修行開始
ついにヒナの修行が始まりました。憧れの魔法少女にまた一歩近づきます。どうぞお楽しみください。
12/13会話のシーンを一部変更しました。
私は目を閉じ精神を研ぎ澄ます。
「そうじゃ、ヒナ。己の中に気が巡っているのがわかるか?」
頭から体の中心を踵まで下がり、そこから足先を通り外側から上へ腕から指先へ行き、肩から首を通って再び頭に戻る。そういった気の循環を感じることができた。
「師匠、体の中心から外側へ巡る気を感じることができました。」
「よし、では次じゃ。ヒナよ。自分の外側にある気を感じる練習じゃ。深呼吸を繰り返し行え。」
『スーッ、ハーッ……』
「もう一度、鼻から吸って、口から吐く。」
『スーッ、ハーッ……』
「息を吸う時に、自分の周囲に散りばめられている清浄な空気を吸い込み、体の隅々まで浄化し、吐くときに自分の中の汚れたものを排出するイメージでもう一度。」
『スーッ、ハーッ……』
私は師匠に言われるがままにイメージしてみる。自分の周りにあるキレイに光り輝く粒を吸い込み、血管を通って指先、足先にまで行き渡らせ、そしてその時に出た汚れたものを吐き出す。すると何だか体が軽くなった気がした。
「うむ。要領は掴めたようじゃな。では今度は同じやり方で、周囲に散りばめられているマナを、口から吸い込むイメージをしながらやってみよ。マナ、というのは生命の力であり、魔力そのもの。マナを先程と同じく、体の隅々にまで行き渡るようにイメージをしてみよ。」
『スーッ、ハーッ……』
マナ……魔力か……。何となく緑色っぽいな……。(多分ゲームや漫画の絵の影響)私はマナを緑色に輝く粒とイメージし、さっきと同じ様にやってみる。
あ、何となくわかったかも……。体の内側に力が満たされるような、やる気が漲るような、そんな感覚。
「うむ、出来たな。先程も言ったが、マナとは生命の力、そして我々が日々使用する魔法の素じゃ。この世界の至る所にあるが、より多くあるのはやはり自然豊かな場所じゃの。人のあまり入っておらぬ場所の方が、よりマナが濃いようじゃ。」
「マナの濃い、薄いで魔法の威力は変わるものですか?」
「うむ、変わるな。濃い方がより強力なものとなる。だから森に住むエルフ達は魔法を使うのに長けた種だと言われておる。」
エルフ……なんだかファンタジーな名前が出てきた。テンション上がる〜。
「まさか、他にもドワーフとか妖精とかいるのですか?」
「おお、よく知っておるの。前の世界にもおったのか?」
「いえ。でも本では見たことがあります。」
私は横に首をブンブンと振る。漫画や小説をいちいち説明するのもめんどくさいので、一括りで本ということにする。あながち間違ってはいないだろう。
「そうか。ではいつか会えるといいのう。エルフは森の中で排他的な生活をしているから会うのは容易ではなかろうが、ドワーフは好奇心旺盛でな。色々な国と親交があるから何処かで会う機会もあろう。」
確かに実物をこの目で見ることなんて、向こうでは絶対にできなかっただろうから楽しみだ。
「よし、今日の訓練はここまでじゃ。この訓練を毎朝起きた時にするように。」
私は師匠に一礼する。
「ご指導ありがとうございました。」
「さぁ、訓練で腹も空いたじゃろう?昼の支度に取りかかろう。食べ終わったら今度は読み書きの勉強じゃ。文字を読めねば魔法学の勉強もままならぬからな。」
フムフム。それは私にとっても有り難いよね。文字の読み書きができるようになったら、沢山本が読める。そうしたら前勇者の事も知れるし、もしかしたらその中に師匠のちょっと恥ずかしい話も見つかるかも……ニヤリ。
『ゴツン』
師匠の鉄槌が私の頭に炸裂した。
「……ったあ……師匠、いきなり何するんですか!?」
「おぬし、今何か企んでおったじゃろう?悪い気が出ておったぞ!」
ギクッ。
「おぬしの考える事なぞお見通しじゃ。大方ワシの弱点でも探っておったな?」
「えっ!?何でわかったんですか!?」
『ゴッツン』
「う〜〜〜〜………。」
師匠にまたしてもゲンコツをくらい、頭を抱えてしゃがみ込んだ。さっきのよりも威力が増している気がする。
「何で?じゃないわ!全く、褒めると直ぐに調子に乗る!油断も隙もあったものではないわ!!」
私は頭を抱えたまま不貞腐れた態度を取る。
「ふむ、反省が足りないようじゃな。ちょうど体力作りもせねばならぬと思うておったところじゃ。明日から毎朝腹筋50回、腕立て伏せ50回追加じゃ。」
ヒェ〜ッ、ス……スパルタだ〜〜!!
「これに懲りたらイタズラなどは考えぬことじゃな。カッカッカッ!」
流石は沼地の老魔女、伊達に年はとってないということか。私の考えてることまでわかるとは……。
それから私は師匠と二人で昼食の支度に入った。と言ってもフランスパンの様な固めのパンまるまる一本に切り込みを入れ、それに色々な葉野菜を細かく切ったものと分厚い燻製肉、チーズの様なドロッととした液体とソースをかけて挟んだだけのもの。そして師匠が朝に仕込んでおいてくれたスープだ。
私はパンを口いっぱいに頬張る。燻製肉の肉肉しい食感に微かに感じる豊かな香り(これは燻製する時に何のチップを使ってるのかな?)。葉野菜のシャキシャキとした食感と、それに浸透するようにチーズとソースが絡んで……。
口に入っている物を飲み込んだ後、師匠の作ってくれたスープを飲む。スープはトマトベースで、中には色々な野菜をみじん切りにしたものと燻製肉をほぐして細かくしたものがトロットロになるまで煮込まれていて、これまたスプーンが止まらない。
私は中身が27歳ということも忘れて、ガツガツとそれらを口に運ぶ。
「どうじゃ、旨いじゃろ?」
私は声を出すのも忘れ、口をもぐもぐしながら、コクコクと、二回頷いた。
先程から師匠は満面の笑みだ。師匠はといえば、食べやすい大きさにカットされたものを上品に食べている。
これが大人の女性……。
まっ、私今5歳だからいっか〜。(でも今度テーブルマナーも教えてもらお……。)
ヒナは中身が27歳のハズですが、何だかとっても幼く感じますね。前世で甘えられなかった分を取り戻しているのでしょうか。まだまだお話は続きます。これからもよろしくお願いします。