第7話 王子の独占欲と社交界の混乱 -1
悪役令嬢としての評判が拡大する中、アメリアは新たな計画を立てた。
それは、ヒロインであるリリアナを社交界にデビューさせ、王子との仲を取り持つこと。これでこそ、ゲームのシナリオ通りに進み、悪役令嬢の役回りが終わるはずだと信じていた。
オルテンシア公爵邸のドレスルームは、煌びやかな光に包まれていた。
アメリアは、数えきれないほどのドレスの中から、リリアナに一番似合うものを選んでいた。淡いピンクのシルクドレスを手に取り、リリアナに差し出す。
「リリアナ、このドレスはあなたの瞳の色に似合って素敵よ。どうかしら?」
リリアナは、目を輝かせながらドレスを受け取った。
「アメリア様が選んでくださるなら、どれでも嬉しいです!
こんな素敵なドレス、初めて着ます…!」
その無邪気な笑顔に、アメリアは内心で満足げに頷いた。
(よし、これでヒロインが王子と出会って、私の役割は終わり…のはず。
絶対、絶対うまくいってくれ!)
アメリアは、ドレスを抱きしめるリリアナの隣に座り、真剣な表情で語り始めた。
「リリアナ。近々、王宮で盛大な舞踏会が開催されるわ。
貴女には、その舞踏会に参加してほしいの」
リリアナの顔から、さっと血の気が引いた。
「まぁ、舞踏会でございますか……!?
わ、私のような者が、そのような場所に……?」
彼女はドレスを抱きしめる腕に、さらに力を込めた。
(やっぱりそうなるよね。平民の娘がいきなり社交界はハードル高いかぁ。
でも、これも処刑回避のためだ!)
アメリアは努めて優しい声で、リリアナの不安を取り除こうとした。
「貴女はもう、ただの平民ではないわ。
わたくしが才能を見込んだ、特別な存在よ。
それに、舞踏会は、貴女がその才能をさらに伸ばし、多くの人々の心に触れる良い機会になるわ」
リリアナは戸惑いがちに顔を上げた。
「人々の心に……触れる……?」
「ええ。貴女のその優しい心と、特別な才能は、きっと多くの人々を癒し、導くことができる。
舞踏会は、その第一歩となるわ。
貴女が輝くことで、きっとこの国の未来も明るくなる。貴女には、その義務があるのよ」
アリアは、ゲームの知識を総動員して、リリアナが納得するであろう「大義名分」を並べた。
(これでどうだ!
人の役に立つって言えば、この子なら動いてくれるはず!)
リリアナの緑の瞳が、ゆっくりと揺れ、やがて強い光を宿した。
「私に、この国の未来を明るくする義務が……アメリア様は、そこまで見据えてくださっているのですね……!」
彼女はギュッとドレスを抱きしめた。
「わかりました、アメリア様!
私、舞踏会に参加します!
アメリア様のご期待に応えられるよう、精一杯頑張ります!」
リリアナの真剣な表情に、アメリアは内心で安堵の息を漏らした。
(よっしゃあああ!
作戦成功!これで王子とのエンカウントは確定ね!)
アメリアはリリアナの手を取り、ドレスルームの大きな鏡の前に並び立った。
「そして、覚えておいてちょうだい、リリアナ。
公爵家のドレスルームに招待するのは、わたくしにとって、貴女がどれほど特別な存在であるかの証よ。他の誰でもない、貴女だからこそ、ここにいるの」
リリアナは驚いたようにアメリアを見上げ、その目にじんわりと涙が滲んだ。
(このドレスルームに……私だけ……?
アメリア様は、本当に私を大切に思ってくださっているんだ……!)
アメリアは内心で
(完璧!これでリリアナとの絆も深まったはず!)
と満足げに頷き、社交界での基本的なマナーや挨拶の仕方をリリアナに教え始めた。リリアナは真剣な眼差しで、アメリアの一挙手一投足を見つめている。彼女の心には、アメリアの言葉が深い慈悲と、自分への限りない期待として響いていた。
「さあ、最高の笑顔で、皆を魅了する準備をしましょう。
貴女ならきっとできるわ」
リリアナは緊張しながらも、アメリアの言葉を胸に刻み込んだ。その様子を、部屋の隅に控えていたメアリーが無表情で見守っている。
(アメリア様は、あの娘を完璧に仕上げるおつもりか。その先に何が……?)
メアリーの瞳には、アメリアの行動の裏に隠された「深謀遠慮」を探るかのような光が宿っていた。
数日後、王宮の豪華な舞踏会会場。
多くの貴族たちが談笑し、きらびやかな衣装が光を反射する中、アメリアとリリアナが入場した。会場の熱気に、リリアナは緊張で体が硬くなっていた。
「リリアナ、大丈夫よ。私が隣にいるわ」
アメリアはリリアナの手を優しく握り、そっと囁いた。その温かい手に、リリアナは少しだけ安堵した。
「は、はい…アメリア様…」
リリアナの可憐な姿に、会場の貴族たちの視線が徐々に集まっていく。その中には、第一王子エドワード・アストリアの姿もあった。彼は、遠巻きにアメリアとリリアナの姿に気づき、静かに見つめていた。
(よし、ゲーム通り、ここで王子とヒロインが出会うはず!)
アメリアは内心でほくそ笑んだ。早く二人が恋に落ちて、私の悪役令嬢生活が終わってほしいと願っていた。
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