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お仕置き

「さてさてさて、随分やらかしてくれましたなぁ~~、ジーノよ。」

「随分と楽しんでいたじゃねえか、ジーノ。」

「ちょっと待ってくれよ。熱ちちちっ!」

 石窯の温度が急激に上がり、悲鳴を上げるジーノ。

 彼は今、両手両足を縛られ巨大な石窯の中へ放り込まれていた。

 窯はデルタとソプラノスの炎魔法で熱せられていて、温度は400℃を優に超えていた。

「その昔、創造したダンジョンを利用して現実世界でユーノ達に接触を図るとは・・・・。まさか脳筋の貴方がこんな大それたことをするとは思いませんでしたよ。」

「羨ましい!ユーノと現実世界で遊ぶとは羨ましいぞ!」

「熱い!熱い!遊んでたんじゃねえ。事故。事故だったんだ!」

「事故、ですと。」

「ああそうだソプラノス。ワシはただ、あのエリカにワシの創った最高傑作の剣を渡したかっただけなんだ。」

「前にもそんなことを言っていましたね。で、あのダンジョンの事を思い出した、と。」

「ああ。最後の試練に自分の分身を置いていたからそれと意識を同調させようとしたら―――。」

「向こうに引っ張られてしまったと。」

 コクコクコクと何度も頷くジーノに深いため息しか出ないソプラノス。

「あのですね、なんてメチャクチャな事をするのですか!いいですか?そもそも分身という高度な魔術を魔法の理解がない貴方がすること事態、烏滸がましいのです。」

「いや、前にソプラノスが簡単にやっていたからできるかな~て。熱っ!!!!」

 問答無用で魔力の威力を上げる。

「簡単ではありません!ワタクシでさえ、複雑で繊細な手順を踏んでようやく行える難しい魔法なのですよ。そんな無茶をしたから向こうに引っ張られたのでしょうが!下手すれば、分身ごと存在が消えていたかもしれない!寸前のところでこのワタクシが気付いたから事なき得たのです!反省しなさい!」

「そうだそうだ。ユーノとエリカと遊べて羨ましいぞ。」

 ソプラノスの叱責とデルタの不満がジーノに降り注ぐ。

「悪かった!悪かったってば!反省してるから。許してくれよ!!」

「許しません!暫くはこの熱湯窯の中で藻掻き苦しみなさい!」

「熱い~~~~~~~~。」


「なあソプラノス。」

「何ですかデルタ。」

 お仕置きの最中、突然デルタが尋ねる。

 口尻を吊り上げ不敵な笑みを浮かべているそれは何かしらを思いついた時に見せる表情。

 ソプラノスは反射的に警戒する。

(これは二択。ワタクシに無理難題を突き付けて頭を悩ませるか?それとも心がときめく案件か?)

「このジーノ(脳筋バカ)でも出来たんだ。現実世界に俺達の分身となる物があれば俺達も現実世界に行けるのでは?」

「あのですねデルタ、ワタクシの話を聞いていましたか。ちゃんとした手順を踏まないと我々自身が消えてしまうのですよ。」

「だからちゃんとした手順を踏めばよいのだろう。」

「あのですね?それは複雑且繊細で―――。」

「わかっておる。それぐらいの原理、俺様でも知っている。」

 そうだ。

 隣にいる男は一見大雑把で無知のように見えるがその実、魔術に深く精通しているのだ。

 魔術だけではなく武術にも長けた存在。

 だからこそ、大魔王として世界から恐れられていたのだ。

「だからよ思ったんだ。この条件下でなら、こうなるんじゃないのか?」

 デルタは自分の考えをソプラノスに耳打ち。

 その瞬間、脳が爆発。

 眼を見開き驚く。

「まさかそんな方法が!でもそれは・・・・・・。いやそうではない。これをああすればば・・・・・。」

「お、お~~~い、どうした??」

 ソプラノスの手が止まった事で温度が下がり、一命を取り留めたジーノ。

 窯の中から何事かと覗き込む。

「何ブツブツ言っているんだアイツ?」

「なぁに、ちょっとしたひらめきが沸いたのさ。」

「???」

 首を傾げるジーノ。

「まぁおとなしくしていろジーノ。さすれば面白い事が起こる。」

「面白いこと、だと??」

「信用ならないか?」

「まっさか。お前がそう言って面白くなかった事なんて一度もなかっただろうよ。」

「なら暫くは大人しくしていろ。」

「了解。じゃあ湯心地いいこの窯で待っているとするか!」

「ああ、そうしていろ。」

 鼻歌まじりで湯を満喫するジーノ。

 自分の世界に閉じ籠り没頭するソプラノス。

 そんな二人を眺めるデルタは意味深で悪巧みな笑みを一人密かに浮かべ続けるのであった。

これにて第2章終了です。

近々第3章更新する予定です。

お楽しみに。

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