引越日和!ー拠点を移し、再始動ー
人里編は前回でおしまい。
これからは新地編になります。
「お帰りなさ…なんでそんな沈んだ顔してんの?」
「……引越します。」
「「「え?」」」
急な俺の宣言に戸惑う一同。まあ、そうっすよね。そうなりますよね。
「え?で、結局なんでそんなに泣きそうな顔になってるん…」
「します。」
質問してくるクレセイノを有無を言わさぬ口調で黙らせる。
「それはいいのだが…なぜ急にそんなことに?」
「うん。それなんだけど大きく二つの理由がある。一つはケバビーっていうかあそこの都市にいられなくなった。」
「うん。でもそれだとりゆうがうすくなーい?ダンジョンはまちのなかにあるわけじゃないし」
ドグがまともなことを言っている…明日は雨かもしれない。
「…やっぱりあつかいがおかしいきが……」
「2つめの理由はこのダンジョンでまったくもってDPが稼げなくなったことだ」
「なるほど、最もだな。」
体を鍛えたり魔法を使ったりしてDPを確保する努力はするものの、やはりDPのたまり具合が少ない。DPとはダンジョン、つまり俺の力そのものとも言えるので、ないと困る。ていうかDPがあまりにも少ないと俺のダンジョンの系統が悪影響をうける。その最たるものがおれだ。
すると、生きるために、一種の自己防衛策としてDPは絶対に必要だ。そもそも活動には力が必要だし、力はDPなのだから、体を維持するためにもDPを貯める必要がある。
そこで新しいダンジョンを作ってそこの難易度を死なず、しかし簡単すぎない…程度になんとか調整、定期的に人が入るように…何ならダンジョンを街の近くに置く、なんてこともしてみたい。
という理由から引っ越しをする。ただ水晶はここにおいとくほうが安全だからこっちに放置。危なくなったらワープで回収しつつ逃げる。
「それはもういいわ。ところでどこに引っ越すの?」
「ふふふふふ。よくぞ聞いてくれました。」
だんだんいつもの雰囲気に戻ってきた俺に、少しだけ場の空気が軽くなる。
「クレセイノはペルティ公国から来たんだろ?」
「うん、まぁ。」
「んで、3つあるうち1つのダンジョンを経由してきたと。」
「うん、まぁそうなるわね。」
「ダンジョン移動機能を使ってお前のダンジョンに行けないか?」
「なるほど?そういう事ね」
「っとこで頼めるか?」
「別にそのくらいならいいわよ。じゃあ早速行きましょうか?」
「い、いやまだ流石にいかんぞ。もうちょっと準備を整えないと。俺の考えてる3つの条件は、行きやすい死にづらい見つかりやすい、だ。」
「それは…たしかに重要ね。」
「俺のとこはたまたまペルシャが通ってたからすぐ発見されたが、普通あんなとこすぐに見つからないわけだし」
「と、いうことで、お前らは引っ越しの準備をしておけ、引っ越し作業中の主要滞在組はブロ、アヴァロンだ。アヴァロンにはお前が伝えといて。」
「了解いたしました。」
「んで、ついてくのが、メイトとドグ、あとは…そのくらいかな。」
「お待ちください。」
聞いたことがない声がかかる。誰かと思って振り返ると、そこには深い蒼の着物を着た美しい女性が佇んでいた。
「えっと?誰ですか?」
「私の名は…ありませんが、水精霊の主でございます。」
「は、はぁ。そんな方がどうして俺のところに?」
「あなたが生み出されたのですよ?私はあそこのウンディーネ達の中のまあ、異常個体みたいなもんです。」
随分と適当だなぁ。
「私をお連れくださいませ。足手まといにはならない筈です。」
ダンジョン産のモンスター亜種かぁ、強いのかな?
「あんたんとこのダンジョン、ヴェルウルフと言いウンディーネといい、異常個体の楽園ね…。」
そうなのかな?他のやつのダンジョンを見たことないから分からんのだがなぁ。
「まぁ、いいんじゃない?ダンジョン産ならあんたに敵対しないでしょう」
ま、そうだな。邪魔になるようなら返せばいいし。
「じゃあこれで異論はないな?」
「あぁ。」
「うん!」
「は。」
なさそうだな。
しかし、向こうでは、どんなダンジョン生活が待ってるんだろう。




