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ユーノの目的

「着いたぞユーノ。ここが今日からお前が暮らす家だ。」

「・・・・・・。」

 ユーノがあんぐり口を開けるのも無理もない。

 アルベルトに案内された場所は首都の中心部から南寄り、いわゆる貴族街といわれる高級住宅街。

 その中で一際目立つ一等地であった。

「こんな大きい家に住んでいいの?」

 呆然と立ち尽くすユーノの表情にさぞご満悦のアルベルト。

「良いも何も、この家はゲイツの所有物だからな。自由に使えばいい。」

「ゲイツ父さんの家?!」

 寝耳に水。こんな豪勢な家を所有していた事に驚く。

「まぁアイツの性格上話さないだろうな。何せここは三大魔王を倒した褒美として承った家だからな。」

 イスカディール帝国の騎士であったゲイツは先の大戦に参加。

 見事三大魔王全員を打ち倒した功績を讃え、帝国から英雄の称号とこの家含め数々の褒美を承った。

 三大魔王と友人関係であったゲイツは友人を殺した褒美などいらない、と頑固拒否したがアルベルトの助言により渋々受け取った経緯がある。

「そういう経緯があって英雄の称号もすぐに返納。褒美も全て売り払い孤児院などに寄付したんだが、この家だけは残すようアドバイスしたんだ。今後、使い用があるかもしれないってな。」

 アルベルトが門を開けて中へ。

 ユーノはそれに続く。

 家というよりはお屋敷。

 庭も走り回れるほど広い。

 長らく使われていないはずなのに外壁に蔦やひび割れは一切なく、庭も手入れが行き届いている。

「俺が業者に頼んで、定期的に看てもらっていたからすぐにでも住めるはずだ」

「中は意外に質素だね。」

 建物内は豪華で派手な装飾品は一切なく、殺風景。人が住んでいる形跡は全く感じられない。

「ゲイツらしいだろう。高級品は全て売り叩いたからな。」

 アルベルトに室内を一通り案内してもらう。

「一応、必要な物はこっちで用意した。どうだ、足りるか?」

「ううん、十分だよ。」

「ところでどうするユーノ。こんな広い家だ。一人じゃあ家事全般はしんどいだろう。使用人でも手配しようか?」

「それは大丈夫だよ、ガウルがいるし。二人で何とかするよ。」

「そうですな。見知らぬ者を招き入れるとユーノ様の正体がバレる可能性があります故。」

 ユーノの影から黒い狼が飛び出す。

「おかえりガウル。ウバー達の案内ご苦労様。」

「ええ、苦労しましたよ。村までの案内に村人達への説明、さらにはサイクロプスとの縄張り問題。ええ本当に苦労しました。」

「そう。でもガウルなら全部解決できるよね。」

 皮肉を込めた発言は残念ながらユーノには響かず。

 ガウルは大きなため息を零した後、アルベルトに深々とお辞儀。

「アルベルト殿、お久しぶりでございます。」

「ガウルも大分苦労しているみたいだな。」

「ええまあ・・・。それよりもお茶をお入れいたしましょうか?積もる話もあるでしょうし。」

「そうだね、お願いしようかな。」

「久しぶりにガウルが淹れた上手いお茶を飲めるのか。それは光栄だ。」

 二人と1匹は食堂へ移動。ガウルが淹れたお茶を味わう。

「そういえばユーノ、ゲイツは元気か?」

「元気だよ。今はザベール国へ向かっている途中さ。」

「ザベール・・・、ああ、占い師ネルの所か。」

「そう、2年前の予言の事を聞きにね。」

 ユーノの発言に和やかな空気は一変する。

「ねえアルベルトさん。」

 カップを机に置き、組んだ手の上に顎を乗せて不敵な笑みを浮かべてアルベルトの名を呼ぶユーノ。

 その仕草はソプラノスにそっくりで不敵な笑みはジーノに瓜二つ。そして圧力はデルタそのもの。

 アルベルトは二回り以上年の離れた少年に萎縮しているのを肌で感じた。

「俺はその占い師がこの帝国にどのような予言をしたか、よくわかっていないんだ。詳しく教えてくれないかな?」

「わかった。」

 断れない雰囲気と圧に白旗を挙げたアルベルトは説明を始める。

「事の発端は2年前だ。先程言った通り占い師ネルにこの国の今後を占ってもらったのだ。因みにだが、占ってもらうのは今回が初めてではない。非公式に隔年毎に占いを行ってもらっていて、その内容を元に政策を講じていた。で、2年前の占い結果が大魔王デルタの復活、盾と矛、イスカディール帝国の危機、勇者。という内容だった。」

「随分、途切れ途切れの内容ですな。」と自分の尻尾を器用に操り、アルベルトが持参したクッキーを口に運ぶガウル。

「毎回こんな感じだ。で、国王陛下含め大臣達は2年から5年後の間に大魔王デルタが復活しイスカディール帝国に危機が訪れるが盾と矛を手にした勇者がこの国を救う、と解釈したそうだ。」

「2年~5年の間、て断定できたのは?」

「ネル曰く、勇者は制服を着ていたそうだ。お前が通う予定のライトザルト学園の制服をな。」

「成程ね。」

「で、お前はどう思うユーノ。本当にデルタは復活すると思うか?」

「その可能性は低いと思うけどね。」

 ユーノは傍に立てかけているゲイ・ジャルグに視線を送る。

 因みにゲイ・ジャルグの中に三大魔王の魂が存在している事を知っているのはユーノとゲイツのみ。ガウル他、元家臣達には知らない。

「村の者達とも話し合いましたが、なんとも言えませんな・・・。何せあの方々は我々の予想を超えることばかりされてきたので。」

「そうだよな。全てにおいて規格外だからな。まぁ、俺が知っていることは以上だ。頼むから外に漏らすなよ。このことはかなりの地位の人間しか知らない極秘事項。俺が知っていること自体異例なんだからな。」

「分かっていますともアルベルト殿。ご安心してくだされ。」

「しかし驚いたぜ。帝国内に人を送り込む、と聞いていたがまさかユーノが来るとはな。」


 デルタが復活するかもしれない、その情報をアルベルトから聞かされたガウル及び元家臣達(村の者達)は緊急会議。その情報の真偽を確かめると共にイスカディール帝国へ誰かを派遣すべきだ、と話に発展した。

 当初は土地勘もある駐屯騎士マイクを派遣する話となるが、やんごとなき事情で断念。そのマイクがユーノを推薦したのだ。

「ユーノなら大丈夫。最近腕を上げてきているし。機転も効く。それに見聞を広めるいい機会ですよ。」等とマイクの熱烈なスピーチに反対意見は徐々に消えていき、最終的には満場一致でユーノの派遣が決まったのである。


「俺様の復活。帝国の危機、だとな。」

「さてさて、大魔王デルタがどのようにして復活するのか見ものですなぁ。」

「そうだな。おいユーノ、しっかりしろ。」

 大の字に倒れるユーノ。

 その日の夜、精神の間にて。

 現在デルタと模擬実践中。

 本気で攻めるユーノに対してデルタはソプラノス達と世間話する余裕を見せつける。

「何を言っている。俺様はもう現世に未練などないわ。ユーノ、もう終わりか?」

「まだまだ。」

 息絶え絶えのユーノ。数秒で呼吸を整え、再度デルタに挑む。

「どうした?動きが鈍いぞ。」

「疲れている時こそ繊細な動きを心がけろよ。」

 デルタの檄とジーノのアドバイスを受けながら果敢に攻めるユーノ。

 だが攻撃は一切デルタに届かない。

 全て軽くあしらわれる。

「本来であればそのような予言など信じるべきでない案件ですが、かの有名な占い師ネルとなると事情が変わりますな。」

「そやつを知っているのか?ソプラノス。」

「噂は・・・。実際に会ったことないですが、よく当たると有名ですからのう。」

「つまり信憑性は高い、ことだね。」

 攻撃を躱されたと同時に投げ飛ばされて再び大の字に寝転がるユーノが会話に参戦。

「そうですな。他の可能性も多々ありますがね〜。」

「ユーノ、お前が今すべき事は学園の試験だ。試験が終わるまで片隅に残す程度にしておけ。」

「ジーノのその通りですよユーノ。それにマイクという人間から頼まれた事があるでしょうに。」

 ジーノとソプラノスは心配する事はないと言い張るが、ユーノの心の中には若干の不安が。

(その予言が本当でもし、その脅威が村のみんなやルシア、エリカに迫ったら・・・。)

 嫌な妄想がよぎる。

 しかしデルタの高笑いがそれを彼方へと吹き飛ばし、次の言葉がユーノに勇気を与える。

「安心しろユーノ。もし俺様が復活するとしてもそれは偽物だ。何せ本物はここにいるからな。偽物なんぞ我が息子の敵ではないわ。」

「デルタの言う通りですぞ。安心するのじゃ。ワタクシ達が傍にいますからのう。」

「そうだ。何せお前はワシ達の自慢の息子だ。自信を持て!」

 三人の父親に背中を押され、前を向くユーノ。

「よし、いい顔つきに戻ったな。続けるぞユーノ。」

 デルタの愛の特訓は明け方まで続いた。

どうもこんにちは。魚右左羊です。

このシリーズは第1部まで一応毎日投稿で頑張ろうと思います。

よろしくお願いいたします。


因みに今回が初めての試みで使い方があまりわかっていません。

不手際が多々あると思いますが、少しでも楽しんでくだされば幸いです。

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