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廃坑道

アイリ編の続きです。今回もよろしくお願いします。

 廃坑道の入り口は、木で作られた簡単な作りの扉で閉鎖されていた。取っ手部分は金属で出来ており、扉を施錠してあったであろう南京錠は壊され、地面に落ちていた。


 扉の周囲は雑草で埋もれ、また壊され捨てられた南京錠は土に半分埋もれていて、長い間この扉が使用されずに放置されてきたことを物語っている。


 過去に何者かが出入りしていた形跡はあるが、それが今では使われておらず、長らく放置されてきた、ということだろうか。


 中は真っ暗だ。当然と言えば当然だ。今や使われていない坑道に明かりを灯す者などいないのだから。


 しかしこう真っ暗では先へは進めない。私達が困っていると、アレス様がこっそり力を貸してくれた。


 アレス様は入り口付近に打ち捨てられたランタンを見つけると、中のロウソクに火の魔法で火を灯してくれた。


「ヒナは魔法使いなの?」


 と不思議そうにアイリが見つめてくる。


「うん。ちょっとだけね。皆にはナイショにしてね。」


「そう、わかったわ。ヒナも大変ね。」


 アイリは心底同情してくれているようだ。こんな少女にまで同情されるって、この世界の魔法使いはどんだけ地位が低いの!?


 ランタンがあるといってもやはり坑道内は暗く、足下に気をつけながら進む。もしかしたら侵入者を排除する罠も仕掛けられているかもしれない。


 物理的な物なら大丈夫でも、魔法で設置してある罠は霊体のみの私達にも何かしらの効果があるかもしれない。私達は注意深く周囲を確認しながら坑道の奥へと進んだ。


 坑道の内部はかなり入り組んでいた。右へ進んでは突き当って戻り、今度は違う道を進んで階段を下り、左へ進んではまた突き当り。そうやって迷いながら、私達は最下層の一番奥と思われる部屋の扉の前に立った。


 その扉だけは何故か鉄製の頑丈な扉で、南京錠の他にも幾重にも鎖と有刺鉄線でガチガチに封印され、魔法による封印も施されていた。


それはつまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ということだ。


 一体、ここで何があったというのだろう?


「アイリちゃん、扉が封印されてるけどどうしよう?」


「……でも、それでも進まなくちゃ。この先にパパとママがいる。そんな気がするの。」


 私は心の中でアレス様に尋ねてみた。


『アレス様、この封印と鍵、解くことはできますか?』


『もちろんだ。だが……。』


『……きっと()()()()()んですよね?()()を私は倒せますか?』


『倒すことは出来るだろう。しかし()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。』


 私はゴクリ、と唾を飲んだ。ああ、嫌な予感ほど的中するんだな。でも、このままでいるわけにもいかない。このままでは結局、アイリが永遠にこの世界を彷徨うという結末しかない。


「アイリ……、この先にはとても辛い真実があるかもしれない。それでも、進む?」


 アイリは俯き暫く考えた。そして顔を上げ、扉を少しの間見つめた後、コクリと一つ頷いた。


「進むわ。」


 アイリの言葉を聞き、私も覚悟を決めた。


「わかった。付き合うよ。」


 ニッ、と私はアイリに笑いかける。それを見たアイリもまた、ニッと笑い返した。


『アレス様、お願いします。』


『わかった。俺も傍にいるが十分気をつけろよ。』


『ハイ、ありがとうございます。』


 アレス様は私の身体を使い、まず鎖と有刺鉄線を魔法で切り裂いた。そして扉を封印している魔法陣に手をかざす。


 先ずは赤い魔法陣が浮かび上がり炎となって消え、次は青い魔法陣、水となり消え、次は緑の魔法陣、風となり消え、最後に茶色の魔法陣、砂となって消えた。


『これは高位魔法、高等魔術と言われるものだな。これを施した魔術師はなかなかの腕前と見た。』


『魔法と魔術は違うんですか?』


『一般に魔法は魔法そのもの、魔術は魔法を用いて術を施したものを呼ぶな。』


 ふむふむ、良いことを聞いた。師匠にまた色々と教えてもらおう。


 って今はそんな事を考えてる場合じゃない。先ずは生きて帰ることを考えなくちゃ。


『カチャ……ギィ…………。』


『さあ、扉が開いたぞ。』


『はい、ありがとうございます。』


『ヒナ。』


『はい?』


『死ぬなよ。』


『……はい。』


 後ろで様子を見ていたアイリが近寄って来る。


「凄い。ヒナちゃんって凄いんだね。」


「えっ、そう?エヘヘ、ありがとう。」


 正確には私じゃなくてアレス様なんだけど、説明もできないから私は適当にはぐらかしておいた。


 アイリがゆっくりと扉を開ける。


 中からヒンヤリとした空気と共に、ドライアイスが溶けたような白いモヤが、中から流れ出てきた。


 アイリも私も一瞬足が竦む。けど、


「行こう!」


 とアイリが言った。


「うん!」


 と私は答える。


 何があっても絶対に生きて師匠達の下へ帰るんだ。


 私は心の中で強く誓った。




 


 

 


 


 



色々と匂わせながら次回へ続きます。

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