吸収
気がつくとそこはどんよりとした闇の空間にただ一人立ち尽くしていた。
一度も足を踏み入れた事がない場所であり見覚えのある場所にドルネロは勝ち誇った笑みを浮かべ、そして高笑い。
「やったぞ!我はユーノの身体に入り込んだぞ!」
誰もいない空間にドルネロの歓喜だけ響き渡る。
「後はコイツの魂を殺せばこの身体は我のモノ。どこだ?どこにいる?」
周囲を見渡すと少し先にぼんやりと灯る光が。
近づくと呆然と立ち尽くすユーノの魂がそこにはあった。
魂はユーノの身体を形しており、瞳も朧げでドルネロが目と鼻の先にいるのに全く反応なし。
「よしよし、我が侵入した事で強制的に意識を遮断させられているな。」
腕を刃物に変形させるドルネロ。
「さあこの魂を壊し、我のモノとなるのだ!!」
刃がユーノの魂を貫通。
光の粒となり散った。
「フハハハハハ、これで奴は死んだ。この身体は我のモノだ!!我は今最強となったのだ!」
歓喜の雄叫びに酔いしれるドルネロ。口元から涎が落ちる。
「さあ、後はルシアを体内に取り込めば、我に敵う者なし。エリカとガウルを片腕にして、そしてあらゆる人間をスケルトン化させて、この世界を征服してやる。」
今後の栄光への道に胸を膨らませるドルネロ。
「フフフ、エリカとルシアの肉の味は如何程か。楽しみだ・・・。」
恋する者の死に絶望しながら自分に取り込まれるエリカとルシアを想像し、越に浸るドルネロ。
自然と卑猥な笑い声が零れたその時、
―――クスクスクスクス―――
と小さな笑い声が混じっていることに気付いた。
「何だ?」
注意深く耳を澄ませる。
至る方向から聞こえる小馬鹿にした笑い声は二重奏、三重奏、四重奏とどんどん重なり増えていく。
「だ、誰だ?姿を見せろ!」
焦るドルネロ。
笑みは完全に消え、戸惑いと不安の色が徐々に濃くなっていく。
―――クスクスクス、クスクスクス―――
ゆらり、ゆらりと姿を見せるユーノの魂。
「バ、バカな。お前は今殺したはず。何でまだ生きている?」
今まで経験した事がない現象に焦り、振り払うようにユーノの魂を切り裂く。
が消えない。それどころか次々と増えていくユーノの魂。
不気味な笑い声と口元が吊り上げ嘲笑う顔に取り囲まれてドルネロは遂に発狂!
恐怖を振り払うように刃を振り回す。
「消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ。」
幾ら切り裂いてもユーノの魂は全く消えない。
ドルネロの攻撃が全く通用していないのだ。
数多に増えたユーノの魂はドルネロに迫り、藻掻くように手を伸ばし始める。
「消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ。」
腕を増やし振り払う。が効果はない。
迫る無数の手。
その一つがドルネロの顔を鷲掴みした瞬間、強烈な高熱を浴びせられて激痛にのたうち回る。
「はあ、はあ、はあ、はあ・・・。」
ようやく痛みが引き、同時に落ち着きを取り戻したドルネロはその時、周囲の光景が様変わりした事に気づく。
「ここはどこだ?」
心当たりが全くない真っ白な空間に佇むドルネロ。
その疑問に対しての答えが背後から聞こえた。
「ここはゲイ・ジャルグが創り出した空間。ワシ達は精神の間と呼んでいるぜ。」
「ジ、ジーノ!!!!な、何でオマエがここに?」
「ゲイ・ジャルグにはワシ達の魂の一部が埋め込まれている。謂わばここはワシ達の憩いの場だ。」
「お前さんはユーノの身体に潜り込んだのではない。ゲイ・ジャルグに取り込まれたのじゃよ。」
「ソプラノス!!」
「しかしまさかお前が生きていたとはなぁ~。完全に殺したと思っていたが。」
「ワタクシ達の落ち度ですな。後始末はちゃんとしないと。」
「そうだな。」
裏声の短い悲鳴を漏らすドルネロ。
「それにしても丁度良かった。実は幾つか新しい魔法を編み出して。実験台が欲しかったのじゃよ。」
「奇遇だな。ワシも新たな必殺技を考えていてな、練習台が欲しくて仕方がなかった所よ。」
「嫌だあああ~~~!!」
過去に受けてきた恐怖の数々が蘇り、脱兎の如くはその場から逃げ出すドルネロ。
しかし、目の前に突然現れた人物とぶつかった事でそれは未遂となる。
「よう、ドルネロ。どこに行く気だ?」
「デ、デ、デルタ!!!!」
悲鳴に似た叫び声が空間に響く。
「オレ様の名前を騙り、好き勝手してくれたらしいな。落とし前、つけさせてもらうぜ。」
デルタの圧に腰を抜かし、崩れ落ちるドルネロ。
そんな彼を囲う三大魔王は容赦なく言葉責め。
「もう逃げられないぜ。この空間から二度と出させねぇよ。」
「お前さんの命が消える最後の最後まで相手してもらいますからね。」
「覚悟しろ、ドルネロ!」
「あ・・・・・・ああ。」
返事ができないドルネロ。
これから待ち受ける地獄に心は完全に折られたのだ。
こうしてドルネロは誰にも知られる事なく、その身が粉々になるまで三大魔王の餌食となり、この世から消滅したのであった。




