俳句
僕は文芸部に所属している。入部当初は、小説が書けると張り切っていたのだが、実際の活動内容はほとんどが俳句だった。今では部長となったが、相変わらず俳句を学び続けている。
ちなみに、部員は僕を含めてたった二人だ。俳句といえば「俳句甲子園」が有名だが、この部では、ひたすら句を詠み、たまに小説を書いて、それを文化祭で部誌にまとめて配布する程度の活動しかしていない。
もう一人の部員は、後輩の女の子。とても物静かな子で、彼女の声を聞けるのは、作品を評価し合うときくらいだ。
ある年の文化祭。例年は部誌の配布だけだったが、今年は新たに「投句」という催しを企画した。来てくれたお客さんに俳句を詠んでもらい、それを専用の紙に書いて、備え付けの箱に投函してもらう。後日、文芸部員がそれを読み、最も優れた句の詠み手に景品を贈るというものだ。
意外にもこの企画は大盛況で、数十枚もの投句が集まった。
文化祭の後、箱を開封して一つ一つ確認していく。
素人の句が大半なので、あまり目を引くものは無かった。
だが中には、思わず感嘆の声が漏れるほどの出来栄えの句もあった。
そんな中、異なる意味で目を引く句があった。
氏名欄には、あの後輩の名前が書かれていた。
「我が恋に気づかぬ部長春疾風」
あまりに直球な句に、僕は思わず顔を上げる。
いつの間にか、彼女がすぐ隣に立っていた。
身長差のある僕たち。彼女は見上げるようにこちらを見つめている。
その表情はいつものように無表情で、感情を読み取るのは難しい。
けれど、その脚がわずかに震えているのを見て、彼女の中に確かな決意を感じたのだった。
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