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Boy Can…  作者: Techthrone
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第一章~桜~

第一章~桜~


 幾度目かの春が訪れ、校庭の真ん中の桜が咲き乱れる。

 堀内孝弘ほりうちたかひろ、今年で小学五年生だ。

「これにて、始業式を終了します。」

 盛大なる拍手と共に、にこやかに笑う校長先生のお話がやっと終わった。

 大きな講堂からワイワイガヤガヤとクラスメートが出て行く。

 たぶん、自分もガヤガヤしていたのかも知れないがワイワイはしていなかっただろう。

 教室まで歩く途中、髪が風になびく。新たな季節の訪れをかんじさせるその感触はまさに始業式に相応しい。

 まぁ、教室まで歩くその間が僕の最高の幸せなのだが。

 教室に着くと

「うぉ~! めちゃでけーな! 桜の木! 」

「ポケモンでいうとどれくらいかな? 」

 などと、いかにも小学生らしい(自分もそうだが)会話をしている連中もいれば、

 始業式が終わったばかりなのに、席に着くやいなや、算数のドリルを開き、一所懸命に勉強し始める連中もいる。

 こういう風にして、段々と格差が広がり、差が開き、実力や努力という言葉が産まれるのだろうか?

 何故こんな事を考えているかというと、この学校は、男子が全員中学受験をするのである。

 女子は上がエスカレーター式にあるので、しなくてもいい。

 もちろん僕も、中学受験という戦場の兵士の一人である。

 しかし、はぐれ兵士だ。机の上には(おそらく、カッターナイフで彫ったのだろう)「死ね!」と彫られており、

 相変わらず油断も隙もない。もう、こんなイジメからは解放されたいのだが、このイジメは未だ序章に過ぎない。

 とにかく、あの桜のように、大きくそして煌びやかに受験という名の扉を開いて、見返すしかなかった。

「はい、みんな席に着こう。」

 担任の鳥部康隆とりべやすたか先生が大きな声でそう言った。

「さあ! 今日からみんなも五年生ですね。先生と共に、頑張っていきましょう! 」

 鳥部先生が言い終わるやいなや僕は立ち上がった。僕は奴隷ではない。勇敢な戦士であり、このクラスの一員なのだ。

「先生、この机を見てください! この状態で、一年間頑張れると想いますか? 」

 静寂に包まれたクラス。

 その静寂をいとも簡単に引き裂いたのは、山口だった。

「ばーか! お前が虐められていることなんて、ガッコ入ってからずーっとじゃねぇか! 今更、机もクソもあるか!? 」

 ザワザワと(主に女子が)ざわめく。

「ほら、山口! 口を慎め! この机かぁ…… まぁお前も慣れているだろう。我慢してくれ。」

 とうとう無実の僕が担任からも見放された桜の季節。

 そして、ショックの余りその後、担任が何を話したかは全く記憶にない。

 ガラッ! 戸が閉まった。

 ホームルームが終わったらしい。

 机の上には、四年生の終わり頃に受けた模擬試験の結果が残されていた。

 僕の偏差値は75、学年順位は(学年と言っても一クラスしかないので)1/50。

 全国順位は、44/10000。好成績。

 すると背後から怒声が聞こえた。

「おい! 別にぶん殴ったりはしねぇから、こっちこいや。」

 山口だった。後ろに、9人、総勢十名ほどのこのクラスの中の恐ろしい暴力グループだ。

 僕は堂々と山口の前に立った。

「てめぇは体は華奢で心臓病だっけ? 小さい頃あったんだよな? 生きてる価値もないお前にはお勉強がお似合いだろうに。れ! 」

 体中ボコボコにされた。他の男子も、見るに見かねて応戦してくれたのだが、歯が立たなかった。

 そして終に、飛んでもない場面を見る。

 山口の胸に金属バットを振るった子分。

 手にはきちんと手袋がはめてあった。

「うわぁぁぁぁぁああああああああ! 」

 山口が泣いた。

 すると担任が、それを偶然目撃した。

 大勢の男子生徒に手足を掴まれている僕。

 金属バットの痛々しい跡が残る山口。

「どうした!? その痕は!? 」

「こいつが…… こいつが…… やったんだ。」

 その人差し指はしっかりと僕の顔面を捉えていた。

「堀内!!!!!!!!! お前はなんてことするんだ! 」

「ちげーよ鳥部! コイツは、やられていた。俺達が助けたんだ!」

 クラスメートの鎌田かまたがかばってくれた。

 しかし

「嘘を吐くな! 山口のあざを見てみろ! 可哀相に…… 大体堀内、おま……」

「うるさい! 僕はやってないんだ! 」

 泣きながら走った。痛む傷よりも心の傷の方が大きかった。

 2歳8ヶ月の時発病した、ファローという心臓病の傷跡が未だ残っている。

 その傷を胸に抱いて、走り、僕は『理不尽』という言葉の意味を知った。

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