科学部
××高校の科学部は現在、自分と部長の二人体制だ。
部長は、部のことにはあまり興味がなく、
「おい、助手君!新しい薬が完成したぞ!」
と、毎日飽きもせず新薬を作っては、僕を実験体にする。
ある日、いつものように課題をしながら、部長が新薬の調合をしているのを見ていると、
「出来たぞ!助手君!」
と、こちらに薬をズイと突き出す。
「今日は、なんの薬なんですか?」
「ふふふ、今回は、本心しか言えなくなる薬だ!」
いつも通り、怪しげな薬だ。
「じゃあ、黙ってればいいんじゃないんですか?」
「甘いぞ!助手君!この薬を飲んだ人間は、目の前の人間に対して常日頃から思っていることを反射的に口に出るようになるのだ!」
なるほど、逃げ道はないらしい。
「はいはい、いつも通り飲めばいいんでしょう?」
僕は、抵抗することなくその薬を手に取ろうとする。
部長の手は少し震えている。おそらく薬が完成して興奮しているのだろう。
「おっと、助手君。今日のモルモットは君ではない。私だ!」
と、言い終わると薬を飲みこみ、こちらをまっすぐに見る。
この部の存続の危機にすら無関心な部長のことだ。おそらく、「どうでもいい」か、最悪、なんの言葉も発さないのだろう。そう思っていると、
「好きだ!助手君!」
あまりの予想外な告白に一瞬脳の処理が大幅に遅れる。
その間にも部長の告白は止まらない。
実験に付き合ってくれる助手君が好き。
自分を変な人間だと馬鹿にしない助手君が好き。
人と話すのが苦手な自分の代わりに科学部の存続のために走り回ってくれる助手君が好き。
部長の言葉は、止まらない。
そんななか、大幅に遅れていた脳の処理が少し追い付き、部長の手が震えていたことの本当の理由がなんとなく理解できたのだった。
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今から理系の学部目指そうかな・・・