盗み聞き
それは本当に偶然だった。
ドナルドが踵を返し、再びジェイクの家へと足を向けたのは。
何故引き返したのか?それは本人自身もわかっていない。
ただ直感が、金に関する嗅覚がそうさせたのだ。
扉をノックしようとした時、中から大声が。
聞き取れなかったが、何かを察知したドナルドは壁に耳を立て、盗み聞き。
彼は幸運だった。
ガウルが耳を塞いで周囲の情報を遮断していた故、彼が盗み聞きしている事がバレなかったのである。
「とにかく、この地図の印の箇所には――――。」
「師匠の創った剣がある。」
(何だって?!)
可愛らしい少女の声とジェイクの声が彼の耳に届く。
洩れそうになった声を喉元で抑えつつ、忍び足でその場から立ち去る。
逸る気持ちを抑え、誰もいない場所で解放。
「ジイさんの師匠、Lスターが創った剣!!」
きゃははは、と高笑いに枝で羽を休めていた小鳥たちが驚いて一斉に飛び立つ。
「ジイさんめ、やはり隠していたのだな。」
なんとしてでも欲しい。
世界一と謳われたLスターが創った剣が。
「それを店に飾り、大々的に宣伝すればもっと儲かる!アイツ達を見返せる!」
ただ三男という理由だけで、能力が劣っている兄を優遇し、自分を勘当した家が自分に跪く光景が脳内に浮かぶ。
「絶対に手に入れてやる。絶対に・・・。」
禍々しい野望を内に秘めながらドナルドはその場から立ち去った。




