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あの丘の墓場で

作者: omom

2021年 8月18日 深夜 

ここ涼見すずみ市の涼見中学校の夏休みが終わろうとしてた。僕はそのとき、

涼見ヶ丘霊園の知らない人の縦に長い墓石の前に居た。そこには黒く「三浦家之墓」と彫られている。その墓石の前で僕は息を吸った。深く、深く、深く…そして限界がくる。吐く。決心がついた。涼見ヶ丘霊園はとても急な坂があり、軽自動車で登るのすらキツイ。しかし頂上まで行くととても綺麗な景色と花壇がある。早朝に来ると老人がベンチに座りながら本を読んだり、ボーっとしたり、急に立ち上がり太極拳(?)のようなことをする人も居る。もっとも、こんな遅くには誰も居ないだろうが。幼稚園の頃におばあちゃんと散歩に行きここで景色を見た。急な坂道を歩いてヘトヘトになったのは今も忘れない。途中に山へと続く車ではいけないほど狭く荒れた道があったような気がするが、おばあちゃんと僕はそのまま頂上へ行った。そこには当時の僕にはわからない美しい景色があった。JASCOのピンク色の看板にヤマダ電機の黄色かった頃の建物。そして綺麗なマツの木。色々あった気がする。頂上は高いから僕の身長くらいの柵が設けてあった。あの頃は楽しかった。

ーなんでこんなことになったんだろうー

目が潤んだ。そして僕は墓石ギュッと抱きしめた。夏だというのにひんやりしてた。そして頭を振り上げ墓石の右角に思いっきり額を打ちつけた。泣きながら、発狂しながら、目を瞑りながら。墓石には血が流れ砂利へと染みていった。それでも打ち続けた。頭が割れるほど、穴があくほど打った。疲れた。血で目が染みる。急に背中が凍った。ドライアイスをつけられたようだ。気配に気づいた。後ろを見た。誰かいた。声が出た、

「あうぁうあうえあ?」

まともに喋られなかった。怖いし、痛いし、無視するし、だけどそれでも好きだった。そんな人がいたからだ。そして限界がきた。そこに居たのは誰だろうか。せめて最後に言いたかった。「僕の背中は見ないでください」と。


2021年 8月19日 深夜

涼見市 涼見ヶ丘霊園で3名の死体が見つかる。一人は身元不明の女性で高台の柵を乗り越え自殺。もう二人は墓石の前で共に倒れていた。一人は中学一年生の佐藤大基(13)とその元父親の三浦一基(49)となっている。二人は墓石の前でつかみ合いになり元父が息子の額を墓石の角に何度も何度も打ち続けた後、背中の皮膚を剥ぎ取り、元父は自ら除草剤を飲んで自殺したとされている。また、母親の佐藤大海(48)も行方不明となっており、身元不明の死体が母親ではないかということで捜査が進んでいる。近所の住民によると、

「父は数年前に別居していた。別居し始めてから毎日泣き声と怒鳴り声が朝から夜まで続いていた。」と話していたという。

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