35.上着
新年あけましておめでとうございます!今年も『ラブコメs日和』をよろしくお願いします!
夏がようやく終わったと思ったら、いきなり冬がやってきた。僕の誕生日であり、最も過ごしやすいはずの秋は、どこへ消えてしまったのだろう。地球温暖化を抑止するどころか促進している人類に、とうとう愛想を尽かしたのかもしれない。
春も気温だけなら過ごしやすいが、あいつはダメだ。花粉という、人類史最悪の生物兵器を毎年ばらまいてくる。しかも増量中だ。そろそろ国際法で禁止されるべきだろう。
──閑話休題。
冬の急襲で困ったのは、防寒着の準備が全くできていなかったことだ。手元にあるのは、防寒着にしてはあまりにも薄すぎる上着だけ。嘆いても仕方がない。そろそろ大学へ向かわなければならない。しかも一限。最も寒い時間帯だ。
外へ出た瞬間、冷たい風が上着を簡単に貫通し、容赦なく体温を奪っていく。僕は震えながら自転車にまたがり、冷風を浴びつつ大学へ向かった。普段なら短く感じる通学路も、今日は永遠のようだった。
ようやく大学に到着したと思ったら、さっそく追剥に遭った。
「さすがに、この寒さは洒落にならないから返してくれないか?」
いつもなら反論しないが、今日の気温は僕の理性の限界を超えていた。
「仕方ないでしょ〜!私も一人暮らしで上着がないんだから。女の子には優しくしないといけないんだぞ!」
そんなふうにさらっと追剥を正当化する彼女は小さい頃から一緒にいる、言わば幼馴染だ。よく一緒にいるせいでからかわれることも多いが、残念ながら恋愛感情はない。追剥を正当化するような人間は、恋愛対象外だ。
「……何か失礼なこと考えてない?」
彼女が下から覗き込むように睨んでくる。
「別に何も考えてないよ」
本当のことを言ったら制裁必至なので、無難にごまかした。
「ふーん……まあいいけど」
不満そうにしつつも、それ以上は追及してこない。その隙に、僕は上着を奪い返した。
「あっ、ちょっと!」
抗議を無視して急いで着直すと、ふわっと石鹸のような香りが鼻をくすぐった。
……彼女の匂いだ。
清潔感のある香りに、どこか甘さも混じっている気がする。少し戸惑っていると──
「何ぼーっとしてるの?」
気づけば目の前に彼女が立っていた。次の瞬間、上着はまた引き剥がされる。
「ちょ、待て!」
抵抗むなしく、上着は再び彼女のものになった。
「やった〜!これで今日は快適に過ごせる!」
満足げに笑いながら僕の上着を羽織る彼女。
「お前なあ……」
「じゃ、私は用事があるから!授業頑張ってね〜」
言い残して、あっさり去っていった。
結局、今日の大学生活は上着なしで始まることになった。
一限の教室は暖房がついているが、窓際の席しか空いていなかったせいで冷気が容赦なく襲ってくる。講義を聞きながら、僕はだんだん腹が立ってきた。せめて交渉の余地くらいあってもよかったんじゃないか。いや、人の上着を勝手に持っていく時点でどうかしてる。
そう思った瞬間、彼女の屈託のない笑顔がよみがえった。
奪い取ったときの、あの満足そうな顔。
……結局、ああいう表情をされると、憎めないんだよな。
ため息をつくしかなかった。
ただ、一つだけ気になることがある。
彼女は一限を取っていないはずなのに、なぜ今朝あのタイミングで大学に来ていたのか。
まさか……僕の上着を奪うためだけに早起きした?
いや、いくら何でも──。
一方そのころ。
主人公が講義室に向かったのを確認すると、彼女は自宅へと戻っていた。部屋に入ると、暖房の温かさが全身を包む。
彼女は奪った上着を抱えたまま、ベッドに飛び込んだ。
そして、上着にそっと顔を埋める。
濃く染みついた、彼の匂い。
「んっ……」
幸せそうに目を細め、その香りを静かに堪能する。しばらくして身を起こすと、今度は自分の体に上着をぎゅっと擦り寄せた。
何度も、何度も。
「……いっぱい、マーキングしとかないとね」
悪戯っぽく微笑みながら、彼女は小さくそう呟いた。
新年早々、ほんのり不穏ですね
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