開門日和!ー準備が終わり、門開くー
メイト改めベルトが……やっぱりメイトのほうが馴染みがあっていいな。心の中では引き続きメイトって呼ぼう。うん。ばれたらまた後で謝ろう。それがいい。
おっと、話が逸れた。メイトの準備が終わったそうなので、早速クレセイノに転移門の詠唱をしてもらっている。ダンジョン前の浜辺に転移させてもらえるらしい。ただ、人がいるかも知れないので夜中に移動しようという事になった。
前だったら見たやつを殺せばいいってなっただろうからなぁ。あの戦いの後、俺は変わった。あいつの人格が俺の中にあるような変な気分だ。ただ、快か不快で言えばとはいえ見られてしまったらどうせ殺す事になってしまうからそこは祈るしかないな。どうか人、来ませんように。
森ではみんなが最終確認を取っている。クレセイノと精霊さんは荷物ないけど…まあいいとして、ドグはあのがらくたの山の鉄くずに担がれてる。…そしてそのがらくたをメイトの部下に担がせてる。メイトが困ったような顔で俺を見ているが無視だ無視。どうかと思うって?俺もそう思う、気にするな。
しかしダンジョンマスターは夜目が利くなんて初耳だったな。確かに暗さとかで困ったことあんまりなかったかも。しかも今回は面子が面子だものな。狼に死霊、精霊にダンジョンマスター。夜目が利くやつらばかりだ。そういえば猫もいたな……。どんどん夜型になってる気がするぞ、うちのダンジョン。
ともかくだ。向こうでダンジョン作った後に即不死系の魔物を溢れさせ、ダンジョンができるまでの間なんとか繋ぐ……ってまてよ?これ、精霊さんも使えれば楽じゃね?
「精霊さん。あなた水の精霊……例えばウンディーネみたいなのを生み出したりできます?」
「できませんが」
できないのかー。意外とできると思ったんだが駄目だったか。
「私に精霊を作る権能など御座いません。ただ呼び寄せることは可能です」
「なるほど」
やっぱり上位の精霊だとそういうことができるんだな。重畳重畳。っとそう言えばこの人の種族名なんだろな。鑑定でもいいけど一応。
「ところで、貴方の種族名は何です?」
「そのような物はございません。私は精霊であり、個体です。ですが敢えて名付けるとすれば水の踊り子と言ったところでしょうか。」
この精霊は完全に新しいな特殊個体だと言うわけだ。というか今気付いたが魔物が人間や俺達が勝手に呼んでる名前を知らなくても不思議じゃないよな。
「そもそもダンジョンマスターだって命を作ってる訳ではなく何処かから持ってきているのですよ。」
なんだ、じゃあ魔物創造という名前は嘘じゃないか。騙されてた……。ま、別段関係ないから良いけども。
「しかし精霊ってなんなんだ?」
素朴な疑問を口にした俺に、答えたのはドグだった。
「あっ、はいはい!私知ってる〜!せいれいっていうのはしょくじをとらないちょうこうみつどかつたじゅうせいをあわせもつとくしゅせいめいたいなんだー。」
「何言ってるか悔しいがわからない。」
「簡単に言いますと、体積に対してすごく重くって同種同士で重なることができる特殊な性質を持つ生き物っていうか生命ってことです。」
うーん。ドグは精神年齢が低いが賢くはあるんだよなぁ。天才系っていうか何ていうか。何をいってるのか分からないけど。
「よし、話を戻そう。メイトが先ず場所を決めた時点で不死の軍勢を作成、可及的速やかにダンジョンの入り口を作る。これはDPで買ったやつをそいつらが調整する形だな。」
「了解だ。」
頼もしく頷くメイト。今回の外出は夜なので、存分に……いや街でも活躍したんだけどそれ以上に活躍してくれることだろう。
「そしてちょっと周りを掘ったり木を切ったりと目立つようにするのが仕事だ。次にドグ。」
「はーい。」
手をあげて返事をするドグ。
「周囲の警戒だ攻撃されそうになったら即排除しろ。最後に……」
俺はロルトマートさんの方を向く。
「最後にロルトマートさん」
「ロルトとお呼びください。言葉づかいも普通で構いません」
確かにダンジョン産のモンスターに敬語使うのも可笑しな話だよな。
「じゃあロルト、ロルトはダンジョンに精霊を低難易度と見做される程度の精霊を呼んで、仮設的なダンジョンモンスターをはなってくれ。」
「分かりました」
恭しく礼をするロルト。
「じゃあ夜も更けてきた。行くぞ、」
「はい。」
「うむ。」
「うん。」
「もういいのね?行くわよ!」
頼もしい返事を横に、禍々しい気配が渦巻く。これが転移門か。人里で使うと即バレしそうだな。黒い渦は次第に勢いを増し、渦同士がぶつかり破裂し、不規則に入り乱れる。
だがその混沌に急に終わりが訪れる。
『転移門』
クレセイノが詠唱を終えると、渦が霧散し、そこにはクレセイノと木々の意匠が施された大きな門が堂々と建っていた。
ただ、意匠に少しだけ問題が。クレセイノの部分、全裸なんですけど。




