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ダンジョン日和!ー最強のダンジョンに至るまでー  作者: 波風 多子
第3章 人里日和!ー騒動の始まりー
35/54

戦闘日和!ー始まった戦闘と覚醒ー

あけおめです!


戦闘シーンをうまくかける技術がないので多めにささっと書きました。


えーっと、投稿が遅れた理由…ま、それについてはおいおいね、具体的には来年のお正月ぐらいに語りましょうかね。(逃げ)

 ぶつかりあった棍棒と長剣がとんでもなく不快な音を立て、離れる。猛然と打ち合いを続ける彼らの周りには最早ものというものは存在し得なかった。


 周りで見ていたゴブリンも、すぐに避難して安全な場所から覗くに留まっている。彼らの回りに何も残らないのは風圧のみによるものではない。

 

 例えば彼らが全力で武器を振るうと、たとえ部屋の反対側に居たとしても反対側の壁が壊れる。この現象には難しい説明など必要ない。彼らの武器に込められた魔力の残滓が宙を舞い、その残滓が飛んだ先の壁を壊している。


 これは布団を振り上げるとホコリが出るのと同じようなものなのだが、そのホコリが当たっただけで壁を破壊する。そんな離れ業を可能にする彼らの力量は素人が見ても流石二つ名持ち、高位魔物だけあると感心するだろう。……素人が魔力の動きを観測できるかは定かでないが。


 「ふっ!はっ!」


 長期戦を想定した一定の調子を保った彼らの呼吸は、乱れることを知らない。お互いに理解しているのだ。短期線に持ち込むことにより生じる危険が。


 呼吸を乱すことはすなわち隙を生むことだ。わざわざ自らの隙をさらす馬鹿は、そもそもこの場にいられないだろう。



しかし、


 「ハッ!」


 「うおっと!?」

 

 棒に魔力を纏わせていたクラスが、数合打ち合うたびにとんでもない量の魔力が削られているのに気がつくと、すぐに短期決戦へと戦い方を変えた。この瞬間、シャグゾウにはない魔力の消費過多という現象がクラスに生じ、長期戦を続ける危険が短期戦に持ち込む危険を上回ったのだ。


 彼は馬鹿ではあるが愚かではない。このままではジリ貧であることを察すると、彼はシャグゾウへ急接近、危険を承知でシャグゾウの体へと思い切り棍棒を振り切った。


 技無きシンプルな一撃。だが果たしてそれ故に何より洗練され、早く、重い一撃がシャグゾウを襲う。


 「がはっ!」


 完全に意表を突かれたシャグゾウは、腹へと彼の一撃をまともに喰らうが、勿論ただでやられる彼ではない。クラスの棍棒を振り切ったことで生まれた隙をつき、腹へと斬りつけた。


 クラスはその傷を摩擦で即座に焼くと、出血を止めた。その間約百分の一秒にもみたない。しかし彼らはそのやり取りで、外傷はやけど以外ほぼ残っていないものの、お互いに大きく傷を与えた。


 「まさかカウンター喰らうとはな。」


 「なかなかに良かったぞ。強烈な一撃だった。」


 のんきに会話する二人だが、打ち合う一合一合には、それこそ地を穿つような威力が込められていた。


 「ぐっ!」

 


 クラスは思わず呻いた。このまま行けば確実に敗北することが見えたからだ。短期決戦に持ち込もうとしたが、やはり不可。長期戦も悪手。完全に不利な彼はだんだん追い詰められていった。


 対してシャグゾウには少しばかり余裕が出来た。かのようにおもわれた。確かに傷は痛むが、血も出ていないし重要視する必要はない。と考えたのだ。


 まったく間違いである。


 そう、彼らは違う種族。人間のほうが知能や知識はあるが、純粋な力ではゴブリザムが上。それが今、危機感の差に繋がった。


 クラスは内出血も出血も、危険であるとしっかり感じ取っていた。対してシャグゾウは、内出血を大した傷とは認めなかったのだ。


 「がはっっ!ゲホゲホ!」


 数合の後、シャグゾウは血を吐いた。その隙を見逃すクラスではない。一瞬意識を奪われたシャグゾウは、いとも容易に顔に棍棒を受け揺らめく。完全に死に体になったその体に、またも棍棒の一撃が入った。


 殴打、殴打、殴打。シャグゾウの体に次々と痣ができるのを見て、ゴブリモードの子供が耐えかねて声をあげる。


 「もう止めてよ!決着はついてるじゃない!」


 クラスは驚き止めの手を止めた。…帝国人と遜色ない帝国語を操るゴブリンに対してと、それが人間ではなかったことに。


 他のゴブリンよりも賢く生まれたゴブリモードは、生まれつき人間の言語を話すことができるという。クラスが驚くのも致し方ない話だった。流暢な帝国語を聞いたクラスはそちらへと振り向いて答える。


 「すまんな。俺にも、守りたいものがある。」


 答えた瞬間、クラスの横を木の棒が掠め、頬に傷をつけた。そして木の棒はなお進み、ゴブリモードの子の方向へ飛んでいく。


 ドスッっと音が響く。彼らの耳にはその音は、とてもとても印象的な音となった。


 「そこまで落ちたかゴブリザムよ!」


 「グルアアァアァァアア!」


 それは耐えることなど不可能な殺害衝動。彼を動かしているのは、たったそれだけだった。


 「グオオオォォォォォォオオオオオオ!!」


 「くそ!暴走して自らを削ってまで勝ちたい戦いなのかよ!?!」


 肥大化していくシャグゾウの体からは血のようなどろどろとした液体が流れ出し、体中がどんどん異質へと変化する。顔と言える顔が潰れ、どんどん醜悪な見た目に変わるシャグゾウ。


 「あぁくそ…。これは…力の暴走かよ。神様もクソ野郎だなおい。」


 そう言って悪態をつく彼は、もはや目の前の化物が、自身の力で敵わぬ相手だと正確に把握していた。


 「おい!てめぇら。とっとと逃げろ!死にたいのか!」


 その言葉により逃げ出して行く数名のゴブリン。それを見てゴブリンたちは、我先にと逃げ出した。


 ……しかし何故自分はゴブリンを逃がしたのだろうとクラスは考えた。人に仇なす敵ではなかったか?ゴブリンは。


 「しっかし普通言葉を喋れねぇゴブリンをどうやって短期間でここまで。」


 自らの気持ちに嘘をつき、現実逃避をしつつ、彼はその光景を眺める。


 圧倒的な熱量。変質中に近づくものすべてを取り込みその肉体を生成する執念。これは彼の意思による暴走ではないことを彼は悟った。


 「ぐが!?グゲゲケケ!」


 もはや自意識はない。殺す。そう考えクラスは足を前に出す。一歩ごとに増す高熱は、自らの肉体を焼き尽くさんとばかりに膨れ上がっている。ゆっくり、じりじりと間合いを詰めてくるクラス。それにしびれを切らしたかのようにシャグゾウ(化物)は腕を振るった。


 「遅えっ………え?」


 クラスは理解するのに数秒かかる。彼の右腕が…消し飛んでいた。


 「ぐぉぉぉぉぉおおおおおお!!!痛っっっっっってええぇぇぇええええええええ!」


 悶絶するクラス。肉薄するシャグゾウ(化物)。クラスは彼の攻撃を躱しつつ、逃げていた。彼の体には少しずつ傷が刻まれ、未だ耐えていることを称賛すれども逃げることを責めることは恐らく誰にもできやしなかった。


 彼の棍棒はもはや疲弊し、先の打ち合いで使い物にならなくなっていた。しかも利き腕を失っている。最早勝ち目もなくなっていた。


 「うおっと。」


 右腕がなくなることにより態勢を崩したクラスの頭上を巨大な腕が掠め通る。


 もはや逃げられまい。そう考えたクラスは覚悟を決め、くるりと反転する。左腕には棍棒、右腕は消失。彼はしかしまだ命を諦めていなかった。


 『スキル【希望を産む光(フクツノトウシ)】開放』


 『レジェンダリースキル【正義(ジャスティス)】開放』


 …は?クラスは唖然とし、同時に笑った。正義……ね。神様も見てくれてるようだ。と、皮肉った。だがここまでお膳立てされているのだ。これは…。


 「勝たなくっちゃなぁ!」 


 そう言ってクラスは棍棒を振るった。湧き出てくる直感と力に身を任せて、ただ体を動かす。昔天才と呼ばれ畏れられたその力を全力で使い、開放されたような気持ちにクラスはなった。実際彼が無意識に抑え込んでいた力か今開放されている。


 そのためか、彼の体はこの短期間でありえない程に成長し、腕を上げていた。


 しかし今まで抑えられていた、人の身の丈に合わぬその力は、彼の身体を少しずつ侵食していく。彼の身体が軋み、動きは鈍くなっていく。当然だ。そもそもこの力は危険な力であるうえ、今まで抑えつけられてきたのだ。慣れない力。それも特大に危険な。


 希望を産む光。一見危険性のない勇者のような力。だが希望の代償。それは所謂、光への従属(命と意志)であった。


 「うグッ!がぁ!はぁ…はあ。」


 肩で息をしているクラスへと、容赦なく拳が叩き込まれる。避けるクラスはこの攻防がいつまで続くのかと憂鬱になってきた。少しずつ自分に理性がなくなっていることを感じ、なんとか早く終わらせようと焦る。しかし、その焦りは、だんだんとなくなってくる。


 「なんなんだ?この頭のおかしい魔力は。どっから来てんだよ…」


 「ぐぉぉぉう!グルァァァアアア!」


 叫び続ける化物に相対すると、化物の変化に彼は少しだけだが気がついた。


 「いいぜ!持久戦、受けてやるよ!」


 別に彼は獣の言葉がわかるわけではない。そもそもありとあらゆる言語を理解できたとしても、化物の叫び声には大した意味も込められていないだろう。そもそも言葉を喋っているのではなく、単に叫んでいるだけなのだから。


 では彼の気付いた変化とは何であろう?


 そう、身体である。事実クラスの体は蝕まれているものの、シャグゾウのように体が悍ましく、歪に変質したわけでも、理性を失ったわけでもない。つまりシャグゾウの暴走には限界が来る。それはクラスも分かっていた。しかし、それが何時かは分からなかった。しかし、その体から肉片が飛び散り、ボトリと音を立てて身体が崩れ始めるのを見て、もう彼は長く無いと察した。


 それを知ってか知らずか化物の攻撃はどんどん苛烈になっていく。が、単純な力だけで戦い、また余裕なく力を失いつつある化物の攻撃をいなし続けるのは、片腕を失ったといえどクラスにとって、家に忍び込んだ鼠を殺すよりも簡単なことだった。


 そして…遂に化物の体に限界が来た。耳がおかしくなる程の叫び声を上げながら、クラスに近づき腕を振り上げ………。


 「??」


 腕は…上がらなかった。


 「残念だったな。俺の勝ちだ。」


 そうして彼は棍棒を振り上げる。


 「すまんな。()()だと…苦しみを与えず殺すってことができないからせめて…」


 「グルアアァァァァアアア!!!」


 「一撃で散れ。」


 「ぐぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!!」


 もはやそこには、化物の姿はなかった。


 「が…まぁ。痛み分け、だなぁ。」


 そこには叫び主の助けを乞うていたゴブリモードの少年。剣を手にし、彼へと近づいて来た。例えゴブリンの少年といえ、彼にはもう戦う力など残されていなかった。


 いや、戦えていたとしてもきっと、クラスは同じ選択をしただろう。彼はそれほどまでに繊細で、不器用だった。


 「じゃあな、みんな。先輩はここで敗退だ……」


 そう言ってクラスは目を閉じた。


 そしてその無防備な首に剣が振り下ろされ……












 「……何で俺は生きてんだ?」


 クラスは、唖然として誰とも言わず聞いた。


 「僕が介抱してたからだ。」


 「お前は…あの少年か。」


 「あのってどのだよ。」


 キッとクラスを睨んで少年は布を絞る。


 「お前、名前は?」


 「ゼノ。」


 ゼノはそう短く答え、キッとクラスを睨みつける。


 「僕はシャー様を殺したお前を許した訳じゃない。ただ、正々堂々と敵討ちするまで生かしておいてやるだけだ。」


 「そ、か。ありがとうな…。おっとっと。」


 クラスは、ゼノの言葉に軽く笑うと、立ち上がろうとしたが、右側の腕が無く、バランスを崩し倒れた。


 「おい。まだ動くな。そもそも僕はお前を連れて森まで逃げてきたんだ。それなのに…すぐに逃げ出そうとするとは。この恩知らずめ」


 「しかし俺を養うには労力がいるだろう。これ以上恩を重ねると、いつになっても返せねぇ。」


 そう言って今度こそ立ち上がり、そのままゼノのもとを去っていこうとする。


 「分かった。ただし一つ条件がある。」


 「なんだ?」


 クラスはゼノを真っ直ぐに見つめる。懐古……とは少し違うが、成る程。こいつは俺によく似ている。と、クラスは思う。


 「いついかなる状況に置いても、僕の決闘を拒むな。それが条件だ。」


 「いいぜ。」


 迷うことなく即答し、そして今度は少し寂しそうに…。


 「じゃあな。」


 と一言言った。

よかったら広告の下のポイント評価や感想を書いていただけると。


てか、しろ。(調子のってほんとすいません土下座で許して)

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