買い物デート
その日、ユーノはルシアとエリカを連れ立って街へ繰り出していた。
3人が向かっているのは家具屋。
添い遂げて以降、度々ユーノのベッドで寝ているのだが、3人で寝ると少し窮屈なのでこの際、買い換えようと思い立った次第。
幸いユーノの部屋に物が少ないので一周り大きくても余裕はある。
エリカの案内で訪れたのは値は張るが良質な家具が揃っている事で有名な家具屋。
「いらっしゃいませ。本日は如何なされましたか?」
清潔感溢れる従業服を着た男性に目的の物を伝える。
「大きなベッド、ですか?」
店員の視線がユーノから連れの美少女二人へ。
「(ちっ、リア充が。)かしこまりました。」
嫉妬の悪態を見せるがそれも一瞬。
すぐに営業スマイルへ戻り、奥へと案内。
「こちらが大型ベッドとなります。」
数多く並べられたベッド。
実際に触れて確認する。がここで問題が一つ。
どこでも寝れるユーノはベッドに対してのこだわりが無く、良し悪しがよくわからないのだ。
店員の説明を聞くも理解できず、適当に相槌を打つことしかできず。
ユーノは早々に匙を投げ、ルシアとエリカに判断を委ねることにした。
「ねえエリカちゃん、みてみてこのベッド。」
「凄っ、大きいし肌触りがいい。」
「だよね。それにすごくフカフカ。」
少し奥の方に置かれていた3人用のベッドに寝心地を試す二人。
「これにする?」
どれどれ、と値札を確認。
「これは中々な値段だね。」
「高級な素材をふんだんに使っておりますので。学生のお客様には少々厳しいかと。」
丁寧な口調であるが、意地悪げに口尻があがる。
ユーノを少し下に見ている感じだ。
「お買い上げで。」
二人の表情を見て即決。驚きを露わにする店員。
「お支払いは大丈夫ですか?」
「これでお願いします。」
店員に紙を要求。
そこにアルベルトの名前を記入。
実はユーノのかなりの資金を所持している。
これは義父ゲイツが大魔王デルタ達を倒した際に巨額な報酬を受け取っていたのだが、
「友人を殺して手にした金などいるか!!」と一切手につけず。
それならばユーノの将来の為にとアルベルトが管理していたのだ。
「わ、分かりました。」
ユーノから渡された紙の名前を見て驚く店員。
「お支払いが確認されましたら、自宅の方へお届けに参ります。」
「よろしくお願いします。」
「さてこの後どうする二人とも?」
無事に買い物が終わり、今後について尋ねる。
「このまま家に帰るのもいいけど、さ」
ユーノが差し出す手にルシアは満面の笑顔、そしてエリカは頬を赤く染めながら手を取る。
「じゃあこのままデートでもしようか。」
楽しい楽しいデートの始まり・・・・とはならなかった。
「よう、見つけたよ色男さん。今日も両手に花とは羨ましいなぁ~。」
皮肉を込めたセリフを向けてきたのは担任のGG。
「ちょっと話があるんだ、そこのお店まで来てもらっていいかい?」
「それで話とはなんですか?」
デートの邪魔をされて少し機嫌の悪いユーノは店員が運んできたアイスティーを喉を潤し手用件を尋ねる。
「先生が自ら進んで俺達に奢ってくれた事から考えると何かしらの頼み事でしょうか?」
「相変わらず鋭いな、お前は。」
くたびれた髪をくしゃくしゃかきむしり、突然頭を下げる。
「スマン。」
「何事ですか?!」
目を丸くする3人に向かって白状するGG.
「この前、行われた実習試験の事なのだが、補習を受けてほしいのだ。」
「えっと、それって野営訓練の事ですか?」
「あれ、でもそれって私達は免除だったはずですよ。」
エリカの言う通り、野営訓練が冒険者ランクの昇級試験日と重なり、免除された経緯がある。
「もしかして先生、俺達が行った申請を上に通すの忘れたのですか?」
「いやいや違うぞトライシア。俺はちゃんと申請して承認された。」
「じゃあ何で。」
「そ、それは・・・・・・・。」
とても言いにくそうで目の前にある飲み物を一気飲み。
申し訳なさそうに説明する。
今回行われた野営訓練だが、一組だけ失格になった。
それが勇者カリウスのグループ。
同グループだったリリシアが救難信号の魔法弾を打ち上げた事で失格となったそうだ。
「でもそれで何で私達が補習を?」
「実は学園長が・・・・。勇者に汚点などあったはならん、と言い出してな。成績を改ざんしたんだ。当日、参加していない組と成績を入れ替えてな。」
「なんですって!!」
エリカの怒りで店内の注目の的に。
「落ち着いてエリカ。ほら座って。で、それが俺達だった、と。」
「ああ。当日不参加だったのはお前達しかいなかったからな。」
「成程ね・・・。随分思い切った手を使いましたね。バレたらかなり拙いんじゃあないですか?」
「トライシアの言う通り、かなり拙い。いや、もうその状況になっている。」
GG曰く、ユーノ達の補習の事がすでにギルト長の耳に届いている、のこと。
免除の約束を反故した学園長に猛抗議。
援助の打ち切りまで話が縺れてしまったのだ。
「うちの学園は冒険者ギルドから魔物の討伐クエストや採取クエストなどいろいろ斡旋してくれていたからな。野外訓練の場所提供とかも全部冒険者ギルド持ちだったし。で、学園長はギルド長にお前達が監督となって勇者カリウスの組の実習を手伝ってもらう、てことで話は落ち着いたのさ。」
事の顛末を話し終えたGGはウェイトレスに飲み物のお代わりを要求。
話疲れた喉を潤す。
「という事だ。だから頼む、補習に出てくれ!」
両手を合わせて拝み倒すGG。
「どうする?」
ユーノの問いかけに真っ先に答えたのは今まで黙々とデザートを食べていたルシアだった。
「私、補習に出てもいいよ。」
「本当か!」
GGの表情に笑みが戻る。
「勇者の組ってリリシアちゃんがいるから。友達だし助けたいの。駄目かな?」
「ルシアがいいのなら私はどっちでも。」
「ちなみに先生。」
「何だねトライシア。」
「もし断ったらどうなるの?」
「多分だが、ギルド側から依頼としてお願いされるだろうな。」
「どっちみち受けざる負えないのね。」
エリカから諦めのため息が一つ。
「仕方がないね。貸し一つでいいですよ先生。」
「貸し?!おいトライシア、それはここの奢りで。」
「貸し一つ、ですよね。」
「はい・・・。」
ユーノの睨みに渋々頷くしかなかったGG。
「ふふ、これは大きい貸しを手に入れたかな。」
(もしかして俺は今、ヤバい約束をしてしまったのか・・・。)
悪魔な笑みを浮かべる生徒に後悔の念が脳裏に浮かぶGGであった。




