に線を入れていた。何かを書こうという意志はそこにはなかった。
少年はこの数ヶ月の行いを振り返っていた。
90日ほどの間に自分がどれだけ救われたか、そしてどれほど苦しめられたかを。
――ガルが言っていたことは正しい。ウソを付くことは人を騙すことで、最終的に人を傷つけることになる。そのことを理解した僕はみんなにもその事実を知ってもらおうと思い、先ず父さん母さんにこの話をした。二人とも僕の話を一生懸命聞いてくれ、最後に「いいことを教えてくれてありがとうね、それじゃあ今日はもう寝ようか」と言って僕を寝室へ運んだ。
その日あまり寝付けなかった僕は布団の中に潜り込んだまま意識をはっきりとさせていた。
すると、隣の部屋―さっきまで僕がいた部屋―からヒソヒソと話し声が聞こえたのである。もちろん会話をしているのは僕の父さん母さんだ。僕は他にすることもなかったので、二人の会話を盗み聞きした。正直、しなければよかった。
母さんが涙声で話している。
「なんてこと、あの子が『悪意ある真実』に心を奪われてしまったわ。このままではあの子は不幸になってしまうわ」
え?
父さんが母さんをなだめながら声を出す。
「仕方ないさ、いつかは誰しもそれに心を囚われてしまうものなのさ。ただ、あの子の場合気づく時期があまりにも早すぎただけであって・・・」
父さんの口上を遮って母さんは怒鳴る。
「それじゃあなに!私たちはまだ幼いあの子を・・・、ウーを村の外に追放しなくちゃいけないってこと!?」
え?
「コラッ、あんまり大声で叫ぶと起きちゃうじゃないか・・・。大丈夫だよリィ。まだ追放するまでには半年の猶予がある。その間に『悪意ある真実』をウーの心から追い払えば何も問題ない。僕達の力でウーを更正させようじゃないか」
「あなた・・・」
僕は何か、知ってはいけないことを知ってしまった気がしてならなかった。胸がドキドキして、収まらなかった。すると、コツ・・・コツ・・・と僕の部屋に近づく足音が聞こえた。僕はすぐに布団に体をうずめた。息を殺して寝ているふりをした。
父さんか母さんが、僕にこの話を聞かれなかったかチェックしにきたに違いない。直感で理解できた。数分間じいっと見つめられたのち、僕を見る視線はなくなった。僕はこの出来事を忘れるために、寝ることに集中した。
だけど、この出来事を忘れることはできなかった。今にいたっても父さん母さんが言った言葉が僕の頭を駆け巡り、あの時の緊張感が僕を震え上がらせる。それでも僕は、父さん母さんが言っていた『悪意ある真実』・・・ガルが教えてくれた『本当のこと』を僕は信じ続けた。なぜそこまで信用できているのかは当の僕にもあまり良くわかっていないのだが、多分、僕はその言葉に救われたんだと思う。だから手放したくないんだ。ガルのその言葉を。
そのおかげで僕は、村に嫌われることになった。
今更気づいたんですが、この小説のタイトルは自分が愛してやまない漫画『魔人探偵脳噛ネウロ』のある一文をちょっと変えたものになっています。文庫版化されたネウロを見て初めてわかりました。きっとその一文が自分の中に強烈に残っていたんでしょうね。自分はこのタイトルを気に入っているためそのまま使わせてもらいます。次の更新はとりあえず今週中にでも、今回のようなことをあまり頻発すると逃げますからね自分。