救出
お待たせしてしまい申し訳ありません。リアルの方が忙しくて中々描く暇がありませんでした。なかなか書きたいことが書けず、時間をかけてしまいますがそれでも良ければお楽しみください。
「アイツらは……いないな……? 」
周りを見て先程の化け物がいないことを確認し、その場に座り込んだ。
「クソ……こうなるんだったらもっと運動しておけば良かった……」
化け物を少女から引き離した後、2体の化け物から逃げた俺は近くにあった洞窟に隠れたのだった。
日頃から運動をしてこなかったこともあり、少し走っただけで息切れしてしまっている。
あれから何回もセーレの力を使えるか試してみたが他の場所に転移するどころか物も転移出来ないでいる。
「って言うかなんで力が使えないんだよ! 契約しても力が使えなくちゃ意味ないだろうが! 」
いつまで経ってもセーレの力が使えないことに苛立ちつい叫んでしまう。
その時何かが近づいてくる音が聞こえ、慌てて近くの岩に身を隠す。
「コエガキコエタゾ! ドコニイル! 」
(やっちまった……。場所がバレてしまった。しかもさっきの2匹とは別のヤツだ……。)
岩に隠れながら声の主を確認すると先程の2体の化け物とは異なる姿で狼のようで体のあちこちに目がある化け物がそこにいた。しかし、洞窟の暗闇に目が慣れていないのか足取りがフラフラしている。
化け物が俺が隠れている岩へと近づいてくる。心臓が激しく音を立て、身体から汗が吹き出る。それでも頭だけは冷静にする。
(ここは狭いし、さっきの2体が戻ってきて囲まれたら終わりだ。ここは隙をついて逃げよう。)
そう考えて俺はその場にあった小石を拾うと自分より遠くの場所は投げた。
「ソコカ!! 」
石が地面に落ちる音が聞こえた瞬間、化け物は音のした方へ走っていった。俺はすぐに洞窟の外へと走り出した。
(作戦成功! 思った通りに引っかかってくれたな!
このまま気付かないでいてくれると嬉しいけど……)
だが俺の願いは届かず、地面を蹴る音を聞いた化け物は俺を追いかけてくる。
(もうバレたのかよ! 急いでこの洞窟から出ないと! )
全力疾走で洞窟の入り口へと向かって行く、入り口に進むにつれて強くなる光に目を覆ってしまうがそれも気にせずに化け物から逃げる。すぐ後ろを見ると化け物がすぐ近くに迫って来ていた。
(早すぎる! これじゃあ囮作戦の意味が無いじゃないか! さっきの2匹よりも足が早い個体なのか!? )
そう思いつつも走り続け洞窟の外まで走り抜けた。
(やった……! )
ーーーーそう思った瞬間、何かが俺の肩に刺さった。
「……え? 」
突然の感覚に驚く。構わず走ろうとするが身体が言うことを聞かずそのまま地面に倒れてしまう。肩を見るとが巨大な針が突き刺さっていた。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
あまりの激痛に悲鳴をあげる。肩に巨大な針が突き刺さっているため少しでも身体を動かそうとすると激痛が襲ってくる。
「ヒッカカッタ! ヒッカカッタ! 」
顔を上げ、声のする方へ向くと先程の2体の化け物が出てくる。その瞬間俺は理解した。"誘い込まれた"のだと。
(クソ……! 待ち伏せされてたのか……! )
俺を追いかけていた狼が俺をここまで誘導し、イカと蝿の2体は洞窟から出てくる俺に向けて口から針を飛ばし動きを止める。
完璧な作戦だった。さっきまで少女を巡って争っていたことが嘘のように連携ができていた。
「サァ!! コロシテヤルヨ!! 」
そういうとイカの化け物は乱暴に肩に刺さっている針を握るとそれを深く突き刺した。
「がぁぁぁぁぁ! 」
再びの激痛に悲鳴をあげる。肩の深くに突き刺さった針は肩を貫通していた。貫通している箇所から針をつたい大量の血が流れ出る。更に化け物は足に針を刺した。俺は痛みで立ち上がれなくなる。
(こんな所で死ねないのに……! 俺はまだやるべき事があるのに……! )
だが最早どうすることもできない。ただここで化け物に痛ぶられ食べられる。化け物は口から針を一本出すと俺の頭をめがけて腕を振り下ろした。
次の激痛に備え、目を閉じる。
…………。
…………………。
…………………………。
だがいつまで経っても衝撃が来ない。不思議に思い、閉じた目を開ける。
俺が目にした光景は頭を何かで撃ち抜かれ死んでいるイカの化け物と何処かを見つめる2匹の化け物の姿だった。
化け物の視線の先には左手を突き出す先程の少女がいた。
「その人から……。離れて!! 」
少女はそう叫ぶと左手を蝿の化け物に向ける。少女の左手は光ったと思った次の瞬間、少女の前に槍が一本現れ、その槍は蝿の化け物を目掛けて飛んでいった。
「グギャ!!」
少女から放たれた槍は蝿の化け物の身体を貫通し、化け物の後ろの木に刺さるとしばらく経ってから粒子となり消えて行った。
身体を穿たれた化け物はひっくり返って地面に落ちると絶命した。
「どうして? なんで? 」
ポツリとこぼした疑問に少女ははっきりと答えた。
「あなたは私を助けてくれた。だから私もあなたを助けなきゃいけないと思った。」
そう言うと少女はこちらに来て、怪我の手当てをし始める。少女はすぐに俺の服を脱がすと肩と足に包帯を巻き始める。
「怖かったね。もう大丈夫だよ。」
少女はそう言うと俺の頭を撫でる。
「ありがとう……。ありがとう……。」
気付けば涙を流していた。ここに連れてこられて、化け物に襲われて、セーレの力も使えないままで殺されると思っていた。
でも彼女に助けられた。そのおかげで今も生きている。
「そうだ! 名前言い忘れてた! 俺は型月敏 よろしくね」
俺は彼女に名前を言ってなかったことを思い出し、涙を服で拭きながら彼女に名乗る。
「私はルイン。さっきは助けてくれてありがとう。型月さん。」
ルイン……? 何処かで聞いたような名前だが思い出せない。
「早速で悪いんだけどここって何処か分かる? 」
ルインがこの場所について知っていればここから脱出出来ると思い、ルインに尋ねる。
「ここは迷いの森だよ。型月さんは人間? だよね?どうしてここに来たの? 」
ルインは包帯を巻きながら答える。
「それがわからないんだ。気付いたらここにいて。帰り方も分かんなくて困ってるんだ。」
「そうなんだ……。早く帰れるといいね……。
はい! 終わったよ! 」
怪我をした部分を見ると包帯がしっかりと巻かれていた。
「ありがとう」
ルインに肩を貸して貰いながらも立ち上がるとまだ傷は痛むがさっきよりは痛まなくなった。
「ひとまずここから逃げよう。また新しい奴が来るかも知れない」
「うん。わかった。それならこのまま真っ直ぐに行けば私達の村があるから行こうか」
ーー瞬間、後ろの草むらからルインに影が襲いかかった。
「ーーっ!! 危ない!! 」
「ーーきゃあ!! 」
慌てて俺はルインを反対側に突き飛ばした。突然の事にルインは驚き倒れた。
「ルイン! 敵だ! 」
怪我をしている足を使わず何とか立ち上がる。
「敵は一体だけだ! 数の有利を利用して叩こう! 」
「うん! 」
俺とルインは戦闘態勢を取る。
「俺がアイツと戦う。ルインは俺のサポートをしてくれるか? 」
「うん。分かった。……型月さん、これを使って」
ルインは先程の力を使い、銀色の剣を取り出した。
俺はルインから差し出された剣を受け取り化け物に向かって行った。