16.掃除
大学生になって、一人暮らしを始めた。何もかもが初めてで、新鮮な生活が始まる。そう信じて疑わなかった。
ただ、一つだけ変わらなかったものがあった。
「おーい、○○〜。まだ掃除終わんないの〜? お腹減ったんだけど〜」
幼馴染の存在だ。
一人暮らしを始める前、僕の家の隣には、同い年の幼馴染の女の子が住んでいた。仲は悪くないが、彼女にはどうしても見過ごせない欠点がある。それは、極度にズボラなところだ。
一週間も放っておけば、彼女の部屋は足の踏み場すら無くなり、なぜかその掃除を僕が引き受けることになっていた。
大学進学と同時にやっとその役目から解放されると思っていた。だが、神様はそれほど甘くなかったらしい。彼女も同じ大学に進学し、さらには両親から「うちの娘をよろしく」と頼まれたのだ。
昔からお世話になっていた彼女の親の頼みを断れるはずもなく、結局、隣に幼馴染がいるという状況だけは変わらなかった。
そして、話は現在に戻る。
今では、一人暮らしの僕の日課として、彼女の部屋を掃除するのが当たり前になっていた。だがその彼女は、掃除している僕に料理まで頼んでくるという、図々しさを見せる始末だ。
さすがに、堪忍袋の緒が切れた。
「じゃあ、今日は押し入れの掃除もするか……」
「!?」
彼女は、掃除を頼みに来るたびに必ず言う。
「押し入れだけは掃除しなくていいからね! 見るのもダメだよ!」
だが、そんな忠告を気にする気はもうなかった。
「お前のことだ。押し入れの中もひどいことになってるんだろ。今までは見逃してきたけど、床が抜けたら困るからな。今日は片付けさせてもらう」
彼女は必死に僕にしがみついて止めようとしたが、構わず押し入れの戸を勢いよく開けた。
案の定、中身が雪崩のように崩れてくる。だが、その中身は予想外だった。
崩れてきたのは、大量の写真。そして、写っているのはすべて僕だった。
一部の写真には、切り取られた跡がある。よく見ると、それは他人の姿を切り取ったものだった。
クラスで撮った集合写真。友達とのスナップ。それらの写真すべてから、僕以外の人間だけが消されている。まるで掃除したかのように。
「お、おい、これは……」
呆然としながら声を絞り出す。返ってきたのは、
カチッ。
玄関の鍵が閉まる音だった。
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