孫一の部屋。
いやああああああああ!
この速度だと2000文字前後更新になってしまいますね(;´∀`)
章管理入れてみます。
ドアにカードキーを通し、開ける。
そして直ぐ横にあるホルダーへカードキーを入れると、分かりやすく部屋の電気が付いた。
いや、部屋の電気じゃなくて、廊下の。
廊下の?
とりあえず、廊下のその壁面に設置された大きな鏡を見て、久々に俺自身を確認する。
薄手の黒いコート、青に近い紺のブレザーに白い縁取りの襟、グレーのズボン。今回は白いシャツに少し暗めの槐色のネクタイ。そして相変わらず、鏡を見ているが実はそこに映っていない、前髪に隠れた俺の目。
とりあえず生きてる、ってことでいいんだろうな。
物の怪だの化物だの幽霊だのは、鏡に映らないもんだって、ヴェトナム時代の家庭教師、バダベックが言ってたっけな。
さて、落ち着こう、俺。
俺にあてがわれた部屋は、不相応なほどに豪華な部屋らしく、廊下からリビング、シャワー室やらなにかがあって、そしてベッドルームという構成だった。
って家だろ、これ。家だ、家。
これはこれで逆に落ち着かない。安全を確保する経路と確認すべき場所が多すぎる。
まさか自分が泊まる部屋に、こんなにも死角が多い場所があるとは、考えたことがなかったわ。
何度も言うが、今回俺は交換留学生という形で、ミッションインポッシブルをこなせという役回りだ。
その俺が泊まる部屋の安全確認というのは、いささか面倒な気がするが、仕方がない。
時間は夜の23時を周るところだが、背に腹は代えられない訳だ。
てか、もう、これ、癖だよな。
人間、命の危険に晒されると、能力が開花する。
これは冗談じゃなくて、ジンクスの話でもなくて、マジな話だ。
聴力、嗅覚力、視力が上がる。味覚力と皮膚感覚についても上がるらしいが、これについては明確な実感がないので俺の経験では話せない。
単純に、死に掛けると、死なないように頑張ろうとするだけの話と言えば元も子もないんだが!
まぁ、ホントそんな感じで、普段聞こえなかった音が聞こえたり、知らない匂いに敏感になったり、見えなかった物というか今まで目の端に入っても気にならなかった細かな動きが気になるようになった。
だから、こんな風に、大きな飾り時計が音を立てて動いている時、特に、何かを隠そうとするために置いてあるものだろうと勘ぐってしまう。
何時もの俺なら外してぶっ壊す所だが、どう見ても高そうなので我慢した。
飾ってある古本の間、棚の上、引き出しの奥、クローゼットの中、シャワールーム、トイレ、キッチン…ってキッチンもあるのか、と、一式調べつくす。
ホントなら、コンセントの中も調べたいところだったが、一式見回して我慢した。
外した跡も見当たらないし、いい加減疲れて来た。
実際あったところで、俺が独り言だの電話だのしなきゃいい話だし。
カメラさえなきゃもう何でもいい。
ようやく俺は、制服を脱ぐ。
ハンガーにかけてブラッシング。
勿論、日本から持参した豚毛のブラシで。
後はシャワーを浴びる時にでも、軽く湿気を当ててから風通しの良いところにでも吊るしておくか。
これも完全に俺の癖。
制服を大事にしろという雑賀家の教えであり、中学のあの時の教えでもあり。
制服は、自分の身分証明というだけではなく、ぶっちゃけ「鎧」だと。
組織に準ずる犬の証、何て、ひねた言い方もあるが、何より、その機能性の高さがあることが大事、という教えだ。
世間的には気持ちのスイッチという役割は勿論だし、学校の制服についてはそのまま想い出になるとか言うが、俺はこれで命を救われたことがある。
それもある意味「ジンクス」なのかもなぁ。
そういや、大姉ちゃんも言ってたな。
「孫一、お前に彼女が出来ても、絶対に裸エプロンはやらせるなよ。殺すぞ。」
と。
ダイちゃんとショーちゃん、大姉と小姉。
雑賀家に婿入りした父方の従姉妹。
俺より歳が6つ程上なお陰で、様々な悪影響と教訓を頂いている姉みたいな存在だ。
小姉ちゃんが補足してくれたが、要は、薄着で台所仕事をすれば分かるが、人間が如何にして服に守られているかという話だった。
実際海外で、タンクトップにトランクス一丁でチャーハンを作ったが、火傷した上、跳ねた油にビビッて危なく全部床にぶちまけかけた。
その経験もあり、俺は必ず、長袖エプロンで料理をすることにしている。
何の話だったっけな。
ってことで俺は、Tシャツとトランクス一丁になり、一日の締めとなるシャワーを浴びに向かった。
時計は24時を告げようとしていた。
ダイちゃんとショウちゃんは激スパルタ従姉妹。
ドSで攻め攻めのダイちゃんと、ドSだけどどちらかと言うと穴を掘って準備して相手が自然と落ちるのを待つショウちゃんです。