18.保冷剤
僕には、暑がりな幼馴染の女の子がいる。
僕の体温が低いせいか、普段からよく抱きついてくるのだけど、特に夏場はひどい。教室でも廊下でも、隙あらば体をくっつけてくる。
彼女は、僕にくっついているとき、決まって気の抜けた顔をしていて、いかにも幸せそうだ。だけど、それを何年も続けられると、さすがに鬱陶しくも感じてくる。
男友達に相談しても、「幸せ者が・・・爆発しろ!」なんて言われるだけで、何の解決にもならなかった。
ある日。授業が終わって、教科書を鞄にしまっていたときのこと。案の定、彼女が自分の席から僕のところへと、当然のようにやってきた。
また抱きつく気だな、と思った僕は、今回は少し真面目な声で口を開いた。
「俺らも、もう高校生なんだからさ。そろそろ、そういうの、やめた方がいいんじゃないか?」
けれど、注意されたはずの彼女は、
「え~? でも、どうせ結婚したら、ずっと一緒なんだし。今から慣れておいたほうがよくない?」
まるで結婚することが当然かのように言って、いつものだらけきった顔で、また当然のように僕の腕に頬を寄せてきた。
まだ、僕は、保冷剤として生きていく必要があるらしい。
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