第五章~死角~
試合が始まった。山口チームVS負け組軍団である。
え? なぜ負け組軍団かって?
それは……山口が運動神経抜群の奴らばかり集めたからだよ。僕を除けばね。
ボールはまず、負け組軍団の方に転がった。弱々しい足取りでそのボールを追いかける
一回目のパス届くか!? 直ぐに山口に取られた。
しかし、次の瞬間、山口は驚きの行動に出た。そう、運動音痴の僕にパスをしてきた。
当然負け組軍団(男子のみ)は襲いかかってくる。日頃運動の欠片もしたことのない僕。どうして良いか戸惑う。
すると、突然「パチンッ! 」山口の指が鳴った。それと同時に、山口チーム全員(男子のみ)が僕を襲う。
ボールをくれという目ではない。何かの殺気を感じた。怖い。
蹴られ、僕は倒れた。起きあがろうとしても、また次の蹴りが容赦なく襲いかかってくる。
如何に、このクラスの男子がグルなのか今更わかった。
そんななか、加奈子の顔が見えた。遠くのゴール前で、涙を浮かべているように、僕には見えた。
目の前は砂埃。起きあがろうとしても、手を蹴られ、体中が痛めつけられ、死にたくなった。
すると、薄日が差すかの如く、人と人の間ができて、逃げ道が出来た。しかし、立ちはだかるのは山口。
突進してくる山口。僕は倒れた。重量級の山口のタックル。華奢な僕は直ぐさま倒れた。
起きあがろうとしても踏みつぶされる。急がなければ、命が危ない。もうすぐ……もうすぐ……体育の時間は終わる。
負け組軍団も山口チームも容赦しない。
「おーい! そこでなにをしているんだ? 」
鳥部先生の助け船。と思いきや、
「堀内がボール渡さないから奪い合いになってるんだよ! 」
と山口。
「お~ そうかそうか、了解。」
鳥部先生もグルだった……
もう少し早くに感づいていれば……
顔面に落ちてくる砂埃。それを嘲笑うかのような複数の足。
それが僕を襲う。いま、窮地に追いやられていた。
「試合終了ー! 」
鳥部先生、グルなのだから怪我を負わせないように終わりにしたのか。
体育終了まで、まだ10分もある。どう考えても怪しい。
山口のあの鋭い目つきは、最終時限の体育でとどめを刺すという宣戦布告だったに違いない。
僕はボロボロの体育気を脱ぎ、制服に着替えた。
山口が歩み寄ってくる。部下の新井もやってきた。
「今日は楽しい一日だったね。」
新井はともかく、山口のその歪な笑い方が妙に僕の胸を抉った。
また、明日やられるのではないかと……
僕はボロボロの体で帰宅した。父親は僕には無関心だし、母親は、一々親が出ていたら仕方がないとのことで相手にしてくれない。
ならば、僕が頑張るしかない。
明日は日能研クラス選抜テストである。