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ダンジョン日和!ー最強のダンジョンに至るまでー  作者: 波風 多子
引越日和!ー新天地でのダンジョン経営ー
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攻略日和!ーダンジョン攻略の始まり也ー

約二週間、大変長らくお待たせしました。代わりといっちゃあなんですが少し長めです。



いやーー!やっとスタピラーに視点が帰ってきましたね。


見ないうちにスタピラーのダンジョンはどんな進化を遂げているのか?


次回で明かされます!

 「全軍前進!」


 大音声をあげて軍を前に進める。

 門を越え、平原を少し越えたところにある、丘の上の砦。

 昔は魔物の進行が激しく、待ちを守る上での最重要拠点だったらしいが、今では荒廃が進んで植物の蔓や破損が放置されるままになっていた。

本来はなかった地下への階段がダンジョンへの入り口ということだろう。

 塔の中には不死の魔物が徘徊しており、近づき難くなっている。

 魔物自体の実力も低くなく、新規のダンジョンにしては骨が折れそうだ。

 

 予定より早く着いたので、ダンジョン前に拠点を構え、街までひとつ馬を走らせる。

 伝達用の人員も限られている。兵の数も多いわけではないので、早急に攻略を進めなければな。


 「あーー、アイツ貧乏クジだぜ。新人だからしょうがねぇがついてねーな」


 「馬鹿お前、領主直々の攻略命令だぜ?ついてたのは案外アイツかもだぜ?」


 そう、兵士達の言う通りである。

 領主直々の攻略命令だ。我々が全滅することもあり得なくはないかもしれない。

 それに少しばかりこの辺りに来たとき嫌な予感がしたのだ。

 気のせいとは思えない。

 決めていた先駆隊の人員を増やすか?

 いや、しかしそうなると作戦時間が長くなり、物資がつきてしまうし、無理に変えると兵士の士気にも影響しそうだ。


 「良し、カターナ。オマーリア。準備はいいか?」

 

 カターナとオマーリア。この軍においての最年長であり、俺の親友でもある二人。

 彼らの実力は折り紙つきだ。

 二人は胸を張って答えた。


 「あぁ、問題ないぜ」


 「同様に問題ありません。あと、カターナ。上官に対する言葉遣いではありません、訂正なさい」


 「へーへー。問題ございませんぜ」


 二人のやり取りを聞いてより、安心する。

 緊張はあらゆる失敗の元だ。

 彼らに任せておけば問題はない……はずなのだがやはり違和感がぬぐえない。


 ハメられ、利用されている気がしてならない。

 何よりそんな計画に俺の親友が死んでしまうかもしれないのは非常に腹立たしい。

 このまま行かせてはダメだ、絶対に。

 

 「先駆隊を増やそうと思うんだが、誰か候補はいるか?」

 

 そう聞くとカターナが呆れ半分、不満半分と言った顔で抗議する。


 「増やすぅ?お前、心配しすぎじゃねぇの?」

 

 「こら!」


 「いや、いいオマーリア。そう言われるのはもっともだ。しかしこう、嫌な予感がする時に気のせいと片付けるときっと碌な事にならない。増やすべきだ」


 「お前がそういうなら良いけどよ」


 まだ不満がありそうだが、一応は納得してくれたようなので話を続けようとする。

 が、予想外の人物に声をかけられた。


 「あの……私がついていきます!」


 「……まあ妥当なとこだろ」

  

 「……ですね」


 新人のマクレーピットである。しかし高い実力を持ち、何時もどこか自信無さげだ。

 ただ実力は本当に高い。

 足を引っ張る結果にもならないだろうし彼がついていけば大丈夫だろう。

 利用されてる気配は未だ拭えないが、安心はできる。

 こいつらにいかせよう。


 「よし、決まりだ。何分で準備できる?」


 「はい!もう準備してあります!」


 あまりにも準備がよすぎるマクレーが何か企んでるのではないかと疑ってしまう。


 「随分と準備がいいんだな」


 「騎士たるものいつでも準備を怠りませんので」


 しかしマクレーの純粋な目に、疑うのは無粋だ。

 信頼して任せてみよう。


 「よし、では他の兵士は装備を整えて塔部分を制圧せよ。ダンジョンの入り口より先に通すなよ」


 「「は!!」」


 三人の準備ができたようだ。


 「いいか、絶対に死ぬなよ。約束だ」


 「おいおい、俺を誰だと思ってんだ?このカターナ様が帰ってこなかった事があったかい?」


 「確かに無いな」


 俺が返すと、それに続くように他の二人も声をあげた。


 「私もありませんよ!」


 「私もないです!」


 俺を安心させようとしてか、笑顔で応じる三人に勇気をもらった俺は、つい頬が緩んでしまった。

 任務中だというのに情けない限りだ。


 「全員無事、攻略を終えて帰ってこい。報酬は上手い酒だ!」


 「「「おお!!」」」

 

 歓喜の声をあげた三人は、意気揚々とダンジョンの中へと続く階段を降りていく。

 そして三人を送り出した俺は、他の者達に忙しなく指示を出し始めた。






 ○○○


 まずい。ひっじょーーーーにまずい。


 「想定外過ぎる……」


 ダンジョンの前に到着した騎士団を見て俺は意図せず声をあげていた。

 正確には予想しないではなかった。

 ダンジョン製作の場面を見られた時点でこうなる可能性は十分にあったし、心にも留めておいた筈だ。

 が。



 「頭ぶち抜かれて生き残ってしかも位置報告まで済ませてるとか誰が予測できるよ!?」

 

 「ま、まぁまぁ。まだ拠点を構えただけだ。対策できる時間は……少しはある」


 「少しって時間単位じゃなくて分単位だろ……?」


 メイトの慰めで少しはやる気が回復したが……あまりにも都合が悪い。

 せめて実力の低い奴だけが攻略に来るとか、全員で来て兵糧切れとか……。


 「ふむ、少数精鋭で攻め込むようね。数は三人。実力も中々よ~」


 「ゴミカス糞がァァァァァァァアアアアアアア!!」

 

 あまりの状況に叫ぶ俺。

 そんな俺にかけられた言葉が……


 「おう、荒ぶっておるな」


 「荒ぶってらっしゃいますね」


 これである。

 なんでこの精霊とメイトとダンジョンマスターはこんなにも冷静なんだ!

 ほとんど俺のダンジョンの系譜のモンスターじゃないもんな!

 精霊も消滅したところで復活できるもんな!

 ドグは……?そういえばこの緊急時にドグの声が聞こえない。


 「おい、ドグは何処に?」



 「新ダンジョンの1階層で眠ってます」

 「ドグーーーーーーーーー!!!!」


 新ダンジョンの最下層、地下三階層に、俺の叫びが木霊した。

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