表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

第5話 魔女と王女の交錯

夜明け前の森に、紫と金の光が交錯する。ルシアの魔力が渦巻き、周囲の木々を揺らし、月明かりをも呑み込む勢いだ。

「……まだ、私を止められるものはいない!」

ルシアの叫びが森を裂く。彼女の手から放たれる光の刃は、王女アリシアの魔導具を弾き飛ばす。


アリシアは冷静さを崩さず、笑みを浮かべる。

「ふふ、いいわ……その力、もっと私に見せて。あなたの力は、私の計算を超えそうね」

王女の言葉には挑発と策略が混ざり、戦いの空気をさらに張り詰めさせる。


エリオットは剣を構え、ルシアの背後で防御を固める。彼の瞳にも緊張と期待が混じっていた。

「気を抜くな、ルシア! 相手はただの王女じゃない!」


ルシアは深呼吸し、魔力を心の奥から引き出す。森の空気が振動し、影と光が入り混じる。初めて、彼女は自分の力を完全に制御する感覚をつかみかけていた。


「自由に生きるための力……私は使う!」

紫の渦が爆発するように広がり、アリシアの魔導具を包み込む。王女は態勢を崩し、光の渦の中で立ちすくむ。


「……なるほど、こういう力か」

アリシアは驚きを隠せず、微かに距離を取る。だが、それも計算のうちであり、彼女は冷静に次の手を準備していた。

「面白い……これなら、あなたを私の策に嵌めるのも簡単かもね」


ルシアはそれに応えず、ただ前だけを見据える。

「私は、誰のためにも戦わない。私のためだけに生きる!」


その瞬間、森全体が紫の光に染まり、風が樹々を撫でるように吹き抜けた。エリオットは剣を握りしめ、ルシアの力を守るために身を挺する。

戦いは力のぶつかり合いではなく、意思の衝突となった。自由を望む少女と、策略を巡らす王女の対決。


光が消え、森が静寂に包まれる。アリシアは一歩下がり、微笑みを崩さない。

「ふふ……やっぱり面白いわ、あなた……」

その言葉の奥には、さらなる策略が隠されている。ルシアはその策略を察知できない。


ルシアは深く息をつき、紫の光を鎮める。力を使い切ったわけではない。だが、彼女は初めて、自分の意思で力を制御できたことを確かに感じていた。

「……自由だ、私は……自由に生きる……」


エリオットは肩で息をつき、ルシアを見つめる。

「……君なら、どこへでも行ける。誰にも縛られずに」


その言葉にルシアは小さく頷いた。まだ戦いは続く。世界の運命を左右する力は、少女の手にある。だが、少女は決して英雄でも救世主でもない。ただ、自分のために生きる魔女――黄昏に輝く魔女として、歩み始めたのだった。


そして、遠くでアリシアは微笑む。

「ふふ……次こそ、あなたの力を完全に私のものにするわ」

王女の策略は、まだ始まったばかりだった――。

お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ