嘘つき村の正直少年-1『ガルという男』
このお話はまあちょっとずつ書いていく予定なので、少しずつの更新になります。第一話はいわゆる導入です。まず第一話を書き終えることを目標にやっていきますので、どうか見てくださいお願いします。
「ウソを付くことはとても日常的に起こる行為ゆえに誰も咎めたりしない、いや、できない状態だけれど、元々ウソを付くという事はやってはいけないものだとされているんだ。何故か分かるかな?」
大きな木々が生い茂るアスト森林地帯の中にポッカリ空いている空間。そこには小さな村が細々と、しかし古くからずうっとそこにあった。
村にある一番高い建造物、村の見晴らし台には二人の人間がいた。
一人は長身で細身すぎる男。もう一人はまだ10にも満たないような少年だった。
男は話を続ける。
「大人は子どもに『ウソはいけないこと』ということを教育する。それはウソを付くことが悪いことだってことを大人たちはわかっているからだ。結果的にウソを付くことになることはわかっていても、それでもその事を教えかけるのは、ウソを付くという行為がそれほどまでに忌まれるべき行いだからなんだよ」
「・・・・・・」
少年はその話を横で静かに聞いている。少年の視線の先には雑然と広がった木々があり、その先には紅く光る太陽が少しずつ地面に落ちていた。男は話し続ける。
「だから子どもは最初、ウソを付くことはいけないことだと思い込み信じこみ、真実を口にするんだ。嘘をつかないことに理由などない。ダメだからダメ、やってはいけないことだからやらない。しかし、ある時気づくんだ。『ウソの味』を。嘘をつけば自分はいい子で居続けられる。嘘をつかないで劣ったように見られるんだったら嘘をついていいやつに見えたほうがお父さん、お母さんは僕のことを褒めてくれるだろう、励ましてくれるだろう。その味を知った時から人っていうのは嘘をつかざるを得なくなるんだ。ウソっていうのはいつか綻びを生んで壊れてしまう。だから綻びが出たらそこにさらに嘘を重ねていい子であり続けようとするんだ」
「そうだったんだ・・・ねえガル?」
少年は男の方に顔を向ける。少年からみたその男はとても優しそうで、言いようのない何かを抱えているような男だった。大人たちはガルが『敵』なのか『味方』なのか探りあぐねているようだったが、少年はガルの纏う不思議なチカラのようなものにひかれていた。そしてガルも楽しげに接してきてくれるので少年はガルのことが大好きであった。そんな彼から急に話された事をうまくまとまれないまま、少年はガルに質問する。
「ウソを付くことは、悪いことなの?」
「そう、悪いことなんだ。この上なくね」
「・・・僕はどうしたらいいんだろう?今までいっぱいウソをついてきちゃったよ・・・」
「そうだな・・・、とりあえずできることとすれば――」
ガルが何か言おうとした時、下から大きな金属音がした。村の住人の一人が鍋に金属を叩きつけながら叫んでいる。
「もうすぐ日没だから早く降りてきなさーい!夜に外にいるのは危ないんだから!」
それを聞き、下に合図を送るとガルと少年は階段を使い降り始めた。階段を下りながら後ろで一緒に降りてきている少年に顔を振り返らせずに言葉を送る。
「君はまだ若い、やり直しが効く・・・
これから嘘をつかないで生きていれば、君は悪い人間にはならないんじゃないかな?」
その夜、ガルは村からいなくなる。誰もいないうちにこっそり抜けだしたらしい。少年は、ガルに言われた最後の言葉を深々と体の中へ染み渡らせていた。
一週間以内に続きを書こうと思いますが、気分屋ですのでどうなるかわかりません。生暖かい目で待ってください。