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ダンジョン日和!ー最強のダンジョンに至るまでー  作者: 波風 多子
引越日和!ー新天地でのダンジョン経営ー
46/54

暗殺日和!ー暗殺者と領主ー

投稿遅れて申し訳(あとがきに続く)

 湧き立つ恐怖心に抗って走り続けていると、いつの間にか街についていた。


 町についた安心感で立ち止まり、額に手をやる。


 「はぁ、ハァ。汗がひどいな…ん?」


 汗ではない?少し滑り毛のある手触りに違和感を覚える。痛みはないようなのでやはり汗……!?


 「血!?」


 人がいるにも関わらず大声を出してしまった。頭から血を流し、よくもまあ生きてここまでたどりつけたな。いやそんな事はどうでもいい。事態を認識した瞬間、やるべき事が分かり、すっと頭が冴えた。


 「隊長に…報告」


 そう考えると同時、走り出して、隊長のいる執務室へと向かう。城の中!


 門番に止められかけたが、押しのけて走る。意識が途切れる前に早く報告を……ッ!


 「うお!どうした大丈夫か?サリー」


 誰かにぶつかった。この声は聞き覚えのある…


 「隊…ちょ………う。ほうこくが…」


 「いや……報告ってお前。いいか、喋るな。ついてこい」


すぐに報告せねばと反論を試みる。


 「しかし、」


 「いいから」


 しかし、反論許さずつれられたのは執務室。


 「お前、鏡見てみろ。頭…。」


 「ヒッ!」


 そこには頭の抉れた自分がいた。右頭の表面の骨が削られ、若干肉が見えていた。その瞬間、とんでもない痛みが私を襲った。


 「いいか、今回復薬を持ってこさせてる。絶対安静だ。報告は後で聞く。いいか、これは命令だ」


 そう言って私をソファーに寝かせ、包帯で応急手当をしたあと、隊長は自らの椅子に座った。緊張した顔で座る彼の目には、明らかに疲れが浮かんでいた。


 「痛く…ないのか?あ、いや答えんでいい。痛くないはずが無いよな」


 「なんとも…な…いです」


 力を振り絞ってこたえる。


 「んな訳あるか。もう質問しないから静かにしてろ」


 隊長に言われたものの、もしも何かがあったら誰が報告する?そう思って私は手記を取り出す。


 「これ……」


 「ん?」


 そう言って私の手記を受け取る。報告が書いてある手記を。もしもの為に書いておいたのだが役に立って良かった。


 「これは…!?」


 一瞬驚いた顔をした隊長だったが、すぐにそれを真剣なものへと変える。


 「ありがとう。お前を絶対に死なせないからな。ついでに空席だった副隊長にはお前が入れ。いいか、だから死ぬな」


 コンコン。部屋の扉が叩かれる。


 「来たか」


 部屋に入ってきた一人から隊長は回復薬を受け取り、私の肌にかける。わずかに痛みが和らいでゆくのを感じた。


 「ふぅ…。何とかなったな。……っと、まだしゃべるな。回復薬も万能じゃないんだ」


 鏡を見ると、少し皮膚がはがれた自分の顔が見える。少しだけ治ったせいか、肌の爛れがさっきよりも目立って、痛々しいというより不気味だ。


 「で、ダンジョンの作られる現場を見たということだな。あーそうだなぁ…肯定なら指を開いて、否定なら指を閉じてくれ。」


 いわれた通り指を開く。


 「メンバーは女二人メイト一体男一人であってるか?」


 そのまま指を開く。


 「塔が急に廃れていってなぜか中には不死者がいたと。なるほど?俺は専門家じゃないからわからんがかなり厄介な問題だな。俺の私兵…いや領兵を率いても片を付けられるかどうか」


 「……」


 「意地を張っても仕方ないな。癪だが取り敢えずお前はマルニィ……いや、領主様と魔術師団長に報告に行ってくれ」


 体調が部屋に入ってきた女に指示を出す。


 私もなにかできることを……


 「お前は寝てろ。」


 「しかし…眠る訳には…。」


 しかし使命を果たしたという安堵からか、どんどん眠気は強くなり…私に抗うすべはなく、意識を落としていった。






 ○○○


 「領主様と団長ね。」


 私は歩いて領主のもとへと報告をしにいっていた。それにしてもダンジョンの秘密。あの女相当の情報を持ち帰ったわね。相当な褒美を与えられるハズだわ。例えば副団長の地位とか…… ?




 妙な気配を感じるわね。後ろに誰か居……


 「うッ!?」


 「あんタを領主に合わせる訳にゃ行かねンだヨ」


 「すまねぇぇけどぉぉ死んでくんなぁぁい」


 特徴的な喋り方をする二人の男。撃たれたのは吹き矢吹き矢……毒は催眠系のものだろう。しかし吹き矢で私を撃退とは。


 「舐められたものね!」


 腰につけていた短剣で、振り向き様に一人の皮膚にかすり傷をつける。


 「およ?まだ寝テねーの?」


 「とっととぉぉ死ねぇぇ」


 なめた態度を取る暗殺者たちだが、勿論私のナイフは普通のナイフではない。猛毒が塗ってある特別製だ。加えて吹き矢程度の微毒など、私を殺すに至らない。今なお毒が回ってない時点でこれは明白だろう。勝ちだ。


 もう一人の訛った喋り方の方が近接で、間延びした声のやつが吹き矢とかの中距離型。訛り野郎はすぐに戦闘不能になるはずだから、残りはとろい奴。勝てるぞ。しかも、なぜだかどんどん力が湧いてくる。


 「まさか毒が効いてルなんてオもってないよナ?」


 「毒ぅぅ?兄ちゃん死ぬのぉぉ?アッハッハッハ!」


 「死なねーヨ。馬鹿」


 自分の底から力が湧き出て強くなっていくのを感じる。あのバカにしてくる奴らを殺さねば!マズはこのナイフで切りつけッ!?


 「死ねぇぇ。兄ちゃんのばーかぁ」 


 「ンだと?」


 目の前で無防備な姿を晒されてるのに脚が一歩も動かない。毒?いや効いている筈は……


 「毒っていうのもサ、いろいロあるわケよ」


 「!?」


 「こいツが飲ませたのは正確には毒じゃない。麻薬さ。ずいぶん気持ちいいだロ?自分に酔った感じがして」


 「な!?」


 驚き声をあげる。希望(ゆめ)を見せられていたということか?


 「普通ならモうとっくに夢の世界で僕らが死んでる()()なんだけどね。毒に耐性があって良かっタ()ね!」


 「そうだな」


 「!?」


 諦めかけてた私の耳に、聞き覚えのある声。……これは領主?顔をあげると確かに領主の顔だ。これも幻?


 「領主様!?」


 「へ!標的本人のオ出ましか!」


 「いやっほいぉ!領主もぉぉ殺…ウゲ!?」


 「ノット!?くそ、逃げルか……すまンノット。置いテくゾ」


 なぜ領主がここに?何故こんなに暗殺者を圧倒している?


 「報告役は君か。良く時間を稼いだな。早く私の部屋に来なさい。」


 私の意識は朦朧としていき、領主に担がれたところで…遂に意識を手放した。


ナイジェリア。

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