白い天井…
お待たせ! 第二幕一話投稿したよ!
ここではないどこか。
暗い、暗い部屋の中。
銀髪の男はただ一人、カガミの前で咽び泣いていた。
―なぜ、こうなった?
鏡は問に答えず、嘲笑うかのごとくに鈍く、白く光っている。
泣かないで。私は‥‥だから。
なぜか、そう伝えたくて。
万華鏡の様に湾曲していく景色。
―君は何を望む?
◇◇
―‥‥ピ、ピ、ピ
「ここは‥‥?」
一定のリズムを刻む電子音に起こされた赫。
目に映ったのは白い天井に‥‥白いカーテン。
「病院?」
上半身を起こそうとして。
看護師さんと目が合った。
―ピ、ピ、ピ
電子音は変わらずリズムを刻む。
「‥‥!ドクター!」
少しの間の後、看護師さんは慌てて病室を出ていった。
◇
「では、聞き取りを始めます」
「はい」
軽い説明の後、西園寺と名乗った医者はカウンセリングを始めた。
どうやら、私は骨折しているらしい。
「あなたの名前は?」
「…アカ。そうした方がいいって…」
「ご家族は?」
「…っつ!?」
途端に霧がかった様に言葉が詰まる。
「…‥‥。話したくないのならー」
「いえ、そうじゃないんです。思い出せないんです。家族も友人も、自分のことでさえ」
「……!思い出したことがあったら、遠慮なく言ってね」
数秒の後、何かに思い当たったのか、西園寺先生はその言葉を最後に急いで病室から出ていった。
◇◇
入院三日目。
相も変わらず病院のベッドで赫は目が覚めた。
変わらない白いカーテン。
窓から見える病院の窓からは青々とした芝生の中庭が見える。
「早く治らないかな」
視界の先にはギプスの巻かれた足。
少しぐらい、ならー
「まだ歩いちゃダメ」
見透かしたかのように、鈴木さんが窓の換気をしながら言った。
目が覚めた時にドクターを呼んでくれた看護師さんだ。
歩けない私の身の回りの世話をしてくれている。
「あと、どれぐらいで治るんですかね、これ」
「リハビリ自体はもう始められると思うけれど、聞いてみないと分からない」
そうだよね、うん。
兎に角以後来たいのだけれども。
「ちょっといい?」
「あ、西園寺先生」
「刑事さん達が来てるんだけど、通してもいいかな?」
「あ、はい」
◇
「こんにちは。捜査五課の紫月です。」
警察手帳を片手に青い髪をウルフカットにした女性が名乗った。
「滝渕っス」
紫眼に黒髪の男性が名乗った。
―紫の瞳って珍しいのかな。他に紫眼は…
「こんにちは。赫です」
「少しお話いいかしら?」
「あ、僕は席を外しますね」
西園寺先生はそそくさと病室を出て行ってしまった。
刑事さん達が来る要件―一つしかない。
多分、
「失踪事件のことですよね」
「ええ。まず、赫さんはどうしてあの場所に?」
屋敷で目が覚める前の記憶。
あるはずなのに、霧がかかった様に思い出せない。
モヤモヤする。
「どうしてもって言われても…その前の記憶が無いんです」
「そんなバカな」
「……。話には聞いていたけれど、本当のようね。」
紫月さんは滝渕さんを手で制して言った。
できるものなら、もう話している。
「次にあの場所で何があったか聞いても?」
瞬間、蘇る鮮血で染まった部屋。
たくさんの死体。
言わなければ、何があったのかを。それがせめてものー
「大丈夫?辛いのなら止めてもー」
「大丈夫、です。…‥たくさんの死体を見ました。多分、その、失踪した人達だとー」
「やっぱり、ね。その後は?」
ここから先は言っていいものなのだろか。
信じてもらえない気がする。
「あの、あまり心霊捜査は信用されてないって…」
「ん?五課は心霊捜査専門よ?窓際なのは認めるけど」
「窓際って…」
少なくとも今言うべきじゃない一言に少し、心が和らいだ感覚がした。
大丈夫。この人なら信用できる。
「なんか、狼の妖怪が居て」
「うん」
「生贄の儀式がどうのこうのって榊田先生が」
「あ~成程」
「成程ね。理解したわ。残りはアイツに聞くわ」
そういえば榊田先生はどうしているのだろう。
「えと、榊田先生はー」
「滝渕、先に行っていなさい」
「了解っス。」
何かを察したのか、紫月さんは滝渕さんを部屋から追い出した。
なんか、滝渕さんは不服そうだ。
「アイツ?全身骨折で意識が戻らないから集中治療室にいるわ」
「え?…」
私よりも重症。
目を覚まさないってー
「どうしたの?アイツに限ってないだろうけど、何かされた?」
「助けてくれたお礼を言いたくてー後、謝罪も。多分、その怪我は私のせいだから」
「あ~成程~……でも、大丈夫だと思うわよ?」
「え?」
「無理して入院。回復したと思ったらまた無理してーその繰り返しだから」
私を閉じ込めておいてそれはどうなのだろう
あまりにもー無茶苦茶な。
「それってどうなの…」
「だよね!?毎回付き合わされる私の身にもなってみろって話!」
「へ⁉」
いきなり詰め寄られ変な声が出る。
迷惑かけちゃダメじゃん、榊田先生…
「あ、そうだ。散歩してきたら?ずっと部屋にいたら気が滅入るだろうし」
「それはしたいですけど‥‥」
「車椅子の介助してあげるから、どう?」
質問はX(@ka_suhitori)に!