暗殺日和!ー暗殺者と領主ー
投稿遅れて申し訳(あとがきに続く)
湧き立つ恐怖心に抗って走り続けていると、いつの間にか街についていた。
町についた安心感で立ち止まり、額に手をやる。
「はぁ、ハァ。汗がひどいな…ん?」
汗ではない?少し滑り毛のある手触りに違和感を覚える。痛みはないようなのでやはり汗……!?
「血!?」
人がいるにも関わらず大声を出してしまった。頭から血を流し、よくもまあ生きてここまでたどりつけたな。いやそんな事はどうでもいい。事態を認識した瞬間、やるべき事が分かり、すっと頭が冴えた。
「隊長に…報告」
そう考えると同時、走り出して、隊長のいる執務室へと向かう。城の中!
門番に止められかけたが、押しのけて走る。意識が途切れる前に早く報告を……ッ!
「うお!どうした大丈夫か?サリー」
誰かにぶつかった。この声は聞き覚えのある…
「隊…ちょ………う。ほうこくが…」
「いや……報告ってお前。いいか、喋るな。ついてこい」
すぐに報告せねばと反論を試みる。
「しかし、」
「いいから」
しかし、反論許さずつれられたのは執務室。
「お前、鏡見てみろ。頭…。」
「ヒッ!」
そこには頭の抉れた自分がいた。右頭の表面の骨が削られ、若干肉が見えていた。その瞬間、とんでもない痛みが私を襲った。
「いいか、今回復薬を持ってこさせてる。絶対安静だ。報告は後で聞く。いいか、これは命令だ」
そう言って私をソファーに寝かせ、包帯で応急手当をしたあと、隊長は自らの椅子に座った。緊張した顔で座る彼の目には、明らかに疲れが浮かんでいた。
「痛く…ないのか?あ、いや答えんでいい。痛くないはずが無いよな」
「なんとも…な…いです」
力を振り絞ってこたえる。
「んな訳あるか。もう質問しないから静かにしてろ」
隊長に言われたものの、もしも何かがあったら誰が報告する?そう思って私は手記を取り出す。
「これ……」
「ん?」
そう言って私の手記を受け取る。報告が書いてある手記を。もしもの為に書いておいたのだが役に立って良かった。
「これは…!?」
一瞬驚いた顔をした隊長だったが、すぐにそれを真剣なものへと変える。
「ありがとう。お前を絶対に死なせないからな。ついでに空席だった副隊長にはお前が入れ。いいか、だから死ぬな」
コンコン。部屋の扉が叩かれる。
「来たか」
部屋に入ってきた一人から隊長は回復薬を受け取り、私の肌にかける。わずかに痛みが和らいでゆくのを感じた。
「ふぅ…。何とかなったな。……っと、まだしゃべるな。回復薬も万能じゃないんだ」
鏡を見ると、少し皮膚がはがれた自分の顔が見える。少しだけ治ったせいか、肌の爛れがさっきよりも目立って、痛々しいというより不気味だ。
「で、ダンジョンの作られる現場を見たということだな。あーそうだなぁ…肯定なら指を開いて、否定なら指を閉じてくれ。」
いわれた通り指を開く。
「メンバーは女二人メイト一体男一人であってるか?」
そのまま指を開く。
「塔が急に廃れていってなぜか中には不死者がいたと。なるほど?俺は専門家じゃないからわからんがかなり厄介な問題だな。俺の私兵…いや領兵を率いても片を付けられるかどうか」
「……」
「意地を張っても仕方ないな。癪だが取り敢えずお前はマルニィ……いや、領主様と魔術師団長に報告に行ってくれ」
体調が部屋に入ってきた女に指示を出す。
私もなにかできることを……
「お前は寝てろ。」
「しかし…眠る訳には…。」
しかし使命を果たしたという安堵からか、どんどん眠気は強くなり…私に抗うすべはなく、意識を落としていった。
○○○
「領主様と団長ね。」
私は歩いて領主のもとへと報告をしにいっていた。それにしてもダンジョンの秘密。あの女相当の情報を持ち帰ったわね。相当な褒美を与えられるハズだわ。例えば副団長の地位とか…… ?
妙な気配を感じるわね。後ろに誰か居……
「うッ!?」
「あんタを領主に合わせる訳にゃ行かねンだヨ」
「すまねぇぇけどぉぉ死んでくんなぁぁい」
特徴的な喋り方をする二人の男。撃たれたのは吹き矢吹き矢……毒は催眠系のものだろう。しかし吹き矢で私を撃退とは。
「舐められたものね!」
腰につけていた短剣で、振り向き様に一人の皮膚にかすり傷をつける。
「およ?まだ寝テねーの?」
「とっととぉぉ死ねぇぇ」
なめた態度を取る暗殺者たちだが、勿論私のナイフは普通のナイフではない。猛毒が塗ってある特別製だ。加えて吹き矢程度の微毒など、私を殺すに至らない。今なお毒が回ってない時点でこれは明白だろう。勝ちだ。
もう一人の訛った喋り方の方が近接で、間延びした声のやつが吹き矢とかの中距離型。訛り野郎はすぐに戦闘不能になるはずだから、残りはとろい奴。勝てるぞ。しかも、なぜだかどんどん力が湧いてくる。
「まさか毒が効いてルなんてオもってないよナ?」
「毒ぅぅ?兄ちゃん死ぬのぉぉ?アッハッハッハ!」
「死なねーヨ。馬鹿」
自分の底から力が湧き出て強くなっていくのを感じる。あのバカにしてくる奴らを殺さねば!マズはこのナイフで切りつけッ!?
「死ねぇぇ。兄ちゃんのばーかぁ」
「ンだと?」
目の前で無防備な姿を晒されてるのに脚が一歩も動かない。毒?いや効いている筈は……
「毒っていうのもサ、いろいロあるわケよ」
「!?」
「こいツが飲ませたのは正確には毒じゃない。麻薬さ。ずいぶん気持ちいいだロ?自分に酔った感じがして」
「な!?」
驚き声をあげる。希望を見せられていたということか?
「普通ならモうとっくに夢の世界で僕らが死んでるハズなんだけどね。毒に耐性があって良かっタ?ね!」
「そうだな」
「!?」
諦めかけてた私の耳に、聞き覚えのある声。……これは領主?顔をあげると確かに領主の顔だ。これも幻?
「領主様!?」
「へ!標的本人のオ出ましか!」
「いやっほいぉ!領主もぉぉ殺…ウゲ!?」
「ノット!?くそ、逃げルか……すまンノット。置いテくゾ」
なぜ領主がここに?何故こんなに暗殺者を圧倒している?
「報告役は君か。良く時間を稼いだな。早く私の部屋に来なさい。」
私の意識は朦朧としていき、領主に担がれたところで…遂に意識を手放した。
ナイジェリア。




