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Boy Can…  作者: Techthrone
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第六章~日能研クラス選抜直前~

 僕はその来るべき放課後、日能研の戸を叩いた。

「失礼します」

 礼儀は大切だ。

「はい、こんにちは。私、この日能研の目黒校の室長井上(いのうえ)と申します。じゃあですね、さっそく、堀内君に日能研のことを説明しても良いかな?」

「はい! 」

「我が目黒校では、1組・2組・栄冠組というように、三段階にクラスが分けられて居るんだけど、堀内君の学力がね、まだわからないから、来週テストします。それで、組を決めたいと想うけれど良いかな? 」

 返事はYES以外有り得なかった。

 次の日、学校に行き直ぐに聞かれた。

「おいおい、お前何処のクラスになったんだ? 」

「まだ、入塾テスト受けていないから。」

 僕は冷たく言い放った。冗談じゃない。昨日、山口とグルになって蹴りまくっていた奴らに何を求められようと答えない。

「受けたって受けなくたってお前なんか一番下のクラスだよ! ばーか! 」

 僕は唯黙っていた。結果出して、その言葉二度と言えないようにしてやると。

 その日から、稲問解で使っていた参考書を使い、必死に勉強した。

 例え、山口の部下にバカにされようが、物を盗まれようが、帰りがけに殴られようが。

 かまわない。とうとう、明日に控えた日能研クラス選抜試験の結果を掴み取るためだけに生きているのだから。

 そう、結局人間という動物は弱い物で、何かしらの『力』で相手を潰さないと結局は生きていけない。

 僕は明らかに腕力では周りに勝てない。

 暴力なんてもってのほかだ。議論の対象にもならない。

 なら、『知力』で人をねじ伏せるしかない。

 いま、僕の目の前の選択肢は唯一つだった。

 何を言われようが、どんなにバカにされようが、とにかく勉強した。

 休み時間も全て勉強に費やした。

「ガリベン死ね~」

 と罵る奴が大半だったが、女子は状況を把握してくれて、理解してくれたらしい。

 というより、加奈子が周りの女子に伝えたという方が正確か……?

 僕は、ボロボロになった手を見ながら泣いた。

 ノートに落ちる涙は、音を立てず、静かに紙面に染み込んでいった。

 泣きながら必死に問題を解いた。

 自分の置かれている状況が如何に不利で、如何に崖っぷちかよくわかった。

 運良く(?)母親が役員の委員長なのだが、役員の委員長くらいで、息子の虐めを止められるほど世の中甘くなかった。

 すると、スッと参考書が目の前から無くなった。

 また……また山口か……?

 そう思い顔を上げると、山口の部下であった馬場ばばがいた。

 馬場は、元々、稲問解に一緒にいて、馬場は未だ残っているのだが、結局成績はどん底。

 そんな馬場は結局山口側に回ってしまった。ふと気がつくと、背後には新井。

 山口が出る幕はなく、僕など消せると言うことか……

 吊し上げられるかのように馬場の手元でぶら下がっている僕の参考書を指さし、

「返せ! 」

 そう言った。馬場はニヤっと笑った。と、同時に、後ろから新井が首を絞める。

 苦しい……

「か……え…………」

 最後の一文字が遠のく。心臓は激しく鼓動を打ち、何かがキレた。

 左腕はふさがっている。

「ドンッ! 」 

鈍い音がした。僕の右肘が新井のあばらを突いた。

「ふざけるなあ! 」

 渾身の力を込め、僕は叫んだが、馬場に殴られた。

 椅子から転がり落ちる寸前、加奈子が現場をたまたま目撃した。

「ホッちゃん!!!!! みんな助けよう! 」

 女子五人が来た。この五人は、クノイチという集団だ。

 早い話、喧嘩の強い女子五人というわけだ。

 馬場たちと、どうなったかわからず、クノイチの一人が担任を呼んだ。

 翔てくる鳥部先生、だが、信じられない言葉を聞くことになる。

「おまえは、勉強して、新井たちに因縁つけたんだろう!? 」

「ちが……う……」

「そうだよ! 違うよ! 一方的にやられていたもん! 」

 クノイチは口も達者なわけである。

「何が違うんだ? 」

「じゃあ、馬場の持っている参考書は何? 鳥部、答えなよ! なんか知らないけど、堀内のことひいきしてない? それって虐めっていうんじゃないの? え? 」

 クノイチの一人高林たかばやしが鋭い目つきで、鳥部先生を睨む。もう先生とも想っていないらしい。

「その物の言い方はなんだ! 」

「うるさ……」

そう高林が言いかけたとき、

「待て! 」

鎌田の声が響く。気がつくと、馬場と新井が両手でつるされている。

「堀内、俺は去年(小学四年の春頃をさす)酷いことをした。山口に脅され、無理矢理組に入れられ、暴力が全てだと想って、お前を殴ったりしていた。けど違う。この間の金属バットの一件の時も、俺はお前の見方だった。感謝しろとは言わない。誤解を解いて欲しいんだ。」

「わ……かったよ。」

「そんなボロボロになるまでやられたんなら、俺も、お前を殴ったとき、そうやって痛めつけていたんだな。今度は、こいつら痛めつける番だ。」

 鎌田の腕がミシミシと鳴る。長身、そして怪力の鎌田は、その身体的特徴を生かし、吊し上げられた馬場と新井を床にたたきつけた。

 …………!

 クノイチが驚愕した。

 さすがのクノイチもこの怪力は持ち合わせていないらしい。

「鎌田! お前は退学だ!!!! 」

 鳥部の退学の脅しに、僕が最後歯向かう。

 もう先生なんて呼べない。

「おい、こんなに僕が成るまで放っておいた担任はアンタだろ? 鎌田はアンタの代役をしてくれたんじゃねぇか! 勉強して何が悪いんだよ! お前はな、スポーツが出来て、体のデカイ生徒が大好きだ。だから僕なんて、クズみたいに扱っているじゃねぇか! この現実を打破するには、まず、日能研のトップクラスに立って、中学受験で第一志望に合格するしかないんだよ! 」

「…………なんだと!? 第一志望言ってみろよ! そこまでぬかすなら、言ってみろよ!!!!!!!! 」

「麻布中学校だよ。」

 …………!!!!!!!!!

「あ……ざ……ぶ? ハハハハハハハ! 何を言うかと思ったらバカかお前は。お前の脳みそと体で、うかるわけねーだろ! 」

 鳥部の奴此処まで言いやがった。

「うるせー! 絶対に合格してやるよ! 」

「そうだそうだ! できるよ! 」

 クノイチの応援も入る 

「俺はバカだから俺の分まで頑張れ! 」

 鎌田の応援も加わり、鳥部は退散となった。


 そして、僕は放課後、ボロボロの体で(何時もボロボロだが)日能研に向かった。

 受付の女性スタッフが

「選抜テストはあちらの階段で3階に上がってください」

 と、丁寧な説明。

 会場にはいると、普段とは全く違う別世界が待っていた、皆、目つきが違う。

 馬場や、山口のような訳のわからない奴は一人もいない。皆、目標を持ち、それを見据えて行動しようとしている気がする。

「ただいまより、クラス選抜テストを実施します。あと5分で、試験が開始しますのでしばらくお待ちください。」

 このテストの結果次第では、トップクラス、最下位クラス。そう、まるで天国と地獄のように別れるのだ。

 絶対にクリアする――

「国語の試験を始めてください。」

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