嫌な奴?
山ノ神 第三話目
ついにあの人登場
「お前は誰だ?」
背後から聞こえた声に私は振り返った。
そこにはー
「聞こえてないのか?お前は誰だと聞いている」
黒い髪に赤い目の少年がそこに立っていた。
片目に眼帯を付けている。
「え?アカ、だけど。」
「それは借名だろう?まあいいー⁉」
「カリンちゃんを探さないと!」
「まだいるのかっ⁉待て!」
「でもカリンちゃんがッ!」
「お前が行っても無駄だ。見ただろう?妖ー異形の者達を。」
少年に腕を掴まれた。
―あや、かし?
聞いた覚えがあるはずなのに、霧がかって思い出せない。
思わず、腕に込めた力が緩まる。
「ひとまずーここから離れるぞ。」
◇
「入れ」
案内されたのは小部屋。
ここも最初の部屋と同じく座敷みたい。
「説明して」
「そうだな。だが、その前に、お前だ。」
「私?」
「なぜここにいる?」
「目覚めたらここに」
「直前に覚えていることは?…そうか」
「そもそも“ここ”って?」
「隠れ里だ。正確には隠れ里にある屋敷だ」
「え?ライって子の屋敷じゃ?」
「誰に聞いた?まあ、予想はつくが」
「カリンちゃん」
「カリンとは誰だ?」
「…悪用しない?」
「しない。そもそも、俺は探偵だ。怪異専門の、な」
―探偵…なら、信用しても大丈夫なのかな。
「分かった。カリンちゃんは腰まである黒髪に金色の瞳の子。歳は多分、小学校高学年、くらいかな。白い生地に黒い牡丹の着物を着てた」
「マレビト、か」
「マレビト?―nぎゃ」
「いいからコレを付けてろ。お前が人間だと妖どもにバレないように術をかけた」
お面を投げつけられた。乱暴に。
目の所は空いていて顔の上半分を覆うタイプみたい。
「さっさと行くぞ。」
少年が立ち上がり障子まで歩いて行った。
少年は障子に手を掛けようとして、振り返り、
「あ~言い忘れたが、俺は榊田。好きなように呼べ。」
そう言った。
2,
サカキバラは専門というのは嘘では無かったようで
「ああ!先生。此の間の件はー」
「後にしてくれ。急用がある。」
先ほどから異形の者達―妖たちに声をかけらている。
それなりに有名、らしい
「えっと、どこに?」
「お前を現世に帰す」
「え、じゃあ、カリンちゃんは…。」
「見つけ次第、お前と同じ様に現世に帰す」
「なんで?一緒に探すのはー」
「足手まとい、だ」
「何故」
「戦闘になる可能性が少しでもあるなら、妖から身を守る術を知らないのに、戦えるはずのないお前を連れて歩くわけが無い。」
「そんな……」
確かに彼のいう事は最もである。
戦闘になったら。
あったばかりのアカをサカキバラが守ってくれる確証はどこにもない。
「ほら着いたぞ」
サカキバラが振り返り言う。
幾重にも重なる鳥居。
何段もの石段。かなりの傾斜がある。
そんな光景が私の眼下に広がった。
「降りる途中に振り返るな。戻れなくなる。あと、降り終わったら青髪の女刑事にコレを渡せ。保護してくれる」
彼から名刺を渡された。
「ここで起こったことはー」
「心配しなくていい。忘れる、だろうしな。」
じゃあ、もう二度と会えないのかな。
なんか、それ、は寂しい。
「そんなー」
「〝あ~もし、もしだな、覚えていたのなら、訪ねてくるといい。事務所にな。」
面倒くさそうに彼が言う。
そういうことーなのだろう。
何か心に暖かいものが広がった。
「はい!」
「ほら、もう行け」
背中を押された。
足を踏み出す。
絶対に覚えておく。そして、会いに行く。
足を踏み出す、鳥居を潜ろうと。