第四章~ざわめき~
次の日学校に行き、日能研に移ることを決意したことを表明。
クラスメート中がざわめいた。
「まじかよ。あいつも日能研くるのかよ」
「フンっ! 何処のクラスになるかわかったもんじゃねぇ」
「僕の方が確実に上だね」
「怖いな……あとからガーーっと攻めてきそう……」
意見はそれぞれなのだが、勉強に無縁の山口は、終始黙ったままであった。
しかし、彼は黙したままでは事を終わらせない。話が始まってから放課後までずっと
そう、ずっと目を細め、刃のように光った目で僕を睨んでいる。獲物を捕らえるその時を待つかのように。
そして、事態は起きた。『最悪』という名の鐘が鳴ったのはこの日であった。
今日は、体育で長距離マラソンとサッカーをやる日であった。幸か不幸かマラソン日和と言える気候である。
僕は、完治したものの、経過観察中の心臓病のことから、マラソンをドクターストップされている。
サッカーはかろうじてOKをもらっている。
勿論これは正式な証明書があり、学校側も全て事情を知っている。はずだが、ここからが悲劇の幕開けであった。
「おい! いくぞ! 」
「わかったわかった~ 」
相変わらず運動の時は元気なクラスである。
僕は淡々と着替えを済ませ、校庭へ足を運んだ。運動が出来ないというだけでカナリの精神的ハンデである。
周りの笑顔を見ていると、何故僕は運動になると笑顔になれないのだろうか
と、疑問に想うことさえある。とりあえず、僕は校庭の隅に体育座りした。
「よーい……ドン! 」
との合図と共に、マラソンが始まった。
すると、担任が、タイマーを見ながら、僕の方に歩いてきた。
「なぁ、堀内。」
「はい。」
何を言い出すのだろう?
そう思った矢先
「俺、お前のこと嫌いなんだよね。運動は出来ないし、それを心臓病のせいにするし。勉強ばっかりジャン。」
なんと鳥部先生はこの毒を、清々しく言い放ち、青空を見上げていた。
僕の心の傷が深まる音も聞かずに……
タイム測定がそろそろ終わる(一位が回ってくる)
「じゃあな、せいぜいそこで大人しくしてな。どうせお前は出来ないんだから。」
胸に刺さるナイフは予想以上に鋭かった。
僕は立ち上がり、傍にある鉄柱を蹴っ飛ばした。
足が痛かった。けれど、いつも心の方が痛かった。そう、今も。
僕は、校庭の隅に座りながら涙を流していた。
何故産まれてきたのだろう?
そんなある種の悟りの境地に入りかけていた。
本来ならば、ここで親に事情を言い、教師を解雇させることは十分に可能なわけだが、僕はそんなPTAの力的な物を借りてまで生きていたくない。それに、耐えるしかない。例え鳥部を解雇させることが出来ても、山口が居るじゃないか。
「はい、じゃー、サッカーの時間にしまーす! 」
僕は一応医者から許可を得ているのでサッカーだけは参加できる。
ここで参加しなかったら何を言われるか解った物じゃない。
僕は駆け足で列に並ぼうとした。山口だ。
「一緒に、頑張ろうな! 」
同じチームになり、山口がそう声をかけてくれた。はじめて彼の笑顔を見た気がする。
「試合……開始っ! 」
まだまだ続きますので是非懲りずにご覧ください!
「え? そっちいっちゃうの? 」みたいなスリリングな感じになるかもしれませんw