プロローグ
飽きた。
その言葉しか思いつかない。1日中玉座に座りこんで天女たちと碁をやり、腹が減れば常に用意されている豪勢な飯を食らう。最初は毎日自堕落な生活が送れて超ハッピーって感じだったがそんなの50年もやってればさすがにそんな仕事飽きるって。仕事ってゆーかそれニートじゃん。
時たまに最上階まで来る挑戦者もいるけど今まで僕が鬼気迫るような強さを誇った者もいないし。鬼気迫るどころかいつも適当にあしらって終わりなんだよな。全く、下の階の奴らはこんな雑魚相手になんで負けたのか問いただしたいくらいだ。いや、僕が最強なだけなのかもしれないがな。
そんなことを今日も考えている僕はこの試練の塔の最上部にいる仙人、いわばラスボスだ。この試練の塔には様々な試練が用意されている。それを突破すれば名誉ある称号が与えられる。だが僕がラスボスを務めている間に僕を倒したものなど1人もいやしない。
あー、まじつまんねーわー。暇だわー。碁も将棋もチェスもUNOもTRPGも飽きたわー。つーかここにいる天女達僕に手加減ばっかで全然面白くないし。
今日も今日とて天井を仰いでいるとこの真っ白でだだっ広い部屋の隅から天女が歩いてきた。
「イミル様、甘茶はいかがですか?」
「いや、結構だ。下がっていいぞ」
「かしこまりました」
そういうと天女はまた部屋の隅に戻る。
全く、なんでいつも10分おきに茶を汲みに来るんだよ。マラソンランナーじゃねぇんだわ、そんな頻繁に喉かわかんわ。
あーもー本当に暇で暇でこのままじゃ死んじまうっての!
眉間に皺を寄せながら深いため息をつく。
すると今度は別な天女が近づいてきた。
「イミル様、新たな挑戦者がこの塔に入ったようです」
「そうか…」
毎回毎回報告されるがそれがなんだってんだ。どうせ下階の雑魚にやられて僕のところまで来れやしまい。
そもそもこんなに暇なのは挑戦者が弱すぎるせいなんだよなぁ。そんな弱えんだったら故郷で平穏に田畑でも耕して過ごせばいいものを懲りずに毎度毎度挑んでくるとは本当に愚か者ばかり……。
「……あ」
思いついた。
「イミル様、どうかなされましたか?」
共に碁を打っていた天女が首を傾げると同時に俺は立ち上がる。
「ちょっくら下階に行ってみるわ」