日常
どうも伊ノ獅子です。僕の作品を読んでいただきありがとうございます。まだまだ未熟な部分はありますがこれからも応援していただければ嬉しいです。
「ッあああああ〜〜〜〜終わった〜〜」
ゲームの脚本の文字を全て入力し終わり、俺は伸びをした。
「お? 終わった感じ〜? お疲れ〜」
目の前の髪を肩まで伸ばしたロングヘアーの薄い栗色の髪の毛の小説がコーヒーをこちらに差し出しながら話しかけてくる。彼女の名前は廣瀬佳澄 俺の同僚であり、高校生からの親友だ。
「あ〜 疲れた〜 今回は徹夜しないって決めて
たのに結局徹夜しちゃったな〜」
俺はそう呟いた。
「しょうがないんじゃない? 作業量で言えばあんたが1番多いんだし。」
差し出されたコーヒーを受け取り俺はこれまでのことを振り返った。
俺が勤めているゲーム会社、スキュアは今月発売する予定のゲーム、「アナザーエデン」を制作した。
アナザーエデンはゲーム会社で働いている主人公がゲーム世界に転生し、悪魔を使役するもの同士の戦いに巻き込まれる。主人公はなんとかしえ仲間を説得しゲーム世界からの脱出を測るというストーリーだ。
このゲームは長編ゲームでさらに主人公達が元の世界に戻れるトゥルーエンドだけでなく悲劇の結末を迎えるバッドエンドを作らなければならないこともあり1人1人違う所を手分けして行なっていたのだが、俺が担当していた所は複雑な動作が多く打ち込むセリフ量も多かった、さらに追い込みをかけるようにバグが発生したこともあり俺は徹夜をしてしまったのだ。
回想をやめ作業が終わったことを俺の上司である 九条楓さんに報告しに行く。
外に出て廊下を渡り「九条」という看板がぶら下がっているドアをノックする。
しばらくして「はい、どうぞ」という声を聞き俺は「失礼します。」と言って九条さんの部屋にはいった。
「九条さん、担当してた所終わりました。他にもなにか作業はありますか? 」
「もうみなさんが終わらせてくれたので追加の作業はありませんよ。」
「若月さんももうすぐで終わると思うので私達は先にパーティーの準備をしましょうか。」
九条さんはそう言って立ち上がるとボブカットのショートヘアーを揺らしながらパーティーの会場作りへと向かった。
ちなみに、九条さんは身長が150cmという小柄な体格だ。九条さんと話す時は必然的に下を向いて話さなければならないのだがその時に大きな胸に目がいってしまうのは内緒。あと、いたずら好きでこの前、会社で睡眠をとっていたら耳に息を吹きかけられた。
俺も慌てて九条さんの後を追うとパーティー会場にはすでにスキュアの社員がいた。
「おっ、敏くんも終わったみたいだね〜バグがあるって聞いた時はヒヤッとしたけど無事に間に合ったみたいでよかったよ。」
そう言って話しかけてきたのは上司の長原宗谷さんだ。長原さんはサイドはツーブロックにしていてトップはオールバッグというダンディーな男性で俺の上司だ。
「長原さんや九条さん、柊木さんが手伝ってくれたおかげです。本当にありがとうございました。」
九条さんや長原さん、柊木さんが手伝ってくれなかったら絶対に俺は発売日まで間に合わなかっただろう。俺は長原さんに感謝し頭を下げる。
「まぁ、バグが起きたって聞いたしね〜。それに部下の手助けをするのは上司として当然のことだからね〜」
「ところでこのパーティってなんのパーティーですか? ゲーム制作記念ですか? 」
長原さんはパーティー好きで、ちょっとしたイベントがあるとすぐにパーティーを開こうとするのだが大体は九条さんに断られている。
1番ビックリしたのはひな祭りのパーティーの時に社員全員分の着物を買おうとしてた時は慌てて皆んなで止めた。
でも今日は何かのイベントというわけでもない。考えてもわからないのでパーティーの主催者である長原さんに直接聞いた。
「あれ? 忘れちゃった? 敏くんたちは今日で入社1年目でしょ? だからそれを兼ねてのパーティーなんだけど。」
と長原さんはキョトンとした顔で言ってきた。
そういえばそうだな最近忙しくてすっかり忘れていたが今日で入社1年目だったな。
「まぁ、最近忙しかったから仕方ないね。それじゃあ僕は楓さんを手伝ってくるからまた後でね。」
と言って九条さんの元にいった。長原さんは九条さんのことが好きで1日に何度も告白しているらしいのだがその度に適当にあしらわれている。
何回も言うからなのでは……?とは言ってはいけない。どんなことがあっても挫けないのが長原さんの魅力だから。
俺が次に見たのは長原さんが真っ白になっている姿だった。今回もまた振られたのか……。
真っ白になっている長原さんは放って置いて会場作りをしていると大きなダンボールを持ちフラフラ歩く金髪のポニーテールの女性が歩いてくる。
「柊木さん、重そうですね。良ければ手伝いますよ。」
「大丈夫よ、このくらい1人で持っていけるから」
そう言う彼女の名前は柊木ルリナ、名前から分かるとおもうがハーフで、英語と日本語どちらもできる。ゲーム説明会で海外に行く時は、大抵ルリナさんが俺らが言いたいことを翻訳し、しゃべってくれる。そのことから、スキュアの翻訳機と言うあだ名がつけられている。
彼女はまた、ダンボールを持ち直し運ぼうとしたが手が滑りダンボールを空中で離してしまった。そしてそのダンボールは狙い済ましたかのように俺の足めがけて落ちてきた。
アッ……終わった。
「ギャアアアアア!!!! 」
「ご、ごめんなさい‼︎‼︎ 」
柊木さんは俺に謝る。
「今すぐ氷持ってくるから待ってなさい‼︎ 」
柊木さんは慌てて氷を取りにを取りに行こうとするが自分が落としたダンボールに躓く。
「危ない‼︎ 」
俺は慌てて柊木さんを慌てて支える。結果として柊木さんは俺がクッションになったお陰で転ばすに済んだ
パシャパシャパシャパシャ……!!
シャッター音が響く。シャッター音のする方を見るとついさっき仕事を終わらせた若月健がカメラをこっちに向け写真を撮っていた
「まってぇぇぇぇ!! 誤解だからぁぁぁ! 」
「なにが誤解なんだ? 俺はた上司にセクハラする同僚の写真を撮っただけだぞ? 」
健の言葉を疑問に思い、下を見ると俺は柊木さんを抱きしめていた。
「これは犯罪だろ。警察に突き出すから大人しくしろ。」
「わざとじゃないんだってば‼︎ 柊木さんを助けようとしたら偶然こうなっただけなんだってば‼︎」
「柊木さんもなんか言ってくださいよ‼︎‼︎
………柊木さん……?」
よく見ると柊木さんは赤くなって震えていた。
あっ……これ終わった。
「いいからとっとと離せ‼︎‼︎」
柊木さんはそう言うと俺の顔をめがけてストレートパンチを打ってきた。俺は抱きしめたままだったことを後悔しながら柊木さんのパンチで沈んだ。
この後、柊木さんが何が起こったかを説明したため警察に突き出されずに済みました。
「「「型月、若月(くん(さん)、廣瀬((さん) )
入社1年目おめでとう‼︎‼︎ 」」」
その掛け声と共にパーティーはスタートした。パーティーでは九条さんに揶揄われたり、長原さんの愚痴を聞いたり、柊木さんに謝られたり、廣瀬に冷たい視線を向けられたり、色々あった。
パーティーが終わった後俺は健と帰っていた。
「俺ら入社してからもう1年たったのか……。
あっという間だったな〜」
「そうだな。1年前はすごく大変だったな。」
健はそう言って夜空を眺める。
「1年前はお互い新人だったのにどこで差がついたんだろな〜」
健はスキュア1番のゲームクリエイターになっていてアナザーエデンでは俺よりもっと複雑な動作と多くの文字を打ち込む場面を担当していた。
さらに健の方もバグがあったのだが健はそれを1人でなおした。そんな健の姿を見て俺は劣等感を感じる
「別にまだ1年目なんだから差があるかどうかなんて分からないんじゃないか? 」
「それに……。お前が言ったんじゃないか。どんなことがあっても親友でいるって。忘れたのか?」
健のその言葉を聞き、俺は笑いながら健に言う。
「そうだね……。俺、健に出会えて本当によかった。」
「お前、本当に大丈夫か……?柊木さんのパンチがまだ響いてんのか?」
「なんでそうなるの!? 俺がいい事言うのそんなに珍しい!? 」
「珍しいっていうか、気持ち悪いな。」
俺のツッコミを聞いた後、しばらくして健は口を開いた。
「まぁ、俺もこれからもお前の親友でいたいと思うよ。」
俺らは笑いながらそれぞれの家へと帰った。
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いつまでこの日々が続くのだろう……。
たまに昔を思い出す。毎日起きて父に殴られ、ご飯を食べて、長袖の服を着て虐待の跡を隠して、バイトに行って父の酒代を稼いで、バイト先から持ってきた冷めた弁当をそのまま食べて、父が連れてきた女の声にひたすら聞こえないフリをする。あの時はただ与えられた事をこなすだけの機械になっていた
でもスキュアのみんなとの日々は俺の毎日を変えてくれた。生きる意味や楽しみ、人の温もりを教えてくれた。
だからこそ、俺はこの世界の真実を皆んなに言うわけにはいかない。この世界の真実を……。彼らが真実を知ればこの日々は消えてしまうから。俺は彼らを守らなければいけない、この世界の悲劇から。俺は皆んなを護れるなら俺の命が無くなったっていい。
だが、今の俺には皆んなを護る力がない。力がなくてはこれから起こる悲劇からみんなを守れない。
力が欲しい……。この世界の悲劇に立ち向かえる力が……。力を手に入るのなら俺はなんだってしてやる……!
「見つけた……。私のマスター。」
どこかからそんな声が聞こえた。
ご愛読ありがとうございます。次回から物語が動き出します。楽しみにしていただけると嬉しいです。
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