宝部屋
「おい野郎共、先へ進む扉を探せ!!」
ゴーレムが倒されたのを見計らいドナルドは傭兵達を引き連れ、部屋の中心部へ。
ユーノ達をその場に足止めさせて、傭兵達に部屋中を捜索させる。
「お、おい、これは・・・。」
傭兵の一人が見つけたモノ。
それは2mを超す大男の銅像だった。
先程のゴーレムよりも胸板は厚く、腹筋は8つに割れており、腕や足もたくましく太い。まさに筋肉隆々。
そんな立派な銅像に傭兵達の顔が青ざめる。
「マジかよ・・・、な、なんでこんな所に大魔武王ジーノの銅像があるんだよ!」
「あれが大魔武王ジーノ。」
唯一、生前を知らないエリカは両腕を組んで胸を張るジーノの顔を凝視。
逆立たせた髪から生える立派な2本の角に太い眉毛。
四角い顔と大きな鼻は恐ろしさを感じる一方群青色の大きな眼と口元に生やしている豪快な白髭はまるで子供のような無邪気さが伺える。
(これが銅像?まるで生きているみたい。)
今にも動き出しそうな印象を抱いた時、遠くから「扉を見つけたぞ!」の声が。
「よく見つけたぞ。さぁ今度こそLスターが創った剣があるはずだ。」
傭兵が見つけた銀製の大きな扉。
今までの扉とは形状が全く異なっていた。
「あれって文字、だよね?」
扉の中央部に刻まれている古代魔文字を指さすと、ユーノは一つ頷き、そしてその文字を訳し始めた。
「我が試練を乗り越えた勇敢な者よ。汝を讃えよう。来る戦いの為に、我これを贈る。」
「この奥に宝物があるのだな!」
ユーノ言葉を聞いてそう解釈したドナルドと傭兵達。
我先へと扉に群がり、扉を押す。
それを遠目で眺めるのはユーノとエリカ、そしてトマス一行。
ギギギギ、と軋む音を鳴らし開かれる扉の向こう側から零れる眩い光。
眼がその光に慣れた先には剣や槍、斧等が大量に飾られている部屋だった。
「おおおおおおお。」
最初に雄叫びを上げたのはドナルド。
彼は一目でここに置かれている武器全てが超一級品であることを見抜いたのだ。
「凄い、凄過ぎる!」
ドナルドの興奮を収まらない。
それに釣られて中へ雪崩れ込む傭兵達。
トマス一行もそこに置かれている武器に目が眩んでいた。
「凄い。ダガーナイフからロングソード・・・、何でもあるぞ。」
「宝だ!これこそ宝だ!」
歓喜し続けるドナルド。
そんな中、ユーノとエリカは冷静だった。
(確かに凄い・・・。こんなにも立派な武器がたくさん。だけど・・・・。伝説級と称されるゲイ・ジャルグと比べると見劣りがする。)
ユーノの方をチラ見。
彼も手厳しい表情を浮かべていた。
もし自分が扱えば簡単に折れてしまうのでは?という疑念を探りたくてすぐ傍にある一つの剣へ手が無意識に伸びる。
「触るな!」
が、ドナルドの鋭い声に条件反射で手を引っ込める。
「ここにある武器は全て俺の物だ。おい!」
ドナルドの指示を受け、回収し始める傭兵達。
「トマス。お前はこの二人を拘束しろ。もうあんな強敵は出てこないからはずだ。」
用無しだと言わんばかりの態度。
トマス達はドナルドの指示に従い、剣を向ける。
「後、その女が持っている剣もだ。ソイツも俺が頂く。」
「何ですって!?」
「ソイツはお前みたいな『名折れ』には過ぎた物だ。俺が有効活用してやる。」
「駄目。これはユーノの形見―――。」
「エリカ、ここは言う通りに。」
「ユーノ?!」
「だが約束してくれ。この部屋にある武器は全てやる代わりにエリカには手を出さないと。」
「いいだろう。」
ドナルドは勝ち誇った表情で頷く。
「エリカ、剣を渡して。」
「で、でもこれは―――。」
「エリカの方が大切だ。」
「・・・・・わかった。」
悔しさを押し殺し、ゲイ・ジャルグの剣を渡す。
「よし。それじゃあ大人しくしていろ。そうすれば命だけは助けてやる。」
(嘘だわ。)
ドナルドの表情を見て確信を得るエリカ。
抵抗の意思を示そうとしたがユーノがそれを許さない。
(今は耐えて。)とアイコンタクトが送られる。
「(二人とも今暫く辛抱して下さい。俺達が必ず逃しますから。)」
ドナルドの目を盗み、囁いてきたのはジョー。
「(二人はダンの命の恩人。絶対に死なせません。だから―――。)」
「気遣いは無用だ。」
「「え?」」
ユーノの発言で目が点になるジョー。
エリカも同じだった。
「ユーノ、それはどういう―――。」
だがユーノはそれを無視してジョーに小声で尋ねる。
「君達は仲間内で秘密に連絡とかは取れる?」
「ええ、できますけど?」
「じゃあ、伝えてくれ。この部屋を出た後用心してくれ。自分達の身を守る事だけを考えて行動してくれ、と。」
「え?え?」
「ねえユーノ、説明―――。」
「ドナルドの旦那、全て回収しました。」
エリカの質問は傭兵の声に掻き消される。
「よし、ここを出るぞ。トマス、この二人が反抗しないよう見張ってろ。」
ドナルドは傭兵達に囲まれて部屋を後に。
ユーノとエリカはトマス達に剣を突きつけられながら後に続く。
「何処かに外へ続く通路か魔法陣があるはずだ。探せ!」
トマス達にユーノの見張りを任せ、他の者が出口を捜索。
が、見つからない。
「隈なく探せ。」
イラついた声が飛ぶ中、一人の傭兵が呆然と立ち尽くしていた。
「おい何ぼけっとしている。サボっていないでさっさと出口を探せ。」
「な、なあ?」
「何だよ。」
「あの銅像、おかしくないか?」
恐ろしさから誰も近づこうとしなかったジーノの銅像を方へ視線を向ける。
銅像は両腕を上に胸板の筋肉を自慢するポーズをしていた。
「さっきまであんなポーズしていなかったよな?」
「・・・・・・。」
何も言えない。
錯覚かと何度も目を擦り銅像を凝視。
銅像は黄ばんだ歯を見せサイドチェスト。
「動いた~~~~~~~~~~!!」
二人の悲鳴に全員の視線は銅像に。
それを待っていたかのように「ワッハッハ。」と大笑いする銅像。
豪快で太い笑い声がこの場にいる全ての者達に恐れと恐怖を植え付ける。
「さあ、全ての試練を突破した強者よ。よくぞここまで辿り着いた。さぁワシ―――大魔武王ジーノを倒しこの剣を手に入れて見せろ。」




