カラオケ
クラスのムードメーカーである女の子。
同じ学級委員であるという共通点を除けば、自分とは正反対の人間だ。
ある日、クラスの親睦会を彼女が企画して、クラスメートでカラオケに行くことになった。
そこでも彼女は、その明るさをしっかりと発揮し、場が盛り上がる流行りの曲やネタ曲を披露していた。ちなみに自分は、マラカスでの盛り上げ役だった。
そして、親睦会は最後まで盛り上がり、大成功に終わった。
学級委員が会計を済ます。その後、解散となりクラスメートは各々帰路につく。
カラオケの入り口の前には学級委員二人が残った。
「ごめんね、○○くん。最後まで楽器担当させちゃって」
彼女は、手を合わせてこちらに謝ってくる。
「いやいや、大丈夫だよ!自分、そんなに歌が得意ってわけじゃないし・・・」
「じゃあさ!今度は二人でここに来ない?」
断れるわけもなく、来週末にここに集合することとなった。
約束の日、緊張で眠ることができず、約束の時間よりも一時間以上早く着いてしまった。
かなり待たなくちゃなぁ。そう思いつつカラオケの入り口前を見てみると、何故かすでに彼女がいた。
時間を間違えたかと思い腕時計、近くの時計、スマホの時間を確認するが、まだ約束の時間まで一時間以上ある。
彼女はしきりに自身の髪や服を確認しており、時折不安そうな表情で店員さんに話しかけている。
話している内容はわからないが、店員さんが穏やかな表情で話しかけていることだけは確認できた。
なんとなく入りづらく結局、約束の時間の五分前にカラオケに入った。
「ごめんね、待った?」
僕は、さも今来たところであるかのように振る舞う。
「ううん、私も今来たところ!」
五分前に来る選択が、おそらく正しかったのだろうと思い、数十分前の自分に感謝する。
部屋に入って歌う順番をじゃんけんで決める。
彼女の元気いっぱいな声が部屋に響く。
結果、最初は自分が歌うことになった。
この日のために、覚えてきた今流行っているであろう曲を歌う。
僕が歌っている間、彼女はマラカスで盛り上げてくれた。
歌い終わり、彼女の番になる。
「普段は、歌う曲じゃないんだけどね・・・」
彼女にしては珍しく、少し不安そうに前置きし彼女が歌いだす。
その曲は確かに、先日歌っていた曲とは打って変わって可愛らしいラブソングだった。
歌い終わって第一声、
「どう・・・だった?」
「すごく上手だったと思うよ!」
そう褒めると、
「そっか!」
と、不安そうだった顔が一気に笑顔に晴れ上がる。
「この曲を聴いてもらったのは、君が初めてなんだよ!」
果たして社交辞令なのか、勘違いしてもいい状況なのか分からずに、フリータイムのカラオケが始まるのだった。
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