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いつもの風景

ヒナが目覚めた後のお話です。よろしくお願いします。

 あれから私は、もう2週間眠り続けていたらしい。


 らしい、というのは、その間、一度も目が覚めた(意識が覚醒した)事が無かったから。


 本当にずっと眠り続けていたらしい。


 私が意識を失って合計約一ヶ月か……。


 いやいや、流石にちょっと寝すぎだろう私!と自分で自分にツッコミを入れてしまった。


 自分でも何で起きられたのかはわからないんだけど、その日はいつもの日常の様にパッと目が開いたんだよね。


 起きた時には周囲には誰もいなくて、窓の外から陽の光が柔らかく差し込んでた。確か昼頃だったと思う。


 その後、直ぐにスイが入ってきて、スイが大きな声で鳴いて、それに気づいた師匠が来てくれた。


 スイが私に抱きついて大泣きしてくれて、師匠も私の頭を優しく撫でてくれた。


「おはよう。」


 って言ってくれた師匠の目に涙が溜まってたのに気付いた時には私も泣いちゃった。


 前世で私が死んだ時に望んだ温かい家族を手に入れたんだって思ったら感動しちゃったんだよね。


 ひとしきり泣いて落ち着いたら、師匠が温かくて甘いミルク入りのお茶を入れてくれた。例えるとミルクティーみたいなものかな。


 スイは私の膝の上でスヤスヤと眠っている。ずっと私の傍を離れずにいてくれてたんだって。私はスイの体を優しく撫でる。


「師匠、私を助けて拾って育ててくれてありがとう。」


 私はようやく素直に師匠にお礼を言えた。


「何を言ってるんじゃ。ワシの方こそヒナが来てくれてありがとうじゃよ。」


「これからもよろしくお願いします。」


 私は深々とお辞儀をした。


「こちらこそよろしくの。」


 師匠と私は二人で笑いあった。


「あ、そういえばエンシル師匠はどうされてますか?」


「ああ、エンシル殿は今王都へ行っておる。」


「王都へ?」


「ヒナが意識を失う直前、『もう一人の旅人は昔の弟』だと言っておったからな。もう一人の旅人であるソウタの事を調べて貰っておるのじゃ。」


「それって危険なんじゃ……。」


 私のせいでエンシル師匠が危ない目に合うのは辛い。


「昔のエンシル殿が育てた弟子が王宮で働いているらしくての、ちょっと話を聞くだけだから心配は要らぬよ。」


 私はホッとして肩を撫で下ろす。 


「してヒナ、何があったのか教えて貰えるか?」


「……はい。」


 私はソウタの名前を聞いた時、暁緋那としての記憶が完全に戻った事、一週間後一時的に意識は起きたが体を動かすことができなかった事、エルファーレ様からの接触があった事、それ以降は何の記憶もない等を師匠に簡単に説明した。


「フムム……。なるほどのう……。しかしエルファーレ様を妨害する何か……とは何であろうの?」


 師匠は首を傾げた。


「エルファーレ様……って女神様ですよね?神様を妨害出来るとしたら同じ神様しかいない気もしますけど……。」


「……となるとアレス様かセレス様、という事になるかの……。」


「う〜ん……。というか、こちらの神様って実際に人々に接触したり、恩恵を授けてくれたりするんですね。ちょっと不思議です。」


「ほう?ヒナのいた世界では神様はいなかったのかの?」


「いや、いました。でも……なんて言うのかな。存在している、というよりは象徴?心の拠り所?皆の心の中にいると言えばいいのかな……。説明が難しいな。」


 私もそこまで神様の事を勉強してたわけじゃないから、どう説明したら良いのか悩んだ。


「なるほど。実際に存在して恩恵を下さるわけではなく、神を信仰する人々の心の中に存在し見守って下さる、ということかな?」


「あ、はい。そんな感じです。中には恩恵を授かったとか、見たという人もいるみたいですが、それはかなり少数ですね。」


「こちらの神は、おぬしも知っての通りエルファーレ様、セレス様、アレス様の三柱じゃな。この三柱の神は我らの住むこの星がエルファーレ様、天の二つの月がアレス様、セレス様じゃ。だから存在しているとも言えるし、違うとも言えるの。」


「違う?実際に恩恵をくれたり、接触してきたりするのに?」


「これらの星々は神そのもの、というよりは神が創り、創った神がそれぞれ守護している。だから神が星そのものという事ではない。神は別世界にいて、そこからこちら側に干渉している、と言ったほうがわかりやすいかの。」


「ああ、なるほど、納得しました。こちらの世界はその干渉が強いんですね。」


「そういうことになるかの。フム、ということは先程のヒナの話に戻すと、『エルファーレ様のこちら側への干渉を妨害している何かがある』ということになるのじゃな。」


「例えば『人間又は他の種族が神の干渉を妨害する』ということは可能なのですか?失われた古代魔法にそういったものがあったりしますか?」


「フム、古代魔法については謎が多い。魔法に精通するエルフ族にしても、恐らく全ては理解しておらぬだろうな。だからどちらとも言えぬ。」


「有るかもしれないし、無いかもしれない。」


「そういう事じゃ。それにしてもヒナ。」


「はい?」


「おぬし身体は幼児なのに、やはり魂が成熟していると、幼児と話しているとは思えぬの。おぬしが旅人と知らねばおぬしを天童と崇めておるところじゃ。カッカッカ。」


「〜〜〜〜〜〜〜っ!」


 私はカーッと頬を赤らめた。そんな事を言われたのは向こうでもこちらでも初めてだ。


「ほう?おぬし、本当に褒められることが苦手と見える。」


 ズバリ言われて私は何も言い返せない。前世の私は貶されたり見下された事はあっても、褒めてもらったことなんて殆ど無かった。だから褒められるとどう返していいのか困ってしまう。


「カッカッカ。いつものいたずらっ子の勢いはどうした。おぬし意外と真面目なのじゃな。」


 くそう……。ぐうの音も出ない。と膝の上で眠ってるスイを見ると……。


「あああぁぁ〜〜っ!!」


 スイがまたしても私の服をヨダレで濡らしていた。


 もう踏んだり蹴ったりだ〜〜!!


「カッカッカ!それでこそヒナじゃな。」


 私は、私を心配して寝不足だったスイに気を遣い、そっとスイを椅子の上に置く。


 その後、泣きながらスイのヨダレまみれになった服を洗うのだった。







やっと日常に戻りました。辛いことがあるから、日々の平和が尊いものだって気付けるのでしょうかね?これからもどうぞよろしくお願いします。

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