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Stage0  作者: 塚山 凍
Stage0.999……:公演開始
59/59

灰の中から音が聴こえる時

 この物語に決着は無い。

 しかし、この物語には未来がある。











 十二月のある日。

 自宅に一人でいた俺は、ぼんやりとテレビを見ていた。


 映画やドラマを見ている訳ではない。

 視線の先にあるテレビには、我が家で共有されているビデオカメラが接続されていた。

 されていたも何も、俺がやったのだが。


 当然ながら、これが接続されたテレビは番組ではなく記録を再生してくれる。

 俺の眼前には、十一月のとある日の映像が流れていた。

 姉さんが撮影してくれた、ウチのクラスの合唱コンクールの光景────灰音と別れたあの日の映像が。


「ちゃんといる、よなあ……」


 三列に並ぶ女子の中央を見つめて、俺は思わず呟く。

 そうしないと、見失ってしまいそうだったのだ。

 女子の中に埋没して歌う灰音のことを。




 約一ヶ月前のあの日。

 合唱コンクールを終えて、唐突に灰音と別れた日。

 その次の日から、俺の周囲は変に慌ただしくなった。


 まず、姉さんが勝手に俺を学校の勉強合宿に登録した。

 頼んでもいないのに、学級担任と一緒になっていきなり山小屋に拉致したのである。

 朝起きたらウチの前にバスが停まっているものだから、あの時は本当に何事かと思った。


 そこからは、やりたくもないのに地味な勉強をやり続けた。

 元々大して友達がいないので、何も娯楽が無い山小屋では本当に勉強以外にやることが無い。

 世間から隔離された修行僧の気持ちを理解しながら、俺は過剰に受験勉強をする羽目になった。


 この時期、世間では「神帰月の奇跡」とか言う逮捕劇が起きていたらしいが、ずっと合宿中の俺には関係の無い話だった。

 合宿中はそれらに触れる機会がなく、合宿から帰ってきた日も、何も見る余裕がなく疲れて寝ていたのだから。

 警視庁の功績がどうのと言われても、何も感じるものがない。


 寧ろ、俺に関係があったのはその後、学校に登校した時のこと。

 案の定と言うか何というか、灰音の席がなくなっているのを見つけた時の方が心が動いた。

 ああ、本当に彼女はいなくなったんだと思って。


 適当なクラスメイトに聞いたのだが、一応「皆さんにお知らせがあります、実は皆さんのお友達の羽佐間さんが転校しました」「ええーっ」みたいな、お馴染みの流れはやったらしい。

 しかし灰音の元々の存在感故か、その話題はすぐに流れてしまって。

 俺が勉強合宿から帰った時には、もう誰も灰音のことは話していなかった。


 強いて言うなら、合唱コンクール委員の顧問が唯一の例外か。

 委員の名札やら何やらを返しに行くと、彼は黙々とそれを受け取って。

 もう一人の分は既に受け取っていますから、と素っ気なく言った。


 ……思えば、それが。

 俺が虹永中学校の中で、灰音の存在を感じた最後の瞬間だった。


 この場面以外で、俺は灰音の名前を不気味なほどに一切聞かなかった。

 綺麗さっぱり、彼女の存在は俺の周囲から消えていたのだ。




 クラスの名簿から、灰音の名前は消されていた。

 勉強合宿に行っている間に、名簿や出席番号は全て書き換わっていて、彼女がいないこと前提でクラスが回るようになっていた。

 掃除の当番も、体育で作る二人組も、何の混乱もなく進んでいた。


 学校が終わって家に帰ってからも、灰音の存在は感じ取れなかった。

 俺が家族共用のパソコンに残していた、彼女との記録────姉さんや葉兄ちゃんに送ったそれが、いつの間にかパソコンから消えていたのだ。


 どこをどう漁っても、記録は残っていなかった。

 葉兄ちゃんたちへの送信記録すら無かった。


 仕方なく、姉さんや葉兄ちゃんに以前送ったデータを返して欲しいと言ってみたのだが、反応は芳しくなかった。

 葉兄ちゃんは、「メールがちゃんと届いていないみたいだ、ファイルを開けないから確認できない」とモヤモヤとした報告を返して。

 姉さんに至っては、最初から無視された。


 家を出て街に繰り出しても、彼女を思い出せるものは少なかった。

 例のカラオケボックスは事件の影響で潰れていたし、赤城酒店や合唱コンクール会場は元々思い出の場所と言えるほどのことをしていない。

 それ以外に一緒に出かけた場所もなく、彼女を思い返せる光景など存在しなかった。


 そして、何より────カメラが無かった。

 俺がかつて、父さんから贈ってもらったカメラ。

 羽佐間家の車や、カラオケボックスで転んだ彼女を撮影していたカメラ。


 あのカメラも、俺の手元には存在していない。

 どういう訳か、姉さんが持ち去ってしまったのである。


 理由を聞いてみれば、「お前もそろそろ受験なんだから、趣味に現を抜かしている場合じゃないだろう」なんて、およそ姉さんっぽくない理由が返ってきた。

 今までに一度だって、「勉強しなさい」と言ったことが無い人なのに。


 まあ、要するに。

 どういう訳か、俺の周囲にあったはずの羽佐間灰音に関わる物は、殆ど全て消失していたのだった。


 だからこそ、後から何かを振り返ろうとしても無駄だった。

 さながら、焼け野原で灰を掻き分けているかのような虚しさ。

 どこをどう掘りつくしても、出てくるのは灰の塊だけだった。




「だからもう……これしかないんだよな、彼女を映した物」


 そう呟きながら、俺はボタンを操作して合唱コンクールの光景を巻き戻す。

 練習中から聞き飽きていた課題曲が鳴り始めると同時に、画面上で羽佐間が長い前髪を揺らした。

 体全体でリズムをとっているらしい。


 こうして映像で見ると改めて分かるが、本当に地味な印象の子だ。

 意図的に、自分を地味な学生として装っているようにすら見える。


 しかしそんな地味な姿を、俺は凝視し続ける。

 こうでもしないと、色々と不安になってしまうのだ。

 俺が見続けていないと、映像内の彼女すら滲んで消えてしまうのではないか、と有り得ない妄想をしてしまう。


 ──でもこうやって未練がましく灰音のことを確認していることからすると、やっぱり俺は彼女が好きだったのかなあ……。


 再び歌が終わる中、ぼんやりとそう考える。

 これもまた、ビデオを再生する度に思うことだった。


 いくら何でも、俺の彼女に対する感情は異様である。

 別れ話の時にちょっと抵抗したこともそうだが、俺は自分で思っている以上に、彼女との「取引」を続けたがっていた気がする。

 それが恋愛感情かどうかは、俺自身でも推理できていないのだけど。


 しかしこれが恋心だと言うのなら──恥ずかしい言い方になるが──羽佐間灰音はやはり、俺の初恋の人と言うことになる。

 今まで恋愛らしい恋愛をしたことがないので、この感情が初恋かどうかすら分からないのが玉に瑕だが。

 それでも、彼女のことをもっと知りたいと思い続けているのは確かである。


 唐突な始まりも、突然の別れも。

 何もかもがいきなり過ぎて、とても感情の整理を付けられないまま全てが終わってしまった。


 だからこそ、こうして何度も顔を確かめているのだろうか。

 平気そうに歌っている、彼女の顔を。




 ────しかし、こうして何度も何度も振り返ったからだろうか。

 実を言うと、彼女と別れてから二つの新事実に気が付いた。

 それを確かめることもまた、こうしてビデオを見ている時のルーティンだった。


 一つ目は、この「日常の謎」の真相だ。

 俺の周囲から、不気味なほどにまで灰音にまつわる物事が消失している理由。

 初彼女と別れた瞬間、それに関する物が消え失せるという今までで一番の「日常の謎」。


 これの真相について、実は見当はついていた。

 と言うか、犯人は断言できる。

 推理するまでも無い。


「姉さんだよな、やっぱり……母さんが仕事で帰ってなくて、父さんが海外にいる以上、家のパソコンの中身消せるのは姉さんくらいだし」


 再び停止した画面を前に、俺は確信をもって呟く。

 どう考えても、それしかないと思って。


 カメラを取り上げたこともそうだが、どうもここ最近の姉さんは、俺が「何か」を確認するのを止めさせようとしているように思える。

 その処理が余りにも完璧すぎるので、逆に犯人が分かったのだ。

 ここまで徹底的に情報を消すようなことをするのは、俺の周囲では姉さんしかいないのだから。


 そして多分、これは姉さんの失敗ではないだろう。

 やろうと思えば、あの人はもっと自然な形で情報を消すことだってできる。

 そのくらいの能力はある人だ。


 そんな姉さんが、ここまであからさまな形で何かを隠した理由はただ一つ。

 暗に、俺にメッセージを伝えているのだろう。

 お前に知らせたくない何かが起きたから、お前もそれは察して調べようとするなよと。


 要するに、姉さんは俺から何かを隠したが、「何かを隠したという事実そのもの」は別に隠していない。

 俺にそれを匂わせることで、遠回しに真相を探るのを諦めさせようとしているのだ。


 ……そして実際、このメッセージは効果があった。


 犯人が姉さんだと分かった瞬間から。

 俺はこの謎について、詳しく調べていない。

 言うまでも無く、無駄だからだ。


 昔から俺の尻拭いをしていることから分かる通り、姉さんの能力は俺のそれを全て上回っている。

 姉さんが隠した物の正体は分からないが、あの人が本気で隠した以上、現時点の俺の能力でそれを見つけ出すことは不可能だろう。

 消えた記録も、俺のカメラも、既に絶対に見つからないどこかに隠された訳だ。


 そして当然ながら、俺が何か頼んだところで、姉さんが話してくれるはずもなく。

 現実的に考えて、既に俺が事の真相を調べるのは無理だった。

 こうやって全ての証拠を隠された以上、推理のしようもない。


 俺がこうして見ているビデオだって、隠そうと思えば隠せたはず。

 それをわざと残したのは、俺に対するせめてもの情けだろうか。

 何にせよ、こうして犯人が分かってしまったからこそ、俺も未練がましくビデオを見る以外の行動はせず、極力灰音のことも考えないようにしたのだった。


「普通の人から見れば、諦めが早すぎるように見えるかもな……俺の場合は、割とらしい答えな気もするけど」


 何故か言い訳するように、そんなことも呟く。

 実際、我がことながら俺っぽい判断である。


 なまじ灰音から褒められる程度には推理力がある分、俺には自然と分かってしまうのだ。

 結果的に、今の俺がこういう状況に置かれている以上。

 何かしら、そうしなくてはならない「何か」があって、俺は当座はそれに従っておくのが一番なのだろうと。


 姉さん────松原夏美なる人間に対する、二つの信頼。

 目的のためであれば何でもやるだろうな、という負の信頼と。

 何をやらかしたとしても、それは最終的には俺のためなんだろうな、という正の信頼。


 この双方を抱えているがために、俺は姉さんが用意したこの状況を受け入れていた。

 何がすべきことで、何がすべきではないことなのか。

 ずっと考えた結果、こうするのがベストだろうという判断になったのである。


 詰まるところ、この謎を生んだ犯人は姉さんで。

 俺はそれを察しつつも、何か理由があるんだろうと思ってこれ以上追及する気が無い。

 それが、一つ目の分かったことだった。




 しかし、もう一つ。

 恐らくは姉さんにとって想定外であろう着想を、俺は既に得ている。

 ビデオを繰り返し見る中で気付いた二つ目のことが、それだった。




「灰音って……最初の頃、変な笑い方をしてたよな。薄笑いと言うか……」


 一時停止させた画面を見ながら、俺は過去の記憶を口に出す。

 無論、そこにいる灰音は真顔のままだ。

 しかし彼女の表情は、俺に過去を想起させた。


 俺としては、忘れられない表情だ。

 付き合い始めた初期の頃、彼女がしばしば見せていた表情。


 笑っている割に、決して楽しそうではなく。

 寧ろこちらの肝が冷えてくるような、そんな笑み。

 彼女は最初の頃、そう言う顔をよくしていた。


 あの表情の正体。

 それは、ちょっとしたことを切っ掛けに最近分かった。


 十二月に入ってすぐ、どこかモヤモヤしている気分のまま、街の映画館に足を運んだ時のことだ。

 スクリーンに映し出されたとある役者の表情が、灰音のそれと完全に一致していたのだ。


 その表情を浮かべていたのは、ボヌールに所属する凛音と言うアイドルだった。

 確か、灰音も好きだったはずのトップアイドル。

 役者としても活躍する彼女は、俺が見た映画にもメインキャストとして出演していた。


 そしてネタバレになるが、映画において彼女は連続殺人鬼の役だった。

 とても人気アイドルが引き受けなさそうな役柄だったので、映画館で密かに驚いたことを覚えている。

 イメージ的に大丈夫だったのだろうか、アレ。


 しかし何にせよ、彼女は殺人鬼として映画の世界で活躍していた。

 演技は全体的に生々しく、しかしどこか美しく。

 とても、印象に残る役柄だった。


 そして映画の中で、とりわけ印象に残ったのが。

 彼女が初めての殺人を犯した場面を描いた回想シーンで、凛音が浮かべていた表情である。

 彼女は人を殺す時、怒りに顔を歪めるのではなく、憎しみに顔を引きつらせるのでもなく────薄く笑ったのだ。


 この時、彼女の表情を見た時。

 俺は反射的に、「灰音の表情だ」と思った。

 灰音が俺に対して見せていたあの顔は、映画の中で殺意の表現に使われていたそれと全く同じだと。


 勿論、所詮は偶然の一致に過ぎないのだろう。

 偶々あのアイドルが殺人犯の役柄を演じるに当たって、薄笑いを殺意の表現として使っただけ。

 別に現実に薄く笑う女性がいたところで、その人が殺人犯である訳がない。


 しかし、それでも。

 時として、偽物は偽物であるが故に本物以上に本物らしくなる。

 俺はどういう訳か、灰音のあの表情は映画のそれと同一であるとしか思えなかった。


 だからこそ、不意に考えてしまうのだ。

 俺はどうやら、こうして未練を残す程度には彼女に思いを寄せていたようなのだが────彼女はどうだったのだろうと。


 灰音はひょっとすると、映画の中の殺人鬼のように、俺を殺したかったのではないか。

 そんなことを、何度も思うのだった。


 俺が真相を探らないようになったのは、ひょっとするとこの辺りも考慮に入れているからなのかもしれない。

 ただの勘だが────どうもこの真相、俺にとっても灰音にとっても、幸福な物ではない。

 そんな気がする。




 因みに余談だが、その映画内の殺人鬼が初めて人を殺した理由は重苦しいものだった。

 長らく家族から性的虐待を受けていた彼女が、それに気が付けなかった恋人を衝動的に刺し殺したという設定だったのだ。

 貴方なら助けてくれると思っていたのに、なんて言いながら。


 ネットで映画のレビューを見たところ、この動機は割と不評らしい。

 アイドルにこういうダーティな役柄をさせたこともそうだが、殺人の動機として意味不明過ぎる、と言う評価が多かった。

 いくら何でも逆恨み過ぎるとか、殺すなら元凶の家族を殺せよ、なんて散々言われていた。


 しかし俺は、どうしてかそうは思えなかった。

 寧ろ、結構リアルな動機なんじゃないだろうかとすら思った。

 この辺りが、後になって分かったことその二である。




「まあ、どちらにせよ……もう考えても仕方がないよな。謎を解くためのヒントは、全部焼き払われているようなものだし」


 完全に静止したビデオを見ながら、ポツンと呟く。

 これが最後のルーティンだった。

 色々とモヤモヤの残る結果になったが、もう仕方がないと諦めること。


 こうやって感情に整理をつけておかないと、流石に受験勉強に悪影響がある。

 だからこそ、ここ一ヶ月のことを考えないようにして受験に集中するためには、これは必要なことだった。

 事実これまで、そうやって普通に過ごしてきたのである。


 しかし、この日はどういう訳か。

 そうやって諦めると同時に、心の中で小さな声がした。


 ──でも、本当に……姉さんは、俺に隠し続ける気なのか?


 生まれてからずっと、姉さんの弟として過ごしてきた。

 だからだろうか。

 俺は少し、姉さんの次の行動を気にしていた。


 元々姉さんは、俺のために真相を隠すことはあるが、それを永遠に隠すようなことはしない。

 かつて、コンビニの万引きについて真相を隠しても、中学生になったら詳細を教えてくれたように。

 こちらがその真相を咀嚼できる状態になれば、自然と教えてくれるのである。


 だから、ひょっとすると。

 今回の一件も、例外ではないんじゃないだろうか?

 いつか姉さんは、今回の真相を教えるために、俺に対して何かを持ちかけてくるんじゃないだろうか。


 ──でも、直接真相を教えてくれるとは限らないよな。今の状況でも推理可能となるように俺を鍛えるとか、平気でやってくるだろうし。


 そう思いながら、俺は周囲の物をぐるりと見渡す。

 ここに置いてある全てが、恐らくは姉さんによる検閲をクリアした物たち。

 さっきの焼き払われた云々の例えを続けるのなら、燃え尽きた後の「灰」たちだ。


 しかし多分、俺が成長すれば話は変わってくる。

 仮に俺が推理小説に出てくるような名探偵であったのならば、この状況でも真相を掴めるかもしれない。

 灰の中で響くどんなに微かな音であろうと、聞き逃さないのならば。


 だからそのために、姉さんはまた何か悪だくみをしているのではないだろうか。

 何故だか、そんな気がする。

 それをクリアした時、ようやく、俺の初恋は終わるのではないだろうか────。




「まあでも、姉さんの動向を推理したって無理があるよな……今やるべきことは、受験勉強だ」


 やや自虐しつつ、俺はんーっと伸びをして勉強に戻ろうとする。

 高校に落ちてしまえば、真相を掴むどころではない。

 時期的に、もうちょっと現実的なことに思考のリソースを割く必要があった。


「ただ、高校に入ったらバイトとかしようか……姉さんが何を提案してくるにしても、お金はあった方が良いだろうし」


 唯一、今回の経験から得た学びとして、そんなことも呟いておく。

 何をさせられるにしても、お金はあればあるだけ困らない。

 経済的な事情で転校したらしい灰音のことを想うと、猶更お金の重要性と言うのは理解していた。


「……時給の良いバイト、春になったら探そうか」


 最後に独り言を言ってから、俺は自分の部屋に戻ろうとする。

 途中でふと窓を見ると、外では珍しく雪が降っていた。


 白でも黒でもない、その狭間(はざま)の色をした雪。

 それは何だか。

 全てが曖昧なまま終わってしまった今の俺を、そのまま映しているようだった。






 後日談を少し。

 俺はこの後、めでたく高校に合格する。

 考えても仕方がないと諦めて、灰音のことを考えずにいただけはあり、勉強に集中できないことは無かった。


 そして入学式当日、姉さんが動いた。


「お前、しばらくウチの事務所でバイトしろ。アイドルのマネージャーになれ」

「は?」


 唐突過ぎる提案。

 本来なら、断ったっておかしくない話。

 しかしそれを、俺は割とあっさり引き受けることになる。


 その真相は、もしかすると。

 無意識に感じ取っていたのかもしれない。


 ああ。

 これが、物語の始まりなのかと。

 ゼロからイチへ、踏み出す時が来たのだと────。

これにて完結です。

御読了ありがとうございました。


本作の後の時系列を描いた作品として、「アイドルのマネージャーにはなりたくない」を現在連載中です。

玲の続きが気になる方は、お読みいただければ幸いです。


またどうでも良い話ですが、本作を書いている際、BGMとしてBLUE ENCOUNT様の「バッドパラドックス」をよく聞いていました。

かなり影響を受けましたので、お時間のある方は聞いてみてください。


最後に、面白いと思われた方は評価、ブックマーク、いいねの程よろしくお願いします。

また、感想もお待ちしています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 玲くんも灰音が好きだったんですね……。 [一言] アイドルのマネージャーにはなりたくない、の更新も楽しみにしています。
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