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ヒナの宿命

ヒナが自分の過去を師匠に打ち明けるお話です。少しずつ世界の事がわかってきます。どうぞお楽しみください。


12/13会話のシーンを一部変更しました。

12/15会話のシーンを一部変更しました。

『コトッ……』


 師匠が魔法で温かいお茶を注いでくれる。私はテーブルの上に置かれたそれを、フーッと息を吹きかけ、冷ましながら少しずつ飲む。


「師匠、私、お話したいことがあるのですが……。」


 と言うのには少し勇気がいった。私のただならぬ空気を感じたのか、師匠は一つ頷く。


「わかった。今お茶を淹れるから少し待っておれ。」


 師匠はゆっくりとした声で答え、そして今に至る。


 私がお茶を飲み、少し落ち着くのを待って師匠から声をかけてきた。


「して、大事な話とは何じゃ?」


「……師匠にお話ししておかなくちゃいけない大事なことです。」


「ふむ……。では聞こうか。」


「私、本当はこの世界の人間じゃないんです。」


 師匠の右眉がピクリと動く。


「どういうことじゃ?」


「身体はこちらの世界のものなんですけど、中身、えっと……精神?魂?って言えばいいのかな。それが別の世界から来たんです。別の世界から生まれ変わってこの世界に来た、という方がわかりやすいかな。」


「ほう、ではヒナは異世界からやって来た『旅人』なのじゃな。」


「旅人……?」


「稀にな、そういったことがある。そうしてやって来た旅人は皆、何か大きな使命を持ってこの世界に産まれてくるのじゃ。」


「そっか………。」


「ヒナ、空に二つ月があるのは知っておるな?」


「赤く輝く月と青く輝く月の事ですか?」


 師匠は深く頷いた。


 この世界に来て物心ついた時に初めてあれを見た時は、あまりの神秘的な風景に目を奪われた。今では少し見慣れたけれど、それでもふとした拍子に空を見上げたくなる。


「そう。異世界人はあの天空の二つの月の重なる時に、そのどちらかの月から降りてくる、と伝えられておる。ちょうどヒナと出会った年にそういったことがあったな。」


 もしそれが事実なら、あの青い月は地球ということになるのかな?地球は青かったし……。でも、そうしたら赤い月って何だろう?それとも別の何かがあるのかな……?


「伝承によると、青い月から来る旅人は聖なる者で、この世界を救う使命を担っており、赤き月から来る旅人は邪悪なる者でこの世界を滅ぼす為にやって来る、となっておるな。」


 そこで私はこの世界に来る前に見たあの不思議な光景を思い出す。


「師匠、私こちらに来るときに幾つかの光景を見たんです。」


「ほう、どのようなものじゃ?」


「空に月が二つあるのと、二つの月が重なっているもの、抱き合う若い恋人、青い光が恋人の女性の腹に入るもの、赤い光が同じ女性の腹に入るもの、そして先程の恋人とは違う男女が崩壊した世界で闘っているもの。」


「ふむ……ではそれはこれから起こることの予兆なのやもしれぬな。二つの月が重なる時にヒナともう一人の宿命を背負った者が同じ女の腹から産まれる。いつかその二人は闘う運命にあるのだと……。」


 って言うことは、私はいつか世界の命運をかけて私の兄か弟と戦わなくっちゃいけないのか……。


「……私は……どちらなのでしょうか?」


「さてな……。だが、ワシはヒナに邪悪な心があるとは思えん。ヒナは賢く優しい子じゃ。」


 師匠の言葉に思わず私は気恥ずかしくって俯いてしまった。今まで生きてきた中でそんなふうに言ってもらったことなんて無かったから……。


 嬉しいんだけどちょっと恥ずかしいような、むず痒いような、そんな気持ち。


 誰かに信じてもらえるってこんなにも嬉しいものなんだね。


「ヒナよ。もしかしたらおぬしともう一人の運命がどういう道を辿るのかということは、まだ決まってはおらぬのかもしれぬ。これからのおぬしらの生き方によって、決まってくるのやもしれんな。」


 私達が……決める?この世界の行く末を……?


「まぁ、そう固くならずとも良い。おぬしがおぬしである限り、誤った選択はせぬであろうよ。ただ、おぬしらしくあれば良いのじゃ。」


 私が私らしく……か。


「世界を見よ。様々な人々と出会い、様々な感情を知れ。そして大いに学べ。自分の人生を自由に生きてみるが良い。」


 この私が……世界を見て回る……?


 前世でずっと一人、家に引き籠もってたこの私が……?


 師匠はまた優しく頭を撫でてくれる。


「そう怖れずとも良い。ワシが教えられるだけの知識をおぬしに授けてやるからな。」


 キラリ、と師匠の目が妖しく光った気がした。


 アレ?師匠の様子がさっきと違うんだけど……?


 うん。何だかとっても……嫌な予感がする…………。


「12歳になれば街にある冒険者ギルドに登録出来るようになる。それまでにワシの持つ全てをおぬしに叩き込んでやる。」


 …………デスヨネ〜。アレ?師匠ってこんなだったっけ?


 こうして翌日から世界の命運をかけた、師匠による熱血指導が始まった。


 …………ナニソレ。


 


 






いきなりの師匠の変貌とそれにドン引きするヒナ。次からは師匠の熱血指導が始まります。これからもよろしくお願いします。

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